第1話 小竜との出会い
逃げていくように出てきた俺は行くあてもなく、彷徨っていた。とりあえず、師匠から遠く離れた場所に行きたくて海までこえた。金に関しては魔物を倒してそれを売っていたら思いの外、稼げた。拍子抜けするほど、人間社会に上手く適合している自分に驚いた。この力さえ知られなければ生きていけるのだ。知られさえしなければ。
「次はどこ行こうかな。」
旅を出てから数ヶ月、すっかりこの生活にも慣れ今では楽しむ余裕も出てきた。自分の逃げ癖には恐怖を感じるとともに感謝しなければならない。呑気に森の中を歩いていると突然顔に何かが覆い被さった。俺はその勢いに体勢を崩し尻餅をついた。
「ほぉい!ほけ!」
俺は顔に取りついている何かを掴み引き剥がそうとするが思っていたより力が強くて離れなかった。
「小僧!我に食べ物を寄越せ!寄越さないとずっとこのままだぞ!」
子供の声で脅されても恐怖は感じず、可愛ささえ感じてしまった。
「ふぁーたはら、ふぁなれろ。」
顔に取りついていたそれはそっと離れて俺の足に乗った。それの正体は小竜だった。成体の竜は大きく、近寄ることさえ難しいが子供の姿は可愛らしくマスコットか何かと勘違いするほどだった。
「はやく寄越せ!小僧!」
口調は可愛さのかけらもないが。俺は仕方なく鞄からりんごを取り出す。この鞄はこの小ささから想像出来ないほど多くのものが入る。そのりんごを小竜の前に差し出す。
「ほらよ。」
差し出されたりんごを小竜を勢いよく奪いかぶりついた。何故かその小さな姿に昔の俺を思い出してしまい無視は出来なかった。
「うまいか?」
小竜は何も答えずりんごを頬張る。小竜の食事の邪魔は出来ず、座って小竜が食べ終わるのを待っていた。
「お前何か欲しいものはあるか?」
小竜は食べ終わると俺に問いかけてきた。その小さな姿で言われてもこいつに叶えられることは何かあるかと頭を巡らせたが思いつかなかった。俺は小さな頭を撫でて優しく答える。
「今はないよ。お前が食べたりんごの礼はいらないから。子供を助けるのは大人の義務だろ。」
その言葉に小竜は怒りを露わにした。
「我は小僧が思っているほど、子供ではない!本来ならとっくに成体になっているはずなんだ。我はたまたま他の奴らより成長が遅いだけだ!竜は、施しは受けぬ!願いを言え!小僧!」
その姿で言われても説得力のかけらもなく、子供の戯言にしか聞こえない。けど、『成長が遅いだけ』その言葉は幼い俺に両親が何度も言った言葉であり、俺が何度も心を落ち着かせるために言い聞かせた言葉でもあったせいで余計にこの小竜の言葉を無視出来なかった。
「分かったよ。分かった。じゃあこの辺で珍しい魔物とか珍しい宝を知らないか?」
ある程度稼げるようになったと言っても旅をしている間にいとも簡単に金はなくなっていく。だからこそ、少しでも稼いでおきたい気持ちはあった。
「それなら分かるぞ!我について来い。」
小竜は小さな足が歩き始める。その姿は非常に可愛らしかったが、これでは目的に着くのに何日かかるか分からない。俺は小竜を抱き上げた。小竜は嫌がって暴れ回ったが『俺が迷子になりそうなんだ。これで許してくれ。』と頼むと渋々受け入れてくれた。面倒な性格だが、分かりやすい性格で有難い。
「この中におる。感謝するがいい小僧。」
小竜の言われ通り進んでいくと、洞窟に辿り着いた。小竜は誇らしげに洞窟を指した。
「あぁ、ありがとう。」
俺は小竜を地面に下ろし、頭を撫でた。小竜は嫌な顔をしながら尻尾を振っていた。竜も犬みたいに尻尾振るのだと微笑ましい気持ちになった。面白くてずっと頭を撫でていると小竜が『いつまで撫でるのだ!』と怒り出した。
「じゃあ、俺は行くけどもうあんなことするなよ。俺じゃなかったら攫われてただろうから。」
