第6話 有名人
その後のメニューは今年度の行事の説明や、係・委員会決めといったもの。
密かに期待していたけどそう上手くはいかなくて。
「木藤さん」と同じ委員会にはなれなかった。
残念の極みである。
この日は一年生だけ給食がないため午前中に終わる。
ホームルーム終了後、幼馴染や他のクラスの友達と合流する。
帰り道。
色々と駄弁っている中で、
「あの外人さんにはびっくりしたよね。」
「木藤さん」の話題になった。
「でったん日本人の名前やし。」
「なん?あの人っち、そーなん?」
「そーばい。フツーに日本語喋りよったしね。」
「片言ですら無いん?」
「違ぁよ。でったん流暢…じゃねーか。舌足らずで滑舌悪いき結構聞き取りにくい。友達と喋りよーの聞いたけど、片言とかやないででったんこっちの言葉やったばい。」
「マジで?こっちで生まれた外人っちことやない?」
「多分、そげな感じやろ。」
彼女は既に他のクラスの幼馴染からも話題に上がるほどの有名人に進化していた。
いまだ外国人と思われているようなので、とりあえず、
「なんか、母親があっちがた母親と幼馴染みたいでね。両親、見た目純粋な日本人げなばい。だき、ほぼ100%日本人っち。っちゆーか、オレ幼馴染らしいし。この前、母親情報で判明した。」
訳:あの人の家の母親と
母から情報を提供すると、
「マジでか!」
かなり驚いた様子の幼馴染たち。
でもここは男のクソガキである。
すぐに、
「帰って飯食ったらどこに行く?」
遊びに行く話になり、
「そーやね…※陥落でライギョ?」
※)石炭を掘ったあとの地盤沈下でできた水たまり。
「え~…あっこ?あんまし釣れんし人数分足場無いし、※※汽車止めたらまた運ちゃんからガらるぅやん?」
訳:運転士から怒られるじゃない
※※)足場が線路のため、釣りしているのが見つかったら汽車が止まる。かなりの常習犯で、名前と学校名を追及されたらウソを言って逃げるようにしている。
警告!線路内で釣りしないよーに!
「そーなんよね~…運ちゃん、コエーもんね。見た目も言葉もモロヨゴレやし。なら、どこ行く?」
「前の川で良くない?」
「そやね。反対岸の護岸やったらみんな釣らるぅしね。」
訳:釣られるしね
「あっこなら広いき、みんなでできるか。」
「じゃ、食い終わったらタカちゃんがた集合でいい?」
訳:タカちゃんの家
「いーばい。じゃーね。またあとで。」
目的地が決まったので、昼飯食いにダッシュする。
同時に「木藤さん」のことは忘れた。
家に帰り着くとソッコー着替え、飯を食って釣り具の準備。
今日使うのは、中学の入学祝い的な何かでもらったお気に入り。父親のお下がりベイトセット。
詳細は、
サオ:ブレイゾン661MB。
リール:タトゥーラ103H-TW。
14ポンドのナイロンラインが巻いてあって、たいがいの釣りに対応できる仕様。
サオもリールもエントリーよりちょい上のグレードだけど、プロがトーナメントなんかで使えるほどの高性能。
ルアーをセットしているとすぐに一人、また一人と集まってきて全員集合。
総勢5人。
いつものメンバーだ。
歩いてポイントに向かう。
着くまでの間、しょーもないハナシで盛り上がる。
釣りの話。
新しくできた友達の話。
勉強が難しい話。
そして、女の子の話。とはいっても恋バナではない。それは純粋に恥ずかしいのでしない。どっちかと言うと…いや、言わなくてもヤラシイ話一択だ。
「木藤さんっち、乳、でったんふってーよね?」
訳:超デカいよね
「ふってーばい!あれ、ナマで見てみたいよね!」
「オレ、既にオカズにしてでったんコキまくりよーちゃけど!」
「オレも!」
覚えたての男子中学生はまあまあサイテーである。
孝満はというと。
ネタにするのはなんだかイケナイ気がして、その話題には参加しなかったのだった。
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