居場所が無い彼の居場所は意外な所に…

天川裕司

居場所が無い彼の居場所は意外な所に…

タイトル:(仮)居場所が無い彼の居場所は意外な所に…


1行要約:

居場所を失くした少年の末路


▼登場人物

●井場翔太(いばしょうた):男性。16歳。高校2年生。超気弱な性格。進学校へ入学。友達が出来ず居場所が次第に無くなる。家でも「勉強、勉強」の毎日でストレスが溜まり居場所を失くす。

●安田優子(やすだゆうこ):女性。16歳。奇麗で可愛い。性格も優しい。翔太と同じクラスの女子。翔太の憧れで片思いの相手。

●母親:翔太の母親。45歳。根っからの教育ママ。

●剛田(ごうだ):男性。16歳。翔太と同じクラス。優子の事が好き。翔太をいじめる。

●新田朝子(あらたあさこ):女性。20代。翔太の「居場所が欲しい」と言う欲求から生まれた生霊。


▼場所設定

●きらめき高校:超が付く程の進学校。翔太が通学している。

●公園:翔太の自宅近くにある。翔太の行き付け。ひとけはほとんど無い。

●井場翔太の自宅:やや高級住宅の一戸建て。家は資産家。

●安田優子の自宅:一般的な一戸建てのイメージで。


▼アイテム

●友(とも)いらず:

朝子が翔太に渡す液体の秘薬。

・これを飲んだ人の姿は見えるがその体に触れる事は出来ない。

・飲んだ本人は霊になり、この世では死んだ状態になる。

・飲むと静止画像のように動けなくなる。

・居場所がもし無くなれば、新しく居たい場所へテレポート出来る。

・テレポート後も静止画像のままじっとそこにいるだけ。


NAは井場翔太でよろしくお願いいたします。



オープニング~


エクソちゃん:ねぇデビルくん、デビルくんって「自分の居場所が欲しい~!」って思った事ある?

デビルくん:自分の居場所?ンなモンこの地球上全部が俺の居場所じゃねぇか♪

エクソちゃん:ホント、図々しいわよね~アンタって。今日のお話はね、自分の居場所を失くした男子高校生のお話なんだ。

エクソちゃん:彼は学校だけじゃなく家でも居場所が無くなっちゃって、結局、自分の居場所を無心するようになってくの。

デビルくん:ふむ。まぁよくある話だな。

エクソちゃん:そんな時に不思議な女性に会ってアドバイスを貰うんだけど、アドバイスだけじゃもう我慢できなくなるのよ。で遂に或る日、一線を超えちゃって…。

デビルくん:ふぅん。

エクソちゃん:まぁ取り敢えず見てみようよ。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=4337字)


ト書き〈朝、きらめき高校〉


翔太)「お、おはよう…」


NA)

挨拶しても無視される。


剛田)「よぉ翔太ぁ!お前まぁた景気よく無視されてんなぁ~♪」


翔太)「ご…剛田君…」


剛田)「ったくお前ってホント影が薄いよな。なぁそれはそうとよ、ちょっと金貸してくんね?今度欲しい本買うのに金要んだよ。な、頼むぜ」


NA)

俺は井場翔太(16歳)。

きらめき高校2年生。

最近は学校でも居場所が無い。ずっと虐められる毎日だ。

ここは超が付く程の進学校。

そんなトコでも、虐めの実態は酷いもんだ。


ト書き〈自宅〉


翔太)「ね、ねぇ母さん、ちょっとお金くんないかな?」


母親)「なぁに?この前お小遣いあげた所でしょう」


翔太)「い、いや、明日学校で要るんだよ…」


母親)「アンタ、そんな事よりこの前のテスト、あれ何?もうすぐ大学受験なのに、今頃テストで70点なんて取っててどーすんの!100点取りなさい!」


翔太)「…いやこの前のテストは難しかったんだよ。範囲も広かったし…」


母親)「ハイハイ、言い訳はいいから!とっとと部屋上がって勉強なさい」


翔太)「はぁ…」


NA)

親は鬼畜のように勉強を押し付けて来る。

家でも俺が安心出来る居場所は無い。

学校では虐められる毎日。

もう生きてるのが嫌になって来た。


ト書き〈翌日、学校〉


剛田)「おい翔太ぁ!昨日言った金、どーしたんだよ!」


翔太)「ごめん、貰えなかったんだよ」


剛田)「何だと!?翔太のくせに生意気だぞ!」


優子)「ちょっと剛田君!あなた好い加減にしなさいよ!」


剛田)「あ…安田…、い、いやこれは別に…ハハ…」


翔太)「安田さん…」


NA)

仲裁に入ってくれた彼女は安田優子(16歳)。

このクラスの高嶺の花的存在。

奇麗で可愛い上に、とにかく優しい性格。

俺は彼女に惚れていた。

でも完全なる片思い。


剛田)「チっ!」


NA)

剛田は俺の胸元から手を離し、そのまま去って言った。

剛田も彼女が好きだった。


翔太)「あ…有難う、安田さん」


優子)「井場君、大丈夫?」


翔太)「うん、大丈夫」


ト書き〈公園〉


NA)

その日の帰り。

俺は家から最寄りの公園に行った。

学校にも家にも自分の居場所を失くした俺。

もうこんな場所しか残ってない。


翔太)「はぁ。今日も優子ちゃん、可愛かったなぁ。ホント、あんな子がいつもそばにいてくれたらいいのになぁ…。ま、どうせ無理か。こんな自分の居場所すら失くして、家にも帰れず公園ブラついてるようなヤツが(笑)」


NA)

いつものように愚痴っていた時…


朝子)「こんにちは♪なんかさっきから溜息ばっかだね?」


翔太)「えっ!」


NA)

急に女性の声がした。

声のする方を振り返ってみると、そこには20代くらいの女性が立っていた。


翔太)「あ…あんた一体、誰…?」


朝子)「ウフ、ちょうどそこ通り掛かったらさ、あなたの深ぁい溜息が聴こえて来てね。ちょっと気になっちゃったのよん♪ゴメン、迷惑だった?」


翔太)「あ、いえ…別に…」


NA)

正直、誰かに悩みを聴いて欲しかった。

悩みなんか誰も聞いてくれない。

だから知らない女性でも、こんな風に声を掛けてくれたのは嬉しかった。


朝子)「ねぇ、何かとーっても大きな悩み事、抱えてない?」


翔太)「え?」


朝子)「もし良かったらさ、アタシにその悩み事、話してみない?誰かに悩みを話しきっちゃえば、きっと気持ちが軽くなると思うよ♪」


翔太)「はぁ…」


NA)

不思議な女性。

俺の心はいつしかオープンになり、今の悩みを全て話していた。


朝子)「なるほどねぇ。学校じゃ友達に虐められて、家じゃ親の過度な教育熱心。やっぱ現代の学生さんって、結構大変なのねぇ」


翔太)「ホント僕もう、このままじゃ自分の居場所失くしちゃいます…。こんな生活からどうやれば抜け出せるかなんて、ホント、毎日考えてるんです…」


翔太)「…あの、ところであなたは…?」


朝子)「あごめんね、まだ自己紹介してなかったよね?」


NA)

そう言って名刺を差し出して来た。


翔太)「…『安らぎ空間を提供するメンタルコーチ』…新田朝子…?」


朝子)「あなたのような『今の生活にどうしても安らぎが得られない』『自分だけの居場所を手に入れたい』って人の為に、理想の空間を提供しているの」


翔太)「へぇ…」


朝子)「ね、もし良かったら君、1度試してみない?」


翔太)「え…?でもこう言うのって、お金要るんですよね?」


朝子)「ウフフ、無料で大丈夫よ。もともとボランティアだから」


翔太)「無料…?」


NA)

取り敢えず俺は改めて自己紹介し、彼女に相談してみた。


朝子)「まぁ人間関係なんて、ほんの少しの匙加減ですぐ変わっちゃうからね。自分から声掛けてみて駄目だったら、ちょっと距離置いて相手の様子見るとか。サプライズみたいな感じで何かプレゼントするとか」


