第30話 白の天使の相談事
翌日のお昼休み。瑠奈は早見さんと食べるそうで断られたが、亮はオッケーしてくれた。
俺、雪、亮と今まであまりなかった組み合わせな気がするが初対面というわけではないので大丈夫だろう。会話に困ることはないはずだ。
「俺、本当にいていい?」
「質問の意味がわからない。いてダメなら誘ってない」
亮が何が言いたいのかわかっているが俺と雪はそんな関係ではない。ただの友達だ。
持ってきたお弁当を広げると隣から視線を感じたので、ゆっくりと横を向くと雪がこちらを見ていた。
「どうした?」
「す、すみません……八雲くんのお弁当、とても美味しそうだなと思いまして」
「あ……ありがとう」
何を言っていいのかわからなかったのでありがとうと言ったが、今思うと返答として意味がわからない。
「欲しいのあったらあげるけど……」
「良いのですか?」
「いいよ」
「! ありがとうございます。八雲くんも私のお弁当で欲しいものがありましたら言ってください」
「わかった」
雪も俺も卵焼きがいいとなり、卵焼きの交換をした。
あの日から雪の作ったものを食べていなかったので久しぶりだ。卵焼きは甘くてとても美味しかった。やっぱり彼女の作る料理、好きだな。
「2人とも料理できてすごいよな」
食堂のラーメンを食べる亮は俺と雪のお弁当を見て感心していた。
亮は料理はそこまでできる方ではなくいつもがコンビニで買うか学食を食べている。どうやら料理をすることがあまり好きではないらしい。
「料理の楽しさを亮にも教えてあげたい……作り出したらいろんなもの作りたくなるぞ」
もう何度も亮に言ったことがあるがまた何言ってるのと言いたげな表情をされた。
「ちょっと俺にはわからないな。白井さんも料理好き?」
「はい、好きですよ」
「つまり料理しないのは俺だけか」
亮の場合、料理ができないからやらないのではなくめんどくさいからやりたいないという方に近いらしい。
まぁ、男子で料理が好きっていう人はあまり聞かないしな。
3人で楽しく食事をしている中、未玖がこの場に現れた。
「晴、頼まれてたやつ午後からすぐしたいから文化祭の買い出し今から言って欲しいってさ」
「マジか……」
「食べたら教室来てね」
「わかった」
未玖は伝え終えると食堂を出てすぐに教室へ戻っていった。
少し食べるスピードをあげ、2人より先に食べ終えると席を立った。
「雪も亮もごめん。行ってくる」
「おう、頑張れ」
「頑張ってください、八雲くん」
お弁当箱と水筒を持つと俺は2人より先に食堂を出た。
食堂で残った雪と亮は二人きりになると何を話していいのかわからず食べ終えるまで黙食になっていた。
だが、食べ終えて雪は亮に聞きたいことがあったのであることを聞くことにした。
「あの、高宮くん」
「?」
「少し……ご相談したいことがあります」
下を向いていたが雪は顔を上げて亮のことを真っ直ぐと見た。
雪は高校に入ってから男子と話すことを避けてきたため晴斗以外とこうして真っ直ぐと目を見て話すのは久しぶりだ。
「相談?」
「はい……少し先ですが、もうすぐ八雲くんの誕生日ですよね?」
「……そうだね。もしかしてプレゼントの相談だったり?」
雪は亮に心を読まれたと思い、驚いた表情をした。
「凄いです、高宮くん。エスパーですか?」
「……白井さんって面白いね」
「?」
「思ってたより話しやすいね、白井さん。晴斗の誕生日プレゼントだったっけ? 相談乗るよ」
「ありがとうございます」
お昼休みが終わるまで後数分。それまでに亮に聞きたいことを聞こうと思っていた雪は嬉しそうにペコリとお辞儀した。
「高宮くん。八雲くんは、どういうものを渡したら喜んでくれると思いますか?」
聞いてそれを買うというわけではないが晴斗がどういうものをもらったら喜ぶのか気になった雪がそう尋ねると亮は少し考えてから答えた。
「晴斗は何でも喜んでくれると思うよ。晴斗の好きなものといえば甘いものとか、小説かな」
「甘いもの……小説……」
「参考程度に聞いてくれたらいいよ。晴斗は白井さんが選んだものが欲しいと思うし(まぁ、晴斗はまずもらえるとは思ってないだろうな。もらうだけで驚きそう)」
「ありがとうございます。参考になります」
「いえいえ。何か親みたいなこと言うけどさ、晴斗と仲良くしてくれてありがとう」
なぜ亮がこう言ったのか深く意味は考えなかった雪は小さく笑った。
「いえ……私、八雲くんと仲良くなれて良かったです」
雪はそう言うと椅子から立ち上がり、ペコリと頭を下げた。
「相談ありがとうございます」
「いえいえ。喜んでもらえるプレゼント見つかるといいね」
「はい」
***
「先輩の欲しいものですか……」
「はい。少し先ですが、誕生日にプレゼントを用意したくて」
文化祭準備中、職員室に用があった雪は帰り道、瑠奈とバッタリと会った。そこで、雪は瑠奈にもプレゼントのことについて聞くことにした。
「そうですね。私は、去年、手作りクッキーを渡しましたよ。先輩、甘いもの好きですし」
「なるほど……」
やはり甘いものがいいのだろうかと思い始めていた雪は物を買ってそれを渡すのではなく自分が作るという選択肢を増やした。
「あっ、八雲先輩と1日過ごすのもありですね。先輩、喜ぶと思います」
「いっ、1日過ごす、ですか?」
「後、甘々に先輩を甘やかすのもありですね。八雲先輩のあまり見れない表情が見れるはずです」
「甘々に……あまり見れない表情……」
雪は1日、晴斗と過ごし、そして甘々に甘やかす自分の想像をして顔を赤くした。
「(無理です、私にはできそうにないです……)」
「先輩、料理得意ですし何か作って渡すのはどうですか?」
「手作りですか?」
「はい。きっと八雲先輩は喜んでくれますよ」
晴斗の誕生日までまだ2週間以上ある。雪は、もう少し考えてから決めることにした。
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