小竜は生け捕りにして競売にかけると一生遊んで暮らせるような値段で売れる。だから、冒険者の奴らで狙っている奴は多くいる。魔物とはいえ、知能の高い生物を競売にかけるのは法律で禁止されてる国がほとんどだが、そうじゃない国もある。世界は広いということだ。
「我を見くびるな!我は竜だぞ。人間如きにやられる我ではない!」
全くもって説得力がないけど、そうであって欲しいよ。
洞窟に入ると、長い暗闇が続いていた。魔道具で明かりを灯すと、更に先に続く道が見えた。思っていたより、手強い相手の可能性がある。この力は出来る限り使いたくはないから剣で倒せない相手とは自ら戦いには行きたくない。帰ることも視野に入れながら慎重に前へ進んだ。しかし、一向に魔物がいる気配はなかった。
「あいつ、嘘をつきやがったか。」
嘘をつくメリットはないが、自分の無知を隠したかった可能性はある。俺はため息をつきながら引き返した。長いこと歩いたにも関わらず、一向に出口は見えなかった。考えられることは一つここが迷宮ダンジョンであり、道が変わるギミックが存在しているということだ。
「はぁ、嘘だろ。」
俺はその場にへたり込んだ。ダンジョンには師匠と修行の一環で入ったことはあるが旅に出てからは入ったことがなかった。危険な状態になった時、無意識にあの力を使いたくなかったから出来る限り避けてきていた。
「洞窟って時点で疑わなかった俺が悪いな、これは。」
ダンジョンは基本扉が存在する。ダンジョン自体が闇魔法で構成されているため、その力が外に影響しないように普通は封鎖されている。ちなみに闇魔法は代償を払えば何でも出来てしまう魔法だ。だから呪われた力ともよく言われる。そんな闇魔法で構成されているダンジョンを一体誰が何を代償に作ったのかは未だ分かっていない。きっと、計り知れない命を代償にしているのだろうと誰もが分かっているが口には出さないし、壊すこともしない。理由は二つ、一つはダンジョンから出てくるお宝、魔物の素材は世界の経済を支えている一部であるからだ。そしてもう一つの理由が壊すことが出来ないからだ。闇魔法を解く方法は存在しないのだ。闇魔法にかかった時点で解くことは不可能。だからこそ、多くの代償が必要になる。そんな魔法に手を出すことはもちろん法で禁止されている。この法に関しては禁止していない国は存在しない。それだけ闇魔法というのは危険な存在だ。扉がないのにも関わらず、ダンジョンが生成されていることは稀にある。そういうダンジョンは強い魔物はいないが、面倒なギミックが施されており、非常に面倒である。
「あいつは間違いなく、珍しい宝のありかには案内してくれたみたいだな。」
迷宮ダンジョンの場合、魔法で壁を破壊するゴリ押し戦法が使えることがほどんどだ。すぐに壁は再生するがその間に抜ければいい話だが、残念なことに俺は魔法が使えない。
「さて、どうするか。」
とりあえず、鞄に入っている魔道具を手当たり次第試してみるがほとんど生活道具で壁を破壊できるほどの魔道具は存在しない。俺は床に寝転がり一休みする選択を選んだ。どうしようもないことは世の中に多く存在する。それは今までの人生で痛いほど味わってきている。だからこそ、こういう時は一旦何も考えない。寝て起きたら良い案が思いつくかもしれない。このダンジョンは魔物も出ないようだから安眠出来そうだ。半分夢の中に落ちていた時、どこからか大きな爆発音が聞こえ俺は飛び上がった。
「なんだ?!」
俺は急いで剣を握りしめた。爆発音がどんどん勢いを増してこちらに向かってきていた。片手には剣を持ちもう片方の手指を動かし、動くことを確認した。これは旅に出てから危険な状況に遭遇した時にやる癖になっていた。あの力を使いたくないと思いながら、無意識に自分の最終防衛の道具として認識してるのだろう。目の前の壁が壊されるとともに、小竜が俺の腹に突撃してきた。
