Part20:「推しキャラ愉悦TSおじさん」
「どーですかねぇ?得体の知れない現地人ですよ?腹の内でなんぞ企ててる可能性はァ?」
様相のまるで異なる、陰険のお手本のような声色と台詞が割り込んだ。
声の主はオックスだ。
彼女(彼)はその今はお嬢様然としたまでの可憐な顔を、しかしやはり粗暴・陰険の見本にできそうなまでの顰め面に染めて。ファースやクラウレーの側を縫って出て来て、星宇宙の前に立つ。
「どこのウマの骨とも知れねぇてめぇが、ロクでもねぇアウトローじゃねェって保証はあるのかァ?」
相対し、そんな無遠慮のお手本のような言葉を星宇宙に叩きつけるオックス。
「――ふん、残念だな。ToB騎士は礼節を重んじる人たちと聞いていたが、例外もいるようだ」
しかし、星宇宙にあっては。
その端麗な顔をしかし冷たくニヒルな色形に変えると、次には明確な皮肉の色でそんな台詞をオックスに返して見せた。
今までと様相を一変する。それは、明らかな挑発のそれだ。
「ぁアんッ?身の程を弁えるべきだな、現地人ッ?」
その挑発に。
気の短いオックスは米神に青筋を浮かべ、ズイと顔をより近づけて圧する言葉を紡ぐ。
星宇宙とオックスの、今は〝顔がいい〟二人の可愛らしい鼻先が突き合い。
ついでに二人の、それぞれバニースーツとぴっちりスカウトスーツに飾られ主張する。それぞれつつまし目な、もしくはたわわなおっぱいが競う様に突き合う。
空気のヒリつく、まさに一触即発の状況――
……に、一見は見えるのだが。
しかし。
(――ほわぁーっ、ツン期のオックスだーっ///。久しぶりに見るから新鮮っ///)
オックスのお嬢様フェイスを眼前に、クールでニヒルな表情と目つきを維持する星宇宙は。
しかしその心の内では、なにかそんな事を浮かべながら。脳内星宇宙はなぜか「ニヨニヨ」と嬉し恥ずかしそうな表情を作っていたのだ。
実はこのオックス。ファースと同じように、これ以降ゲームが進むとコンパニオンとして仲間になるキャラであり。
そして明かせば、星宇宙のお気に入りキャラの一人であったのだ。
今に見えるように口調態度こそ悪く、初接触時こそこうして主人公(今の星宇宙)に突っかかって来るのだが。
実は口は悪くとも仲間思いなヤツであり。さらに特技技術にも長けており、ピンチの際にはブツクサ言いながらも状況を解決して見せるハイスペックキャラなのだ。
先に言った通り本来(バニラ)は男性であり。
プレイヤー、ファンからついたあだ名は〝ツンデレ男〟。
今はMODで姿こそ美少女ではあるが、そのキャラクタームーヴは変わらず健在であり。
それを目の前で、おまけに自分を相手にする形で拝めたことにより。星宇宙は、一種「萌え悶えて」いたのだ。
(やっべー、すっげーっ///オックスとダーティーな応酬しちゃったーっ、今の最高にクールだったくねっ?///)
合わせて暴露すると、今にオックスに向けて冷たく煽る言葉を返したのは――ノリだ。
実際にゲームでも煽る選択肢を選ぶことが可能で、星宇宙はそれを嬉々として再現したのだ。
そしておまけに。
憧れていてめっちゃ好きだった、ゲーム中のダーティーでクールなやり取りを。実際に自分が演じた体験した事によって。
星宇宙は内心で大分嬉しく思い、キモイくらいにテンション上がり。ぶっちゃけ快楽快感を覚えてキュンキュン来て、愉悦していた。
ヘンタイさんであった。
(星ちゃん、オックスっちとディスりバトル体験出来てうれしそうだねー)
そしてそれは、TDWL5のキャラクター知識を有するモカにはバレバレであり。
モカは生暖かーく生温ーい、(―ワ―)な顔で。星宇宙のプレイ、もとい状況を傍から見守っている。
《ツンデレ嫁キタ》
《俺嫁》
《まだツン期のオックス》
《ツンデレマッチョ男が、こんなに可愛くなっちゃって……》
《↑オックスは元から可愛いだろ!》
《嫁(男(TS美少女))》
《↑難問の計算式か何か?》
《↑字面に吸い込まれそう……》
《↑おめめぐるぐる》
《なぁ……いいだろオックス?俺たち同胞(はらから)なんだからさ》
そして星宇宙とモカには見えてるコメントウィンドウは。オックスの登場で同じくキャラ好きのコメントが沸き盛り上がっており。
《星宇宙おじさん、キメ顔してるけど口元緩んでますよ》
《前に小説サイトの近況でオックス好きって言ってたもんね》
《好きキャラとダーティーなやり取り体験出来てイきかけてると見た》
《へ、ヘンタイだー!》
《プレイが高度過ぎる》
《愉 悦 お じ さ ん》
《そういうプレイなん?》
《まぁ、しょうがないね。俺もしたいもん》
そして視聴者たちにもやはり、星宇宙の内心とヘンタイ的諸々はバレバレであり。
ツッコミのコメントが流れている。
「エンジニア・ベーシック・オックス、弁えたまえッ」
そんな見守るモカと視聴者と。
一件キメ顔を作りながらも、高度なそういうプレイで心内で愉悦していた星宇宙だが。
そこへファースの毅然とした様相声色の言葉が割り込んだ。
「それは身の危険を顧みず、力となってくれた彼女等への侮辱となるッ。看過できんぞ」
続け、説きそして咎め警告する言葉がオックスへと紡がれる。
「ッ――了解です、キャプテン・ファースッ」
それを受けたオックスは、その星宇宙等に向ける刺すまでの顔色態度様相は一貫して崩すことは無かったが。
長の指示命令には従うと言うように、ファースに端的に答え。
最後に星宇宙を視線で一刺ししてから、踵を返して行った。
「すまない。彼は決して悪い者では無いのだが、少し警戒の色が強いきらいがあるんだ」
そして入れ替わりに星宇宙の側に立ったファースが、変わってそう謝罪の言葉を紡ぐ。
「はっ!?――っと……大丈夫、謝らないでくれ。それも考え方だし、この厳しく油断ならない世界では一つのあるべき形だろう」
その言葉で、ようやく脳内愉悦ワールドから引き戻された星宇宙は。
それに微かに驚き戸惑った後に取り繕い直し。そう、もっともらしい言葉を紡いで返した。
ファースはそれを純粋に受け取り、謝罪と礼の言葉を返したが。
方やモカからは、まるっとお見通しの生温い視線がまた向けられ。
そしてコメント欄には。白々しい星宇宙のそれに、またツッコミのコメントが怒涛の如く流れたのは零れ話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます