静かなストーカー…その成れの果ての姿とは…?

天川裕司

静かなストーカー…その成れの果ての姿とは…?

タイトル:(仮)静かなストーカー…その成れの果ての姿とは…?


1行要約:

植物化したストーカーの末路


▼登場人物

●初須来雄(うぶす くるお):男性。20歳。高卒。無職。ストーカーをやめられない。

●日賀井 奈緒(ひがいなお):女性。19歳。大学生。来雄からのストーカー行為を受ける。母子家庭。

●安井(やすい)シズク:女性。20歳。来雄の夢と欲望から生まれた生霊。

●警察:一般的な警察のイメージで。

●宅急便の兄ちゃん:男性。30代。一般的なイメージで。本編では「宅急便」と記載。


▼場所設定

●日賀井奈緒の自宅:一般的なマンションのイメージで。回想シーンでの奈緒の自宅は一般的な一戸建て。

●駅前の噴水広場:一般的な駅前ロータリーのイメージで。噴水がある。

●来雄の自宅:一般的な簡易アパートのイメージで。

●街中:花屋で奈緒が花を買うシーンをメインで。他の景色は適当な感じで。


▼アイテム

●小瓶に入った薬:人間を観葉植物に変える。見た目は何となく培養液にも見える感じ。


NAは初須来雄、日賀井奈緒、ナレーションでよろしくお願いいたします。



オープニング~


エクソちゃん:ねぇデビルくん、もしストーカーに遭っちゃったらどうする?

デビルくん:え?何だよ急に。そんなモン俺にとっちゃどうって事ねーよ。まぁ返り討ちにして解決だろな♪

エクソちゃん:アンタだったらそうだろね。でも人間にとっちゃやっぱ、度が過ぎたストーカーってのは怖いもんよねぇ。

エクソちゃん:今回のお話は、ストーカーになっちゃった男の子のお話なんだ。

デビルくん:まぁたそんな話かよ~。

エクソちゃん:でもね、途中から夢想のような世界に入っちゃって、結末が何とも哀しいって言うか、シュールな展開で終わっちゃうんだよ。

デビルくん:ほう。

エクソちゃん:ストーカー行為で捕まっちゃってその時やめようかって思うんだけど、なかなかやめられないのよね。その後に出会った不思議な女性に何とか協力して貰うんだけど、その結果が幸か不幸か分からない…ってそんな感じなの。

エクソちゃん:まぁ取り敢えず、ゆっくり見てみよ。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=4374字)


NA:来雄)

俺は初須来雄(20歳)。

大学にも進学出来ず、ずっとアルバイト漬けの毎日。

そんな日々の中ふと、俺はあの子の事を思い出す…


来雄)「はぁ…。奈緒ちゃん、今頃どうしてるかなぁ…?会いたいなぁ…」


NA)

日賀井奈緒(19歳)。

彼女は俺がその昔、本気で好きになってしまった彼女。

今は女子大生で、きっと華やかな生活を送ってる。

俺なんかとは別世界を生きてるんだ。

でも…


来雄)「会いたい…!一目でいいから会いたい!」


NA)

ここんところ毎日、彼女に会いたい思いで一杯だった。

でも会えない…。

それは…


ト書き〈数年前、奈緒の自宅前〉


奈緒)「もう好い加減にしてよ!いま警察呼んだからね!そこでずっと突っ立ってりゃいいわよ!お巡りさんにしっかり捕まえて貰いなさい!」


来雄)「あ…」


NA)

数年前、俺は奈緒を付け回した挙句、警察に捕まった。

奈緒は母子家庭。昼間、母親はパートでいなかった。

だから奈緒が家に1人でいる時間帯を狙い、毎日通い詰めた。

だからと言って、俺は奈緒に危害を加えるような事はしない。

純粋に彼女の事が好きだったから、少しでも話が出来ればそれで良かった。

でもやはり迷惑行為。

或る日、奈緒は遂に警察を呼び、俺は御用となった。

警察に捕まってから俺は、もう2度とストーカーはやるまいと誓った。

でも…


ト書き〈時制を戻し来雄のアパート〉


来雄)「無理だ…。やっぱり会いたくなっちまう…」


NA)

俺はいま彼女がどこに住んでいるのか判らない。

あれから彼女は引っ越したようだ。


ト書き〈街中〉


NA)

そんな或る日、街中で偶然彼女を発見した!


