謎のシェアハウス連続殺人事件~犯人が挙がらない~

天川裕司

謎のシェアハウス連続殺人事件~犯人が挙がらない~

タイトル:(仮)謎のシェアハウス連続殺人事件~犯人が挙がらない~


1行要約:

次男を操る長男に取り憑かれた母親の末路


▼登場人物

●如月弥生(きさらぎやよい):女性。40歳。次男を懐妊中。夫は事故死。バツイチ。超絶美人。生涯「結婚はしない」と決めている。息子を溺愛していた。「如月シェアハウス」のオーナー。二重人格(別の人格が乗り移っている時は記憶・体感が全く無い)。

●如月巣直(きさらぎすなお):男性。享年20歳。弥生の長男。母・弥生を溺愛していた。20歳のとき事故死。その事故直前、弥生と近親相姦の関係にあった。その果てに次男を(弥生が)妊娠した。

●脇田和樹(わきたかずき):男性。35歳。シェアハウスの客。弥生に一目惚れする。謎の死を遂げる。

●ジョン・ハミルトン:男性。25歳。シェアハウスの客。弥生に下心を抱き迫る。謎の死を遂げる。

●田丸和夫(たまるかずお):男性。40歳。シェアハウスの客。弥生に本気で惚れる。殺されそうになっていた所を助けられる。

●国木田(くにきだ):男性。50歳。ベテラン刑事。

●太宰(だざい):男性。30歳。新米刑事。国木田の部下。

●斉木久実(さいきくみ):

女性。40歳。シェアハウスの客として来る。

20代に見えるほど若い。弥生と同じくかなりの美人。

弥生の潜在的な罪の意識から生まれた生霊。

太宰に「犯人確保」の為のヒントを2つ教える。

1つ目は「20代くらいの男性がシェアハウスにいる事」。

2つ目は「田丸和夫がシェアハウスの中で殺されそうになる事(時間帯と場所まで教える)」。

ヒントを教えた後で失踪し、2度と現れない。


▼場所設定

●如月シェアハウス:2つの家があり、1つは簡易アパート、もう1つは弥生が住んでいる一戸建て住宅。一戸建て住宅のほうには大きな窓があり、カーテンを閉めていなければ外からでも中の様子が見える。また自宅にはやや大きな庭がある。

●簡易アパート:このアパートを如月シェアハウスとして使っている。普通の簡易アパートのイメージで、部屋は4つ。


NAは如月弥生と通常のナレーションでよろしくお願いいたします。



オープニング~


エクソちゃん:ねぇデビルくん、デビルくんってこれまでに「謎の連続殺人事件」ってのに巻き込まれちゃった事ある?

デビルくん:連続殺人だと?へっ、俺ぁデビルだぜ?巻き込まれるも何も、犯人けしかけるのは俺の仕事じゃねーか♪巻き込むのは俺のほうだぜ♪

エクソちゃん:アンタってホント迷惑な存在よね。アンタがいなくなりゃ連続殺人とかも無くなるのかもね。

デビルくん:オイ…

エクソちゃん:今回のお話はね、或るシェアハウスで起きちゃった連続殺人事件のお話なんだ。でもその犯人の輪郭が全く掴めない、ってトコから始まるの。

デビルくん:ほう、俺向きだな。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=4167字)


NA:弥生)

私は如月弥生(40歳)。

夫は事故で他界。

今は女手1つで生活のやりくりをしている。

そんな私はシェアハウスのオーナー♪


ト書き〈仕事に行く脇田〉


脇田)「あ、弥生さん♪行ってきまぁす」


弥生)「あ…脇田さん、いってらっしゃーい♪」


NA)

彼は2~3日前から滞在している脇田和樹さん(35歳)。

とっても朗らかで良い青年だった。

シェアハウスは簡易アパート。

私の自宅のすぐ隣り。

部屋は4つ。


ト書き〈弥生の生い立ち〉


NA)

