Part27:「邂逅」
RP――Reconstruction Point。復興起点の訳でも呼ばれる。
星宇宙等がこれよりの行程で接触を目指していた勢力組織であり。今に向こうに合わられた重戦車――A107ファイティングベヒーモスの所属元。
そして今にParty部隊のAMSMに爆炎を浴びせ包んだのは、状況位置関係からそのRPのA107重戦車以外に考えられなかった。
さらに現れたのはその重戦車1両のみに留まらない。
A107重戦車のコマンドキューポラ上に姿も見せる戦車長と思しき乗員が、片腕を翳して何やら指示を促す動きを見せている。そしてそれに呼応するように、戦車の後方や建物の影などから多数の人影が駆け出て来て姿を現した。
いずれもが共通の行動作業服(フィールドジャケット)を纏い、そして銃火器類で武装。その姿様相や展開する動きは、組織・部隊のそれ。
RPが組織保有する行動部隊である――RP Arm Force。
RP AF、〝復興起点 装備隊〟とも訳される、一種の軍隊。
それが現れた者等の正体であった。
「やっぱり……!RPだッ!」
予期せぬ介入者の、その正体が明らかになり確信に至り声を発し上げる星宇宙。
「!」
しかしそちらに意識が向いていた星宇宙は。次には自分に差した大きな陰に気配、そして何より殺気に気づいた。
視線を前に戻せば、そこには先に既にそこまで迫っていた敵PAメカ娘の一体が。星宇宙の目と鼻の先に居た。
そしてそのPAメカ娘の装備する、打撃戦用ハンドアームが振り上げられている――星宇宙を狙う軌道で。
(しまっ――)
PAメカ娘はRP隊の出現に焦りながらも。まずは目の前に居る星宇宙を、邪魔立てする存在を真っ先の排除対象と考えたのだ。
眼前に見えたその脅威、動きを前に、一瞬でも注意を外してしまった己の不手際を呪う星宇宙。
しかしすでに遅く。強靭な打撃アームは次には、星宇宙へ向けて勢いよく振り下ろされる――
ガギッ――と。
歪な金属の擦れぶつかる音が響いたのは、その直後瞬間であった。
星宇宙がアームに潰されてしまった音か――否。
そうであった場合の音とは今のものは明らかに異なり。
「――え?」
何より星宇宙は健在であった。
そしてその視線は上がり、その先に見える光景に、驚き目を剥いている。
そこにあったのは、今まさに降り降ろされようとしていたPAメカ娘の打撃アームが、〝弾かれ退けられた〟光景。
そしてPAメカ娘の前に、この場に割り込むように。いや、まさに割り込み入ったのであろう様相で立ち構える、一人の〝人物〟の姿であった。
「――」
そこに在り立ち構えていたのは、一人の男性だ。
高めの身長に黒い短髪、年齢は30代前後か。
覗き見えた顔立ちは、どこか狡猾そうな雰囲気で。失礼を言うと陰険な悪巧みを得意としていそうな雰囲気を漂わせている。
服装装備は実用性重視の簡易で丈夫なデザインの、カーキ色の行動作業服(フィールドジャケット)。そしてキャンペーンハット。
これらはRP AFの隊員に支給される衣服装備、つまり軍服。それが、男性がRPの隊員である事を示していた。
そして彼の片腕に持ち構えられるは、大口径のリバルバー拳銃だ。
少なく見ても44口径クラス、いや下手をするとそれ以上かもしれない。
そのリボルバーは男性の腕により突き出し構えられている。その位置関係は、今に弾き退けられたPAメカ娘のアームの軌道を辿った元。
そしてよくよく見れば、そのPAメカ娘のアームはその内腹側が撃たれ損傷していた。
(踏み込んで、直近距離で捻じ込んだのか!)
星宇宙もそれを見止め気づき、そして内心で声を浮かべる。
パワーアーマーは強靭な装甲と防御を誇るが、しかしそれを完全無欠ではない。限定的ではるが装甲に隙もある。
そしてRP隊員のその男性は、PAメカ娘の文字通り目の前まで踏み込み現れ。装甲の隙に、脆弱な部分にリボルバーを押し付ける勢いで突き込み撃ち放ったようだ。
「んな……!?お、おのれっ!」
そのアームを弾かれたPAメカ娘は、突然現れた新手に。そしてとてつもない策でアームを弾かれ妨害させた事実を認識し、目を剥き驚愕の声を上げる。
そしてしかし次にはその事実に、それを成した目の前の人物に激昂。もう片方のアームを考えもそこそこに動かし、その隊員へぶつけようとした。
が――
「ぐぁぅっ!?」
甲高い破裂音が響き。そしてそのPAメカ娘からまたも、しかしより濁った悲鳴が上がる。
見れば隊員の彼の持つリボルバーが、今度はPAの正面装甲の重ね合わせの僅かな隙間から捻じ込み突き込まれている。
今に響いたのはその上での発砲音、そしてPAの内にある娘の体を撃ち抜き屠ったための悲鳴に他ならなかった。
(なんっつー……!)
その事実を認識し、そして息絶え重々しく膝を崩し倒れたPAメカ娘を見つつ。星宇宙は今度は呆れと感嘆の混じった言葉を内心で零す。
今のPAの弱点を突く方法は言えば簡単だが、実際は強靭な敵の前に身を曝け出す、大変にリスクを伴う作戦だ。
しかしそれを堂々たる様相で敢行し、そして悠々と成し遂げて見せたそのRP隊員の男性。
星宇宙が浮かべたのは、それに向けての評価と感嘆、そして畏怖の念であった。
「――君、無事か?」
「!」
その男性はPA娘にはすでに興味を向けておらず、気付けば立ち構える姿勢で星宇宙の方を見ていて。そしてそんな尋ねる言葉を掛けて来た。
「あ、あぁ……俺は大丈夫っ」
それに戸惑いつつ答える星宇宙。
「!」
その時、RP隊員の男性は微かに目を見開き、何かに気づいた様子を見せる。
「だけどキャラバンの人が負傷してる、そっちに手を貸さないとっ!」
しかし星宇宙はいっぱいいっぱい気味の状況からそれには気づかず。キャラバンに負傷者が居る旨を訴える。
「了解、それもこちらで対応する」
それを受けたRP隊員の男性は表情を淡々としたものに戻し、負傷者を引き受ける旨を発して返す。
「一層ドンパチが騒がしくなる、自分の身を守るんだ」
「あ、あぁ」
そしてそう促す旨を紡ぎ寄越すと、身を翻してその向こう。Party部隊の多くが未だ残存する十字路方向へと向かって行く。
「――え、あ――……あんなネームドって、居たっけ?」
その背中を見送りながら。しかし星宇宙は直後に、その姿正体に覚えが無い事実に気づいて声を零した。
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