来雄)「あ…あれは…まさしく…!」


ト書き〈花を買っている〉


奈緒)「すみませーん、このお花下さーい♪」


NA)

彼女はちょうど花屋で観葉植物を買っていた。

俺はそれから彼女を付けて行った。

すると…


ト書き〈奈緒のマンション〉


来雄)「…なるほど…、今は彼女このマンションに住んでるのか…」


NA)

俺は喜んだ。

これで毎日、彼女を遠くからでも眺める事が出来る。

今までの悶々が、一気に晴れた気がした。


ト書き〈数か月後、奈緒のマンション前〉


NA)

それから数か月後。


来雄)「ダ…ダメだ…!やっぱり、今ここに俺がいる事をアピールしたい!彼女のそばにもっと近寄りたい…!」


NA)

俺の欲望は「遠くから彼女を見てるだけ」じゃ我慢出来なくなった。

1度でいいから彼女と同じ空間にいたい。

そんな途方も無い欲望が、日に日に高まった。

そして…


ト書き〈奈緒の部屋〉


奈緒)「ま…またなの?」


NA:奈緒)

このところ、毎日のように玄関口のドアポストに手紙が入れられていた。

名前も住所も書いていない。

内容は全部「キミが好きだ!」「1度でいいからデートしてほしい」「落ち着いた空間で2人きりでいよう」みたいなものばかり。

でも手紙が入れられるだけで、他には何も無い。

「その内やむだろう」と考え、警察にはまだ言っていなかった。


奈緒)「ホントもう好い加減にしてよね!こんなストーカー紛いの事されたの、アイツ以来じゃない!…まさか、アイツじゃないわよね…」


NA)

そのとき私はふと、初須来雄の事を思い出していた。


奈緒)「で…でもあれから引っ越したんだし、私が今どこにいるかも判らない筈なんだから、アイツが来るなんてこと絶対無いわよね」


ト書き〈数日後〉


NA)

それから数日後、再び恐怖が私を襲う。


奈緒)「え…?やっぱりアイツ…?」


NA)

その日来た手紙の中に、名前が書かれていた。

「初須来雄」。

前回の事もあったし、私はすぐ警察に通報した。


ト書き〈来雄の行方〉


NA:ナレーション)

その日から来雄は、アパートには戻らなかった。

ネットカフェ等を転々とし、そこからアルバイトへ出掛けた。

アルバイト先にはまだ警察の手が伸びていない。

しかしいずれアルバイト先にも警察が来る。

そう踏んだ来雄は、最後の賭けに出た。


NA:奈緒)

「一刻も早く逮捕されて、永遠に監獄の中にぶち込んで欲しい」なんて願っていたさなか、またドアのポストに手紙が入れられた。

今度は手紙だけじゃなく、封筒も一緒に添えられていた。


奈緒)「何これ…。あ…香水…」


NA)

封筒には香水が入っていた。

私はすぐ警察へ通報。

しかし来雄の行方は判らなかった。

警察は更に見回りを強化した。


ト書き〈数日後〉


NA)

更に数日後。

またポストに手紙と封筒が入れられてある。

封筒の中身はまた植物アロマの香水。

確かに私の部屋には観葉植物が沢山あり、好みの匂いではある。

でもアイツからの物なので、そのままゴミ箱行き。


奈緒)「警察は何やってんのよ!」


ト書き〈翌日〉


NA)

警察の無能さに呆れ果てていた頃。

驚くべき事が起きた…


奈緒)「え…な…なんなのよ…これ…」


NA)

朝起きて玄関口へ行くと、そこには大きな観葉植物が置かれていた。

手紙もその横に添えられてある。

観葉植物…こんなのポストに入る訳ない。

て事は…


奈緒)「…アイツ…もしかして…この部屋に…既に入ってるの…?」


NA)