朝子)「あと、ネットや専門書でいろんな悩みのパターンとその解決法を覚えておいて、誰かの悩みを親身になって聴いてあげるとか。あ、でもこの場合は『悩みの駆け込み寺』にならないように注意が必要だけどね」


朝子)「でもね翔太君。どんな場合でもね、自分を失くしちゃダメ。つまり流されないようにする、って事だけど、常に『本当はどうしたいか』って事を心に置いといて、いろんな物事に自主的に当たってみるって事が大切なの」


翔太)「…はぁ」


NA)

それから小1時間ほど話した。

彼女の助言の内容は、今まで何度か試して来た事。

でも他人にそう言われると、やはり不思議と勇気が湧いて来る。

俺は翌日からもう1度、自分の居場所を取り戻す努力をしてみた。


ト書き〈数か月後、学校で剛田に殴られる〉


NA)

それから数か月後の或る日…


剛田)「お前、ふざけんなぁ!」


翔太)「うぷぁあ!」


NA)

この日、俺は剛田に殴り飛ばされた。

理由は優子。

2人とも彼女の事が好き。

この日、俺は思わず彼女の事で剛田に殴り掛かってしまったのだ。

あれから数か月、俺の生活は少しずつ変わっていた。

「自分の居場所」を取り戻そうと必死になったからか、周りの俺を見る目が少しずつ変わった。

そんな矢先の事だった。


剛田)「オラァ!オラァ!」(蹴りまくる)


翔太)「ご…ゴメン!ゴメンって!ごふっ…!」


優子)「ちょ…ちょっと剛田君!やめてよ!」


剛田)「うるせぇ!」


NA)

剛田に殴られたこの日。

それまで根付いた俺の心の中の自信は一瞬で消え去った。


ト書き〈放課後〉


翔太)「痛テテ…、くそぅ…」


NA)

その日の放課後。

俺は剛田に殴られた頬の傷がまだ痛く、学校の水場で傷を洗っていた。

そして帰ろうとした時…


ト書き〈体育館裏で剛田と優子がキスしている〉


翔太)「ん?…えぇ!?」


NA)

水場は体育館近くにある。

歩いて正門へ向かう時、つい体育館裏が見えるのだ。

その体育館裏でなんと、優子と剛田がキスし合っていた。


翔太)「そ…そんな…」


NA)

もう何も言えない。

2人はデキていた。

俺の心はズタボロだった


ト書き〈公園〉


翔太)「(うわぁぁあぁ!)」


NA)

俺は心の中で激しく泣いた。

その日の帰り、いつもの公園に来た。

もう立ち直る事が出来ないと考えていたその時…


朝子)「翔太君♪どうしたの?また落ち込んじゃった?」


翔太)「はっ…朝子…さん…」


NA)

この時、一瞬、不思議な気がした。

俺が落ち込んだ時には必ず現れる。

俺はそんな彼女に何か神秘のようなものを感じた。

まるで自分の女神だと錯覚したのだ。


朝子)「ちょっと翔太君、どうしちゃったのよぅ?」


翔太)「あれから一生懸命努力しました!でも駄目だったんです!」


翔太)「ねぇお願いです!僕に本当の安らぎの空間を与えて下さい!あなたなら出来るでしょう!朝子さんは不思議な感覚を持ってる!僕がこうして落ち込んだ時には必ず来てくれる!それって僕を助けてくれる為なんでしょう!僕には朝子さんが女神のように見えるんです!」


翔太)「ねぇお願いします!助けて下さい!!」


NA)

はたから見れば狂った光景。

でも本気。

俺はひたすら安らぎの空間を朝子に求めた。

しかし彼女は冷静に応えてくれた。


朝子)「…わかったわ。じゃあこれを飲みなさい」


NA)

そう言って瓶入りのドリンクをくれた。


翔太)「こ…これは?」


朝子)「それを飲めば、君は一瞬で安らぎの空間へ行けるわ」


翔太)「ほ…本当ですか?!」


朝子)「ええ。でもね翔太君。それを飲めば君はもう2度と、この現実の空間には帰って来れないのよ。それでもいいならお飲みなさい」


翔太)「有難うございます!」


NA)

俺は彼女の言う事を最後まで聞かず、速攻で飲み干した。

その瞬間、俺の体は消えてしまった…


ト書き〈夜、安田宅〉

ト書き〈風呂上りの優子が自室に来て寝る所〉


優子)「ふぅ、さっぱりしたぁ。さて、そろそろ寝ますか」


NA)

優子が自分の部屋へ上がり寝ようとした頃。

クローゼットの中から「ゴト…」と音がした。


優子)「ん?」


NA)

クローゼットを外から見詰める優子。

家の軋み程度に思っていたが、何となく気になった。


優子)「…何だろ…?」


ト書き〈クローゼットの中に翔太がいる〉


NA)

優子は軽い気持ちでクローゼットを開けて見た。

すると…


優子)「ぎゃあぁああぁぁ!」


NA)

そこには体育座りをし、不気味に笑う俺がいた。

俺の体は静止画像のように止まっている。

その姿は見えるが、誰も触れられない。

俺も動く事無く、ただじっとその空間にいるだけだ。

俺だけの、完全なる安住空間。


翔太)「(へっへ…へっへへ…やっぱぁ…俺が1番安心できる場所はぁ…優子ちゃぁあんのそばだけだなぁ…)」(心の中で呟くように)


ト書き〈安田宅を外から眺めながら〉


朝子)「やれやれ、優子ちゃんにとってはとんだ災難ね。彼が最期に求めた安住の空間は、やはり彼女のそばだったか。翔太にとってはこれが安住の空間。誰かの迷惑になっても自分の居場所…。得てして自分の居場所を無理に見付ける場合、こんな風に誰かを犠牲にする事もあるようね」


朝子)「私は翔太の夢と欲望から生まれた生霊。本当はアドバイスだけで、彼に自力で自分の居場所を見付けて貰いたかった。でも無理だったようね…」


朝子)「私があのとき彼にあげたドリンクは『友いらず』。西洋で古来より伝わる秘伝の薬。周りに友達がいなくても、自分が好きな場所へ行けば至高の幸福が得られる。翔太の姿は見えるけど、その体には触れられない。翔太も動かない。ただ静止画像のようにそこにいるだけ」


ト書き〈「友いらず」の効果〉

・これを飲んだ人の姿は見えるがその体に触れる事は出来ない。

・飲んだ本人は霊になり、この世では死んだ状態になる。

・飲むと静止画像のように動けなくなる。

・居場所がもし無くなれば、新しく居たい場所へテレポート出来る。

・テレポート後も静止画像のままじっとそこにいるだけ。


朝子)「もしかすると優子ちゃん、引っ越しちゃうかも。でも引っ越した先にも翔太の霊、付いてっちゃうかも知れないわね」



エンディング~


エクソちゃん:うーん、今回はグッドエンド?バッドエンド?翔太と優子の立場によって、大きく変わっちゃうようね。

デビルくん:まぁ翔太も動かなくてただそこにじっとしてるだけってんならよ、別に害はねぇんだし、優子にとってもそれ程バッドエンドにはならないんじゃねぇの?

エクソちゃん:でも優子は人間よ?そんな優子にとったらやっぱホラー以外何物でも無いんじゃない?そんな訳の分かんないモンがずっとそばにいたらさ。

デビルくん:まぁそりゃなぁ。

エクソちゃん:でも面白い事言ってたわよね。「自分の居場所を強引に求める事は、誰かにとっては迷惑になる」とか何とか。これって、普通に日常生活でもある事よね。

デビルくん:まぁよくわかんねぇけど、自分の居場所求めるって事ぁ、家の土地を買うみてぇなモンか。そうなりゃ自分のテリトリーに誰も入れたくない、なんて思いも普通に湧いて来る事になるわな。

エクソちゃん:そうよねぇ。自分の居場所とか安らぎの空間求めるのはいいけど、出来るだけ他人に迷惑にならないよう、ちゃんと配慮しなくちゃいけないわねぇ。

(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=2rk-weDJQlw&t=69s

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居場所が無い彼の居場所は意外な所に… 天川裕司 @tenkawayuji

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