「ここにいたのか!小僧!」
小竜は尻尾を俺の腹に叩きつけた。その行為自体は痛くはないが、さっき突撃されたせいで傷んだ腹に小ダメージを与え続けている。俺は小竜を地面に下ろして腹に穴が空いていないことを確認する。
「どうして、お前がここにいるんだ?」
「我は、泣いて喜ぶお前の顔を見るために洞窟の前で待っていたのに一向に姿を現さぬから我自ら見に来てやったのだ。」
心配してくれていたんだろうが非常にツンが強いくせのある奴だな。それでも、助かったことに変わりはない。洞窟に入る前は小さな子供だったのに、今は偉大な竜に見える気がする。
「そっか。ありがとうな、ちびすけ。」
一瞬嬉しそうにしたがすぐに表情が怒りに変わった。
「ちびすけではない!我には立派な名前があるのだ!」
「どんな名前なんだ?」
「そんな簡単に教えられるような物ではない。我の名を知るためには我を信仰しその誠意を我に認めさせなければならぬのだ。それだけ我という存在は素晴らしいものなのだ。」
胸を張って語る姿はやっぱり子供のごっこ遊びにしか見えない。
「じゃあ、ちびすけでいいな。」
「言い訳なかろう!」
頑張って威厳を見せようとしているその口調も声の幼さも相待って余計に子供らしさを感じる。
「仕方がないから我の名を教えてやる。だが、その前にお主の名前を教えろ。それが礼儀だろ。」
「それもそうだな。俺の名前はガイア。よろしく。」
手を小竜の前に差し出すと、小竜は小さな手で握り返した。
「我は、メルクリウス・ウェヌス・マルス・ユピタル・サートゥルヌス・ウラーノス・ネプトゥーヌス・エルセと呼んでくれたまえ。」
頭に入ってきた単語はほとんど存在しなかった。それでも何とか言葉を捻り出した。
「エルセ。よろしくな。」
頭を捻り出した出てきた言葉は最後の部分だけだった。
「違う。我の名はメルクリウス・ウェヌス・マルス・ユピタル・サートゥルヌス・ウラーノス・ネプトゥーヌス・エルセだ。」
「人間の社会では、親しい人のことは愛称で読んだりするもんなんだ。だから愛称としてエルセって呼ばせて欲しいんだけど、ダメか?」
エルセは尻尾を振りながら不服そうな顔をした。
「分かった。小僧にだけ許してやる。」
「ありがとうな、エルセ。出来ることなら俺のことも名前で呼んで欲しいけど。」
頭を軽く撫でてやると尻尾がさっきよりはやいスピードで振られた。本当にわかりやくすて助かる。俺は立ち上がり、エルセを抱き上げる。今回は大人しくしてくれていた。
「気が向いたらな。」
その後は、エルセの魔法と案内で洞窟内を探索した。思いの外収穫があり、しばらくは野宿しなくて良さそうだ。洞窟の探索を終えると、外はすでに真っ暗になっていた。今日は野宿をせざる終えなそうだ。
「今日はありがとうな。エルセのおかげで十分な資金が手に入りそうだ。」
エルセを地面に下ろし、頭を目一杯撫でてやる。
「感謝するなら我を子供扱いするのではなく、敬うべきではないか。」
そう言いながら、エルセの尻尾は激しく振られていた。
「それは申し訳ありませんでした。エルセ様。」
そう言って、撫でるのをやめると、尻尾は地面に落ち着いた。
「今日のお礼に飯を奢りたいんだが、食べてくれますか?エルセ様。」
「あぁ。捧げられた供物は粗末にしてはならんからな。」
尻尾はいつだって正直で分かりやすい。
「じゃあ、準備するから待っててくれ。」
