第24話 幼馴染みが提案したあるゲーム

 午前中は雪と家でゆっくり過ごし、お昼頃になると瑠奈と亮がやって来た。瑠奈は雪の部屋に、亮は俺が昨日寝泊まりした部屋へ荷物を置きにいった。


 その後は昼食を食べに4人で海が見えるカフェへ向かった。カフェの名前はそのままで『海が見えるカフェ』だ。


 お昼前に行くと空いていたので好きな席へ座ることができ、海がよく見える場所へと4人で座った。

 

 このカフェでオススメなのはパンケーキらしい。たくさん種類がある中でも夏限定なのは『マンゴーアイスクリームパンケーキ』らしい。


 この店も雪が書いているスイーツノートには載っている。一度来たことがあるみたいだ。


「先輩、限定ですって」

「見たらわかる。瑠奈もこれにするのか?」

「そりゃもちろん。限定ですから」


 俺と瑠奈はマンゴーアイスクリームパンケーキに決まり、雪は一度食べたのでキャラメル抹茶パンケーキに。亮はマンゴーよりチョコだそうでチョコアイスパンケーキを注文した。


 待っている間は自然と男子と女子で別れて喋っていた。


「昨日は白井さんと二人っきりだったわけだが、どうだった?」

「二人っきりじゃないから。智絵さんいたし」

「そうだけどさ、寝るまでに白井さんと何もせずに過ごしていたわけじゃないだろ?」

「まぁ……」


 テレビを見ていたこと、お茶を飲んでお喋りしていたことを亮に言うと「同居している恋人か」と言われてしまった。


 そんなことをした記憶はないが周りから見たらそうなのかもしれない。


「その後はどうしたんだ?」

「その後って普通に寝ただけだが?」

「へぇ……」


 全く信じてない顔だな。昨日のことは誰かに話せることではない。


 このまま亮と話していたら危険な予感がして、俺は目の前に座る瑠奈に話しかける。


「そう言えば、早見さんはいつから来るって?」

「凪ですか? 凪は今日の夕方に来れるかもしれないと言っていました。律くんもおそらく一緒に」

「仲良しだな」

「仲良しかはわかりませんが、凪がブラコンですからね」


 律は早見さんの義弟だ。早見さんは律が大好きでとても過保護らしい。仲良しに見えるが、2人の関係は俺も瑠奈もわからない。


「お待たせしました。マンゴーアイスクリームパンケーキです」


 先に俺と瑠奈が頼んだマンゴーアイスクリームパンケーキが運ばれてきて、後からキャラメル抹茶パンケーキ、チョコアイスパンケーキが来た。


「幸せです」

「早くない?」


 まだ食べていないのに雪が幸せそうな表情をして言った言葉に思わず突っ込む。


「先輩方、写真撮りましょうよ」

「賛成です。撮りましょ」


 食べる前に4つのパンケーキが載ったお皿を寄せて瑠奈と雪は写真を撮っていた。写真はあまり撮らない方だが、俺も記念に1枚撮った。



 

***




 パンケーキを食べ、少し海で遊んだ(足をつけただけ)後は家に戻った。夕方には早見さんと律、そして未玖も来た。


 未玖は明日から来ると言っていたが、早めに来れることになったらしい。


 夕食はみんなでカレーを食べ、お風呂から上がるとリビングに全員集まり王様ゲームをやることになった。ちなみに言い出したのは未玖だ。


 1から6、王様と書かれた紙をじゃんけんで勝った人から引いていき、全員が紙を確認してからゲームは始まった。


「王様だーれだ」

「私ですね」


 手を挙げた瑠奈は悪そうな顔をしていたので嫌な予感がした。変なこと言うんじゃないだろうな……。


「では命令です。1番が5番に好きと告白してください」

「わっ、やるなるーちゃん。さっ、だれだれ~」


 早川さんは瑠奈の命令にワクワクしていたが俺はそんな気分ではなかった。


(1番俺なんだが……)


「1番だったよ」

「お~1番は先輩でしたか。5番さんは誰ですか?」

「……わ、私です」

 

 そう言ってゆっくりと手を挙げたのは雪だった。


「ではでは八雲先輩、お願いします」


 告白って別に異性として好きですと言わなくてもいいよな。だとしたら……


「白井さんの優しいところと笑顔が素敵なところが好きです」

「!」


 少し恥ずかしかったけど言えた。周りの視線が気になるが気にしない。


「雪ちゃんが晴の告白で固まってる。大丈夫?」

「だっ、大丈夫です……。私も八雲くんの優しいところ好きですよ」

「!」


 俺が雪に告白するはずだが、雪も俺に告白したので周りがザワッとした。


「雪ちゃん、可愛すぎ~もう抱きしめちゃう!」

「み、未玖さん!?」


 未玖が雪に抱きついたところで未玖はこほんと咳払いした。


「イチャイチャありがとうございます。さて、次行きましょうか」

「うん、いこー!」


 紙を一度回収してからまた紙を引いていく。次に王様だったのは早川さんだった。


「ん~迷うなぁ……あっ、これにしよう。3分間、4番と2番は手を繋ぐこと!」


 自分が何番だったか確認はしたが一応紙を見て4番と2番ではないことがわかりホッとする。すると、律が手を挙げた。


「俺、2番」

「おっ、律くん! さて、4番は?」


 早川さんがキョロキョロと左右見ていると瑠奈が手を挙げた。


「律くん、私でごめんね」

「なんで野々宮が謝るだよ」

「私よりお姉さんと手を繋ぎたいのかと」

「俺はそんなこと一度も言った覚えないし。てか、ほら言われたんだから……」


 律が手を差し出すと瑠奈は拳をぎゅっとしてから手のひらを開き、そして差し出された手を握った。


「じゃ、次行こっ」


 次に王様になったのは亮だ。そして、命令は6番が次の次まで語尾に「にゃん」をつけることだった。


 これが俺や律だったら空気が冷たくなる予感しかしない。


「6番の人」

「はいっ、私です! じゃなかった……はいっ、私ですにゃん」


 全く恥ずかしがることなくノリノリなのは未玖だ。気のせいかもしれないが、自分に当たって嬉しそうに見える。


「では次にゃん」


 次に王様になったのは律だった。命令は2番の人が6番に頭を撫でることだった。


「俺、2番」


 俺が手を挙げるとその後に瑠奈が手を挙げた。どうやら6番は瑠奈らしい。


 みんなの前だが、3分経ち律と手を離した瑠奈の頭を優しく撫でた。


(撫でる方も恥ずい……)


「ありがとうございます、先輩」

「お、おう……」


 頭を撫でてお礼を言われたらどう反応したらいいんだ。


 そして何ゲームかしていると時刻は11時を過ぎていた。


「もう遅いし次を最後にしようにゃん」

「そうだな」


 最後に王様になったのは雪だ。命令は彼女らしく、誰もが困らないものだった。


「1番が王様と握手です」

「お~、1番は誰にゃん?」

「…………」

「おっ、もしや晴にゃん?」

「まだ手挙げてないんだけど……まぁ、俺だが」


 握手ができるよう俺は雪の隣に移動する。すると彼女は俺にだけ聞こえるような声の大きさで呟いた。


「嬉しいです……」


(……? 何が嬉しいんだろう)


「八雲くん、お願いします」

「う、うん……よろしく」


 まるで初めましてかのように俺と雪は握手をした。







     


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