第3話 対処方法

「おはょ」

「おはよう」


「ちゃんと居るね」

「うん。」

「よかった。」

「約束だから。麗華との」

「そうだよ。破ったら殺すから。」

「うん。それでいい。」

「……よかった。」



麗華も僕も追い込まれると弱い。

でもそういう時にお互いがお互いを支え合ってきた。


麗華も17歳の時に一度消えてる。

でもずっとずっとお互いがお互いを意識してた。


それで、何年前だ?また復活した。

僕の方が重症化してた。



人間不信もそう。誰でもいいから愛して欲しい。

でも。結局信じれないから怖くてこっちから逃げる。


でも…麗華は、やつは僕を襟首捕まえて猫みたいに扱ってくれる。



「麗華…。」

「うん?」

「お腹減った」

「お腹減った?」

「じゃあ一緒に行こ。」

「うん。」


――――――キッチンに行くと一緒に作業する。


「お皿とって」

「うん。」

「それじゃない。」

「お箸取って」

「うん」

「よく見て。柄、違う」


僕は…朝が嫌い。

ある日、僕は爆発した。


――――――――――――。


「お皿取って」

「うん。」

「違う。そっち。」


「…わかんない!!毎日、毎日、違うって言われる!!お箸だって!コップだって!!もういいよ!俺取らないから!」


「…ごめん。」

「別に麗華は悪くないから。」


「どこ行くの??」

「アイツのとこ。…一緒に行く?」

「行く。」



――――――――――――「みあー!」

「何。こんな朝早くに2人して。」


「喧嘩した!」

「違う俺が切れたの!」

「痴話喧嘩?」

「…俺が悪いの。でも耐えられないの!」

「…どうしたらいいかわかんなくて。」


「入って、」


「おじゃまします。」

「おじゃまします」


「なんか飲む?コーヒー?」

「気にしないで。話聞いてくれるだけで嬉しいから。」

「…ブラックでしょあんた。麗華はカフェラテね。」


キッチンで背を向けてコーヒーを作る信愛の横に行った。



「火傷するよ。」

「いい。しても。」

「朝から気持ち悪いこと言わないで。」

「まだなんも言ってない」

「あぁ。そうか。」


「……。」

「なに。」

「信愛、行きじゅまった。」

「はい?」

「行きづまったの!」

「なにが」


「毎朝麗華に怒られんの。」

「どんなこと?」

「朝ごはんの時にお皿取るの俺なの。けど毎日怒られる。」

「『それじゃない』って?」

「うん。お箸も。」

「『柄違う』って?」



「信愛、あたし達合わないのかな?」

「ほら、そっち行って。」


「…合わないとか合うとかそういうのじゃない。こいつの馬鹿さに付き合えてないだけ。」

「どういう事?」


「このバカには明確に言わないと。」

「明確?」

「そう。」


「何色の、どういう質の、どんな形の、どんな大きさのお皿をとって。こういう言い方。…ならわかりやすいでしょ?」


「わかりやすい。」

「侑海、あんた今さ、こういうタイプの白色の、ザラザラした取っ手付きのコップ、食器棚から持ってきて。」

「わかった。」


「……。」

「……。」


姉さん達が僕を見守る。


「……信愛、これ?」

「持ってきて。」

「ふん。」


――――――「見せて。」

「はい。これ?」

「えらい!正解。よくわかったね。ツルツルもあるからね。…麗華、ここまで褒めなくてもいいけど、『ありがとう』は言ってあげた方がいいかも。」

「めんどくさい。」

「でも、こいつとやってくなら必要だよ?」

「じゃあお箸は?」

「…侑海、キッチンのさ、二番目の引き出しにお箸入ってるんだ?あんたのとあたしの持ってきて。」

「はーい。」


―――――――――「見せて。」


「これとこれ。」

「そうだね。これとこれだね。」

「…これどうしてんの?」

「小さい輪ゴムあるでしょ?あれでくっつけてる。」

「あぁ。なるほど。それなら迷子にならないわ」

「…侑海、あんたの靴下持っといで。」

「くちゅした?」

「…そう。」


わざとじゃない。滑舌がたまに悪くなる。


―――――「麗華、多分こいつ、服は自分でしたがるから大丈夫だとは思うんだけと、靴下はこうさせてる。」

「確かに。こうなってる。なんかあとアイテムごとにドン、ドン、って粗方まとめてある。」

「でしょ?なんでもそうなの。自分ルールが崩れるとパニックになるから。」

「そうだね。見てたらそんな感じ。」


「うーん。お皿に関してはそうだね。ちょっとそれ試してみるかな。」

「うん、だと、こいつも楽だし、あんたもストレス少ないかもね。」



僕は信愛を横から抱きしめた。


「…なに?」

「信愛…」

「うん?」

「しんどいよ…」

「あんたが選んだんでしょ?仕方ないでしょ?」


「侑海、あんまり長居しても申し訳ないから行こ?」

「うん。」


僕は…少しの間信愛から離れなかった。


「大丈夫。いつでもおいで。」

でも僕が「行きたくない」と小声で囁くと、

「行きなさい」と返された。



―――――――――麗華の家。


帰宅後直ぐに彼女を求めた。


寂しかった。信愛に返されたことが。



――――――――――――。


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桜姫 海星 @Kaisei123

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