洞窟の入り口は迷宮ダンジョンの影響を受けず、さらにダンジョンの周りは魔物が近寄らないというお得な特典があるのでそこで今夜は過ごすことにした。料理は師匠と暮らしていた時は、俺が担当していた。と言っても森の中にある食材しか使っていなかったから大したものは作っていない。大体は焼くか煮るかして食べていた。師匠も俺も食えればいいという考えだったのでそれで何とかなっていた。人間社会で暮らすようになってからはこの世にこんな美味いものがあるのかと驚きの連続だった。それからは少しずつ調味料やらを使うようにはなったが、それでも下手の横好きには変わらなかった。
「ほら、出来たぞ。」
鞄に保存されていた肉を焼いて塩胡椒をかけただけだが、それだけで十分に美味いだろう。エルセは俺から肉を奪い取り、かぶりついた。味の感想は言ってくれないが、尻尾が激しく振られているので、俺は安心して自分の肉にかぶりついた。食べ終わったエルセは、疲れもあったのだろう。すぐに睡魔が訪れ倒れるように眠った。俺も食事の後片付けをし、エルセと自分の布団を準備して流れるように眠りについた。
翌朝、目が覚め隣を見るとそこには綺麗な赤髪の少年が眠っていた。エルセはどこに行ったのだろうか。先に起きて散歩にでも行ってるのか。それとも別れの挨拶もしないでどこかに行ってしまったのか。薄情な奴だ。俺は静かに剣を持ち、鞘から抜いた剣を構えた。さて、こいつは誰なのか。エルセにかけたはずの布団を素っ裸であろう状態でかけているこの少年は。あやゆる可能性が考えられるが、ひとまずこういう状況になった時、一番最初にとる行動は逃げる一択である。俺は太陽を背にゆっくりと後ろに下がっていった。
「うぅん。まぶしい。」
赤髪の少年は目をこすりながらゆっくりと起き上がった。後一歩で洞窟を出れる所でいたのが、俺の努力虚しく少年は目を覚ました。
「何してるの?ガイア。」
少年は目を開け、こちらに問いかけてくる。少年の瞳はエルセと同じ澄んだ緑色をしていた。赤髪もエルセの鱗の色だった。何よりも、声がエルセと全く同じだった。口調は随分と幼くなっているが、寝起きだからだろう。これだけ、状況証拠がそろえば、疑う余地もない。
「朝の運動をしてただけだ。おはよう。エルセ。」
「そう。」
俺は鞄から服を取り出した。もちろん子供服など持っているわけもないから、俺の普段着ている服にはなるが、裸よりはマシだろう。それをエルセに差し出す。
「なに?」
エルセはまだ開ききっていない目を細め、怪訝そうな顔で俺に問いかける。
「服着た方がいいんじゃないか。竜とはいえ、今の姿はほぼ人間だろ。」
ほぼというか、人間だ。この世界に存在する獣人は特徴的な耳や尻尾を持っているものだが、竜だけはそれを持ち合わせておらず言われなければ気づけないと聞いたことはあったが、直に見たのは初めてだった。エルセは自分の体を見下ろし、頭を触り、青ざめた顔をした後、俺の服を奪い去って洞窟の中にある岩陰に隠れた。
「同性なんだからそんな恥ずかしがることないだろ。」
エルセって男だよな。少々不安になりながらエルセの方は出来るだけ見ないようにした。
「同じ雄であろうと誇り高き竜である我の裸を見るなど不敬にも程があるぞ!」
男であることは間違いないようで安心した。すっかり目も覚めたようでエルセの口調も戻っていた。
「俺だって悪気があったわけじゃないんだ。大体目が覚めて隣に知らない少年がいるのに見るなって方が無理あるだろ。」
エルセは着替え終わったようでゆっくりとこっちに近づいてきた。
「今回だけは許してやる。」
スラムにでもいるような少年の格好なのに、顔は美少年のせいですごい違和感を感じる。改めて見るとエルセの顔は整っていて竜が競売で高額で取引される理由がよく分かった。美術品として家に置いておきたくなるほどだな、これは。
「なんだ?我の顔を凝視して。無礼だぞ。」
「あぁ、すまん。随分綺麗な顔だなって思ってさ。」
「そうか。」
顔を真っ赤にして照れ隠しで怒られると思ったが、特に気に留めることもなく興味もない様子だった。