一瞬、フローリングが抜けて闇へ落ちるような恐怖を知った。

私はとっさに振り返る。

でも部屋に人の気配は無い。

忍び足で携帯を取り、私はすぐに警察へ連絡。


ト書き〈来雄が逮捕される〉


奈緒)「きゃああ!」


警察)「こいつ!出て来いこら!」


来雄)「う…すいません…!」


NA)

すぐに来た警察は、私の部屋のクローゼットを調べた。

するとなんとそこから初須来雄が出て来たのだ。

来雄はすぐ警察に連行された。


NA)

恐怖しながらもこの時、私はふと或る事が気になった。


奈緒)「あ…あった…」


NA)

ゴミ箱からアイツがくれた香水を取り出した。


奈緒)「や…やっぱり…」


NA)

私は香水をドアの郵便受けの差込口に当ててみた。

しかし入らない。

つまり香水が送られて来た頃から、来雄はこの部屋に入っていた…。

警察の取り調べで、アイツはその事を自白した。


ト書き〈数年後〉


NA:来雄)

あれから数年後。

俺は出所した。


ト書き〈駅前の噴水広場〉


NA)

駅の噴水広場で途方に暮れていた時、1人の女性が声を掛けて来た。


シズク)「こんにちは♪何か落ち込んでますね」


来雄)「え?」


NA)

見ると結構な美人。

その女性はいろいろ訊いて来た。

俺も悩みを少し話した。

奇麗な人だが、不思議と下心が沸いて来ない。

何か純粋な気持ちで対峙させられる…そんな感じだった。


来雄)「あの、失礼ですが、あなたはどういう…?」


シズク)「あ、ごめんなさい。私こういうお仕事をしています」


NA)

女性は名刺を差し出した。


来雄)「『一途な気持ちの扉を開く!究極のライフコーチ』…安井シズク…?」


シズク)「まぁ世の中ではストーカ―行為をしている人って結構多いんですよね。例えその行為に及ばなくても、実際、心の中で特定の人の事をずっと想い続けていれば、表面的には見えないけれど潜伏的なストーカー、言わば『心のストーカー』と言えるように私は思います」


シズク)「純粋なストーカーとはいわゆる純愛の証です。私はその純粋な気持ちをピックアップして育て、その特定の人の元へ届けるお仕事をしています」


来雄)「はぁ…」


NA)

よく判らなかったが、何か本当に俺の力になってくれそうな人…そんな感覚だけは伝わって来た。

改めて軽く自己紹介した後、俺は今の自分の悩みを全て話した。


シズク)「なるほど、そういう事ですか。まぁ奈緒さんにとっては大変な迷惑だったでしょうねぇ」


来雄)「ええそうなんです。俺、もう彼女に迷惑は掛けたくないんです。でも、この気持ちがどうにも収まらなくて…。ホント俺、一体どうしたらいいのか」


シズク)「わかりました。あなたのお悩み、解決いたしましょう」


来雄)「…え?」


シズク)「こちらをあなたに差し上げます」


NA)

そう言ってシズクは、小瓶に入った薬のような物を差し出した。

見た目は培養液にも似ている。


来雄)「これ何ですか?」


シズク)「それを飲めば、あなたの片思いは忽ち報いられます。つまりすぐ奈緒さんの元へ行けると言う事です」


来雄)「ほ…本当ですか?!」


シズク)「但し、来雄さん。お1つだけご確認いたします。あなた、本当にその奈緒さんの事を愛してますか?例え自分がどんな状態になっても、ずっと彼女のそばにいたい気持ちは変わりませんか?」


NA)

シズクは急に冷静に訊いて来た。

だが俺の心は変わらなかった。


来雄)「…はい!彼女と一緒の空間にいられるなら、俺はどんな状態でも構いません!ただずっと近くで彼女の事を見ていたいんです!」


シズク)「…わかりました。それではお飲みなさい。あなたは奈緒さんに迷惑を掛ける事無く、ただ静かに一緒の空間で、彼女をずっと見守る事が出来るでしょう…」


NA)

