100年に1人と少女

エミリー

第1話

 かんかん照りの日だった。空には雲ひとつ浮かんでおらず、正真正銘の真夏日だ。そんな暑い中外を歩く少女がいた。


「暑い、暑すぎる。何でこんな日に塾になんて行かなければならないの?」


 少女の名は林田るなと言い、今年中学2年生になった学生である。この真夏日に、塾へ行かねばならないのには理由がある。


「あ〜あ、あとちょっとで赤点を取らなかったのになぁ。そしたら今頃、涼しい部屋でゲームとかできたのに……」


 そう、彼女は学校のテストで赤点を取ってしまったのだ。前のテストで赤点を取ってしまった時、赤点を取ったら、夏期講習を行なっている塾に行かせるとお母さんに言われていた。


「せっかくの夏休みなのに、学校の宿題もあるのに、更に勉強しろって?」


 勉強をすることが大っ嫌いなるなは文句が自然と口から出てしまう。約束は約束だが、頭をたくさん使ってへとへとになるのに、帰り道がこれほど暑いのは辛い。


「勉強したって、どうせ大人になっても使わないじゃん! ……英語以外?」


 将来使わない勉強をして、一体何の役に立つというのか。英語は世界の共通語なので、覚えて損はないだろうが。


 あまりにも暑かったので、速く家に帰って涼もうと歩く速度を上げようとした時、目の前に1匹の黒毛のおそらく野良猫が歩くのをまるで止めるようにうろついた。


「ちょっと! 私、暑いから速く家に帰りたいんだけど……」


 普段であれば構いたいところだが、今日の真夏日に、しかも黒色という見ているだけで体温が上がりそうな毛並みは触りたくならなかった。


 すると暑さのせいかと思い、不思議な現象が起こった。


「ふむ、確かにこの色は暑そうだ」


 ……。小学校低学年くらいの、男の子の声が聞こえた。声付き的に幼い印象を受けるが、言葉は大人らしい。


「私、もうダメかも……。幻聴が聞こえるんじゃ暑さで頭がやられちゃったみたい。今日は帰ったら大人しく休んどこう」


 本当なら帰ったら涼しい部屋で、ゲームやアイスを食べようと思っていたが無理そうだ。


「幻聴? それは大変だ。速く休んだ方が良い。あと色はこれで良いか?黒色の反対の白色にしてみたが……」


 さっきの幻聴と同じ声が聞こえた。まさかと思い、さっきの黒色の猫を見てみると……。


「白っ! えっ? 待って待って! 暑苦しい黒色だったよね? 何で白色に変わっているの! 私、幻聴だけじゃなくて幻覚も見ているの? 家に帰る前に病院に行かなきゃっ?」


「それは大変だ! 元々案内する予定だったし、向こうには体調を直す術がたくさんある! 今すぐ移動しよう」


 そう猫が喋ったと思ったら、私たちの周りが眩しい光で覆われた。あまりにも眩しくて目を閉じてしまった。目を閉じていても凄い光なのが分かる。少し経った頃、眩しさがなくなったと思い目を開けてみれば、信じられない光景が広がっていた。まるで幼い頃に絵本で見た不思議な街並みで、可愛らしい色のパステルカラーをした、ふわふわとしている不思議な雲や霞が街並みや自分の周りを漂っている。


「ようこそ、100年に一度の選ばれし者よ」



 目の前の光景が信じられずその場で立ちすくんでいたら、この場に連れて来ただろう猫が笑顔で私にそう言った。

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