長男の巣直は3か月前に亡くなった。

私は息子をとても愛していた。

息子も私を愛してくれた。

1人になると、私はいつも巣直の事を思い出し、泣いていた。

しかし私の中には赤ちゃんがいる。

この子を守る為にもしっかりしなきゃいけない。


ト書き〈自宅〉


弥生)「ふぅ。妊娠3か月でも動き回るのは大変ねぇ」


ト書き〈和樹が失踪〉


NA)

そんな或る日、事件が起きた。


弥生)「脇田さん…どこ行っちゃったんだろう…」


NA)

脇田さんが急にいなくなった。

荷物は部屋に置きっ放し。

何か用事があるのかと思いつつ、私はひたすら待っていた。


ト書き〈ジョン・ハミルトンが来る〉


ジョン)「ドモ、ヨロシクオネガイ、シマス(笑顔)」


NA)

そんな時、イギリスからジョン・ハミルトン(25歳)という青年が来た。

笑顔が眩しい好青年。


弥生)「こちらこそよろしく♪」


NA)

お客は待ってくれない。

いなくなった脇田さんの事を心配しつつ、私は仕事に精を出す。


ト書き〈ジョンが弥生に迫る〉


ジョン)「ヤ…ヤヨイサン…!ボ、ボクハ…アナタガスキダ!アイシテル!」


弥生)「や…ちょっと!やめて…やめなさい!」


NA)

それから数日後の夜の事。

ジョンの部屋に用事で行った時。

ジョンはいきなり私を押し倒そうとした。


ジョン)「ア…アナタは美しスギマス!」


弥生)「やめてぇ!」


NA)

ただ抵抗するのみ。

でもこんな事に一切慣れていない私。

そのうち気が遠くなり、失神したようだ。


ト書き〈深夜、弥生の自宅〉


NA)

気が付くと、私は自分の部屋のベッドにいた。

時計は深夜2時。


弥生)「私…どうしたんだろ…」


NA)

一寝入りしても、ジョンとの事は覚えている。

でもその後の事が判らない。

取り敢えず、私はもう1度ジョンの部屋へ行ってみた。

怖かったが確認の為。

すると…


弥生)「あれ…?…いない…?」


NA)

ジョンがいない。


弥生)「何か用事かしら…。ジョンまでどこ行っちゃったの…?」


ト書き〈ジョンも失踪:田丸和夫が同時頃に来る〉


NA)

翌朝。

とうとうジョンは帰って来なかった。

脇田の時と同じく、ジョンの荷物も部屋に置かれたまま。

そんな時、別の客が現れた。


田丸)「どうも田丸和夫ですぅ!」


弥生)「あ、どうぞよろしく♪」


NA)

気持ちがソワソワする中、私はまた仕事に精を出す。


ト書き〈ずっと帰らない〉


NA)

それから数週間後。


弥生)「ダメ!あの2人、帰って来ないわ!」


NA)

脇田もジョンも完全に失踪していた。

私はすぐに警察へ連絡。


国木田)「で、その2人は2週間も帰らないんですね?」


弥生)「はい」


太宰)「何か2人が行きそうな場所の心当たりなどは?」


弥生)「いえ、お2人共まだいらして日が浅かったので、よく分かりません…」


NA)

国木田というベテラン刑事と、太宰という若い刑事。

2人はいろいろ訊いて来た。

でも知らないものは知らない、私にはそれしか言えない。


ト書き〈斉木久実が来る〉


NA)

そんな頃、また新しく客が来た。

今度は女性。

名前は斉木久実(40歳)。

「ただ失踪しただけ」なので、警察はハウスの利用停止をしなかった。


ト書き〈アパートで久実と弥生が話す〉


弥生)「私と同い年なんですね。なんだか親しみが湧きますわ♪」


久実)「ウフフ、ホントですね」


NA)

初めての女性客。

私は何となく彼女に気を許していた。

彼女とはよく話すようになっていく。

でもそんな中、気になる事を彼女は言った。


久実)「でもこのアパート、なんだか血の臭(にお)いがしますね」


弥生)「え?」


久実)「ほらこの柱の所、なんか血の痕(あと)のように見えません?」


NA)

