時空を結ぶメモリー

聖暦せいれき2022ねんがつ11にち大安だいあん午前ごぜん女王じょうおうデイトの寝室しんしつ――



 いまだに、勇者ゆうしゃ本生もとじょう優人ゆうと』は、精力せいりょく絶倫ぜつりんなので、元気げんきですが‥‥女王『デイト・アップル』のほうは、優人の性欲せいよくまみれて、疲労ひろう困憊こんぱいしています。

 しかし、ついに‥‥女王は、つやめきながらも、精神せいしんりょくまでもが枯渇こかつしました。


 やがて、女王デイトが、うわごとささやきます。

神宮じんぐうの、初詣はつもうで‥‥たのしかった‥‥よね‥‥?」

「ん?」

 優人は、この世界せかいにも『初詣があるんだ?』という表情ひょうじょうです。


外苑がいえん噴水ふんすい‥‥優人くんが‥‥ちたりして‥‥

 ‥‥隅田すみだがわ花火はなび‥‥優人くん‥‥お菓子かしばかり‥‥べて‥‥」

「えっ?」



 優人は、なま仕込じこみを一時いちじ停止ていしして、女王デイトの囁きに、ります。

「優人くんは‥‥わたしを‥‥外人がいじんとして‥‥あつかわなかった‥‥

 ‥‥播磨坂はりまざか、さくら並木なみき‥‥わたしのを‥‥だいきだって‥‥」


 優人の全身ぜんしんが、いきえの女王よりも、あせだくにわりました。


 優人は、10年まえ‥‥8さいころを、おもします。女王デイトは、はじめて好きになった『実姉じっし以外いがい女性じょせい』です。

 優人と女王は、幼馴染おさななじみでした。いまの優人から‥‥女王のデイトさんを、大切たいせつにしたい気持きもちが、げてきました。


 デイトさんが、必死ひっしに囁きます。

「優人くん‥‥大好きだよ‥‥」


 デイトさんの『この言葉ことば』で、優人のたましいが、彼女かのじょ隷属れいぞくしてしまいました。デイトさんは、この言葉を最後さいごにして、うしないます。

 優人は、生仕込みを中断ちゅうだん‥‥解除かいじょして、デイトさんのかおを、見詰みつつづけました。



 正午しょうご‥‥デイトさんが、目覚めざめます。

 彼女は、いつのにか、綿めんのネグリジェをていました。


 彼女がわたすと‥‥寝室のテーブルせきでは、優人が着衣ちゃくい状態じょうたいで、鎮座ちんざしています。テーブルには、昼食ちゅうしょくならべられています。



 デイトさんも着席ちゃくせきして、優人に挨拶あいさつします。

「おはよう、ごしちゃった!」


「こん‥‥おはようございます、ごめんなさい‥‥」

 優人が、しおらしい返事へんじをしました。


 優人が、あまりにも、つつしんでいるので‥‥デイトさんが、優人の表情ひょうじょううかがいながら、気づかいます。

「どうしたの?」


 その気づかいを、優人は、もうわけなさそうにして、つぶやきます。

「デイトさんに、好き勝手かってしすぎたから‥‥」


大丈夫だいじょぶだよ、しあわせだから」

 デイトさんのやさしい言葉で、一瞬いっしゅんだけ、優人がうれしそうにしますが‥‥優人は、反省はんせいくちにします。


「けど‥‥ごめん、無理むりさせた‥‥」

 優人の表情が、よりくらくなりました。



 そこで、デイトさんは、優人のり、あたたかいみで、はっきりとげます。

「わたしは、優人くんが幸せなら、それでいから!

 それと、優人くんとのあかちゃん、出来できるのたのしみだな」


「気持ちく‥‥はげみます」

 優人は、けた赤面せきめんをしますが‥‥デイトさんは、笑顔えがお満開まんかいです。


今夜こんやも、頑張がんばろうね!」

あさまで、やさしく‥‥遠慮えんりょなく頑張るから!」


 デイトさんのごえに、優人が幸せそうにこたえました。

 しばらくのあいだ至福しふく時間じかんが、二人ふたりを、暖かく‥‥つつみ込んでいました。



 やがて、二人は、昼食をはじめました。

 二人とも、ゆっくりとなごやかに、幸福こうふく満喫まんきつしています。


 午後ごごからの二人は、それぞれの思いを、かたいました。

 勇者『本生優人』と女王『デイト・アップル』は、はなばなれだった時間を、それぞれの言葉で、つむぎ合わせて行きます。



 こうして、二人の人生じんせいが、しっかりと、きずなむすばれたのです。

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