俺はその場で薬を飲み干した。


ト書き〈数日後、奈緒の自宅マンション〉


宅急便)「すいませーん、宅急便でーす!」


奈緒)「はーい」


宅急便)「ハンコかサインお願いします」


奈緒)「やーっと届いた♪」


NA:奈緒)

この日、前々から注文していた観葉植物・テーブルヤシがやっと届いた。

私は見事なそのテーブルヤシを、部屋のテーブルの上に置いた。


奈緒)「ふふん♪これこれ、前から欲しかったのよねぇ~」


NA)

テーブルヤシは生長が遅いから、その分ゆっくり時間を掛けて育てられる。

私はお花を育てるのが何よりも好き。

この日、私は1日中ルンルン気分♪


ト書き〈数日後〉


奈緒)「…なんだろ…。誰かに…見られてるような…」


NA)

それから数日間。

私は何故か部屋の中で、誰かに見られてるような感覚を味わっていた。

部屋の隅々を見回っても誰もいない。

その時ふと、テーブルヤシに目が入(い)った。


奈緒)「…まさかね…」


NA)

あろう事か私はその時、そのテーブルヤシがアイツに見えた。

私を散々悩ませた、あの初須来雄に。


ト書き〈テーブルヤシになった初須来雄〉


来雄)「(グフフ…ぐふふ…奈緒ちゃあん…ボォクはぁ…これからもずうっとキミを見ているよォおぉ…だからキミも観葉植物になっちゃったボクをぉ…しっかり毎日ィ…見詰めて育ててねぇ…ぐふふ…)」(ヤシの葉に来雄の顔がうっすら映る感じで:奈緒には見えない)


ト書き〈奈緒のマンションを外から眺めるシズク〉


シズク)「…結局テーブルヤシになっちゃった来雄。でも彼はずっと奈緒のそばにいて、静かな空間で彼女を見守れる。奈緒も彼を見詰めながら彼を育てる。来雄にとっては最高の空間になるのでしょうね」


シズク)「私は来雄の純粋な欲望から生まれた生霊。来雄の『どうしても奈緒のそばにいたい』と言う純粋な気持ちを叶えてあげた。あの日彼に渡した物は、人間をそっくり観葉植物へ変えてしまう薬」


シズク)「テーブルヤシの花言葉は『ずっと貴方を見守ります』。植物だから奈緒に迷惑を掛ける事も無い。奈緒もそんな彼を彼と認めず、植物に成った彼を精魂込めて育てて行くわ」


シズク)「2人の幸せが一致したその空間で、彼は『静かなストーカー』としてその生涯を終えて行く事でしょう…」



エンディング~


エクソちゃん:今回はまぁハッピーエンド…って言っていいのかなぁ?来雄にとっては。

デビルくん:まぁ来雄にとっちゃそうだろうな。奈緒にとっちゃ大迷惑再び!って感じだなコレは。

エクソちゃん:まぁそうだよねぇ。でも今の世の中って、最近になってからか、かなりわいせつ行為とかストーカーとかって多くなったような感じだよね?そんな気しない?

デビルくん:そだな。まぁ所詮は人間、誰でも一皮むけば、そんな欲望の塊が渦巻いてんだろ。今さら驚きゃしねーよ。

エクソちゃん:でも被害者にとっちゃやっぱ大迷惑よね!そこん所でさ、今回みたいな「植物のストーカー」って感じならさ、その被害も最小限に食い留められるような、そんな気するんだけどどう?怖いのは「実はその植物、人間でしたー」みたいな所だけでさ。

デビルくん:まぁその花が人間て気付かなきゃ、被害者は無いだろうな。

エクソちゃん:最後、結構面白かったね。「幸せが一致した空間で一緒にいられる」っての♪世の中のストーカーも皆こんな感じになっちゃったらいーのにね~。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=fSsjcLFcBNk&t=64s

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

静かなストーカー…その成れの果ての姿とは…? 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