いきなりそんな事を言って来る彼女。

私は少し身構えた。


弥生)「あ、あはは…何言ってるんですか、そんな…」


久実)「あなた、妊娠してらっしゃるでしょう?妊娠中の女性って、心身的にかなり敏感になるんですねぇ。お腹の赤ちゃんを必死に守ろうなんてして…」


弥生)「は…?」


久実)「アハハ、冗談ですよ冗談♪気にしないで下さい」


弥生)「…」


NA)

なんだか府にない冗談だった。


ト書き〈捜査中の警察〉


太宰)「でも弥生さんは妊娠してらっしゃるでしょう?あんな身重の体で、大の男2人の腕力をねじ伏せて、殺人なんか出来ますかねぇ」


国木田)「だが状況から見て彼女しか考えられんじゃないか。それに殺し方など幾らでもある。隙を付いて睡眠薬でも飲ませれば一発アウトだ。女の力でも簡単に人は殺せる」


国木田)「それより妙なのは、もし殺人があのシェアハウスであったとして、凶器も証拠も何も出んと言う事だ。弥生はどう見ても犯罪の素人、そこまで頭と手が回るとは思えん。お前が調べた彼女の経歴も確認したが、やはりどう考えても『彼女が犯人』とするには何か足りない…」


太宰)「…警部は彼女が犯人だと?」


国木田)「…分からんが、今考えられるのはそう言う事だ」


NA)

警察は利用客に邪魔にならないよう、シェアハウスを調べた。

でも凶器が出ない。

状況証拠から犯人像すら割り出せない。

頭を抱えつつ、一向に手掛かりが得られなかった。

そんな時…


ト書き〈久実と太宰が話す〉


太宰)「え?今なんと?」


久実)「あのシェアハウスでもう1度殺人が起きるでしょう。それを食い止めるには、やはりあなた方、警察の力が必要です」


久実)「明日の夜、21時13分に、如月弥生の自宅へ行ってみなさい。彼女の自宅にはあなた方もご存知の通り、大きな出窓があります。その窓から部屋の中を覗けるでしょう」


久実)「その時間帯に窓から部屋の中を覗けば、男の姿をした犯人を見付けられます。あなたはその男をカメラに収めるのです。それが今回の事件解決への大きな手掛かりとなるでしょう」


太宰)「殺人と言いましたか?!き…君は一体…」


NA)

いきなり警察署へ乗り込んでこんな事を言った久実。

彼女は重要参考人として警察署に匿われた。

この発言は当然、国木田の耳にも入る。


国木田)「取り敢えず行って見よう。彼女もあのシェアハウスの住人。何か知っているのかも知れん」


NA)

何の手がかりも得られず焦っていた警察。

ガセかも知れない証言にすら、藁に縋る思いで寄り付いた。

この時、私は彼女の行動を知らない。

そう言われた太宰と国木田は、翌日の21時13分、私の家の前へ来た。

カメラを持って。


ト書き〈21時13分〉


太宰)「あ…!ほ…本当だ…あれは男…!間違い無く男だ…。き…如月弥生の自宅に、あんな男がいたなんて…」


国木田)「写真だ、撮れ!」


太宰)「は、はい!」


NA:ナレーション)

歳の頃、20代くらいの男性が、スーツを着て部屋の中をうろうろしていた。

その男は身支度のような事をしており、やがて部屋を出た。

そしてアパート(シェアハウス)へ足早に行く。

男は田丸の部屋へ入って行った。

この時、妙な予感がした国木田と太宰。

彼らはすぐ後を追う。


国木田)「行くぞ!」


太宰)「はい!」


ト書き〈田丸の部屋〉


NA)

田丸の部屋のドアをバン!と開けた国木田と太宰。

そこで2人が見たものは…


太宰)「…あ…あなたは…」


国木田)「まさか…」


NA)

そこには男物のスーツを着、短髪の鬘をかぶり、男装した弥生がいた。

そして眠っている田丸の上に馬乗りになり、出刃包丁を振りかざしている。


弥生)「きぃえええぇぇえぇ!邪魔するなぁああぁ!お前らもぶっ殺してやるぅ!弥生(こいつ)を奪う奴等は皆殺しだぁ!」


NA)

国木田と太宰は2人掛かりで弥生を押さえた。

弥生はこの世の物とは思えない程の奇声を挙げ、凄まじく抵抗した。

しかし男2人分の力には流石に敵わず、その場で緊急逮捕。

田丸の部屋のテーブルには、中身が少し減った睡眠薬が置かれていた。


ト書き〈数日後〉


NA)

弥生の自宅の庭から、脇田和樹とジョン・ハミルトンの死体が発見された。

死因は睡眠薬を飲まされた上、胸部をめった刺しにされた事による。

取り調べにより、田丸が弥生に迫った事実も明らかになる。

田丸はその復讐に遭い、弥生に殺され掛けたのでは…と警察は見た。

脇田和樹もジョン・ハミルトンも、やはり田丸と同様だった。

下心で弥生に近付き、その逆襲に遭って殺された…警察はそう結論付けた。

事件は解決したが、不思議な事が1つある。

重要参考人として警察署にいた久実が、その夜に失踪した事。

しかも署内の個室から、彼女は姿を消していた。

部屋の前には護衛の警官が数人いたにも関わらず…


ト書き〈警察署を眺めながら〉


久実)「私は弥生の『罪の意識』から生まれた生霊。彼女を助ける為じゃなく、正義を明かるみに出す為に現れた」


久実)「弥生は二重人格だった。片方の人格は彼女の長男・巣直のもの。巣直は自分の母親である弥生を誰の手にも渡したくない、弥生を穢す者はもちろん容赦しない。だから弥生に近付いた者は巣直に殺されたのだ」


ト書き〈写真を見ながら〉


国木田)「この姿、長男にそっくりだ。顔形まで似とる気がする…」


太宰)「警部、彼女の経歴をもう1度詳しく調べました。今度は長男との関係から調べてみたのですが、胸糞悪い事実が明らかになりました」


太宰)「実はいま弥生の中にいる子供は、長男の子供のようです」


国木田)「何だって?」


太宰)「弥生は長男を溺愛しており、その長男の巣直も母親である弥生を異常に溺愛していました。おそらくその情(じょう)が重なり合って、2人は一線を越えていたのでしょう…」


ト書き〈警察署を眺めながら〉


久実)「親子の間だけでなく、他人との間の一線も越え、弥生と巣直は犯罪に身を染めた。彼女はおそらく精神鑑定の末、罪には問われない。今後、同じような悲劇が起きない事を…私も世間の人々も祈るばかりだわ…」


ト書き〈その後〉


NA)

その後、弥生は精神病棟に収監された。

胎児が巣直の遺伝子を受け継いだのか。

弥生の体はその遺伝子に支配されているようだった。

弥生の顔はもはや別人である。

眉間にしわが寄り、一点を見詰めている。

そしてただ、釈放されるのを待っているかのようだった。



エンディング~


エクソちゃん:はぁ~、今回もなんだか胸糞悪くようなお話だったわねぇ~。

デビルくん:まるでジャパニーズサイコじゃねぇか。

エクソちゃん:ホントよね。でも親子の一線を越えて関係を持つ…なんてアタシには考えられないわ。

デビルくん:「アタシ」だけじゃなくて普通の人はみんな考えられんだろ。俺なんか生まれた時から親いねーし、はなっから考えられねぇよ。

エクソちゃん:ラストシーン、やっぱり無限ループの結末かしら?犯罪がいつまでも続く…みたいな。

デビルくん:まぁ、まさか国の法律で赤ちゃん殺すわけにもいかねーしな。それに精神鑑定の結果、結局、弥生は極刑免れてんだろ?今の法律じゃどうしようもなくね?

エクソちゃん:そだねー。人間の世界から完全に犯罪や罪を消し去るってのは、やっぱ出来ない事なのかもね。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=YcZVeEaZCD8&t=89s

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謎のシェアハウス連続殺人事件~犯人が挙がらない~ 天川裕司 @tenkawayuji

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