「竜は容姿など気にも留めない。竜にとって一番大切なのは強さだ。誰よりも強くあること。分かりやすいだろ。」
偉そうにしているエルセよりも何倍も大人に感じられるその瞳は光を一切取り込んでいなかった。
「小僧も大概、分かりやすいな。」
エルセは俺の顔を見て笑った。ポーカーフェイスは得意な方だが、エルセの境遇が自分に似ているような気がして顔を作れなかった。俺もまだまだ小僧なのかもしれない。師匠の過去も聞けないような俺がエルセの過去を聞けるわけもなく、エルセも口を開くことはなかった。沈黙の中、旅に出る準備を整えた。
「そういえば、その姿は自由に変えられないのか?」
一向に人間の姿を変えないままエルセは壁に寄りかかっていた。
「変えられる。」
じゃあ、何で戻らないんだ。と言える雰囲気ではなかった。『そうか。』と言って俺は鞄と剣を持ち上げ、洞窟を出た。
「近くに港街があるらしい。」
「そうか。」
「そこには、色々面白いものが売ってるらしい。」
「あぁ。」
昨日のエルセはどこに行ったんだよ。綺麗な顔だって褒めただけでこんな雰囲気になると思わなかったんだよ。
「エルセ、港街で服買いに行かないか?その服返して欲しいし。」
今のお前を一人に出来ないし。
「そうだな。供物でないものを受け取るわけにはいかないからな。」
俺が歩き出すと、エルセも隣を歩いてくれた。その足元を見ると、裸足であることに気づいた。俺は何も言わず、エルセを抱き上げた。
「何をする?!小僧!」
「今の姿でエルセ様を歩かせたら俺が疑われちまう。だから、大人しくしててくれ。」
エルセは自分の姿を確認して、大人しく体を預けてくれた。そのまま目を瞑り、港街に着くまで目を開けることはなかった。
港街に着いてからは、宝を換金したり、エルセの服を買ったり、観光したりひたすらに楽しんだ。主にエルセが。調子も戻ってくれたようで一安心だ。夜になり、宿に戻ってベッドに寝転んで目を閉じた時、先に寝ていると思っていたエルセが口を開いた。
「小僧、魔力が一切ないのだな。」
今更、その話を持ってこられて驚いた。あのダンジョンで聞いてこない時点で気を利かせてくれているのだと思っていたが、勘違いだったか。『お前だって、一度だって空を飛んでいないじゃないか。竜のくせに。』という言葉を俺は飲み込んだ。この話題だけはあいつに振ってはいけない気がしたからだ。
「あぁ。」
はやくこの話を終わらせたくて俺は口を閉じて寝たふりをした。
「不便だろ?」
「意外と何となかなるさ。お前が誰にも言わなければな。」
俺は少しイラついていた。でもこの話題だけは自分の感情を上手くコントロール出来る気がしない。
「我は口が堅いから、案ずるな。」
口約束は信用出来ないが、エルセの言葉は何となく信用出来る気がしてしまう。少しの沈黙が流れ、俺の頭はほとんど夢の中に落ちていた。
「我と契約をしないか。ガイア。」
俺は眠い口を何とか動かした。
「契約は。魔力がないと出来ないこと。お前も知ってるだろ。」
「あぁ、だからこれは口約束だ。だが、誇り高き竜である我は一度口にしたことは必ず守る。魔力が必要になった時、我が力を貸す。その代わり、我にもお前の力を貸せ。」
『俺の力で出来ることなんてほとんどないが、それでもいいのか。俺は思っている以上に役に立たないぞ。それに、俺にさえ扱いきれない恐ろしい力を持ってるんだ。』と言おうとしたが、口は眠くて動かなかった。口に出来たのは少しの言葉だった。
「あぁ、約束しよう。必ず守ると。」
そのまま、俺は深い眠りについた。その時に『あぁ、我も必ず守る。』と大人びた声が聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます