20.約束された終わりへと

 振り返りもほどほどにしないと戻ってこれなくなるということでね、そろそろ話を畳みに動き出そうと思います。

 ということで今回は「半身転生」を完結させるにあたって、どういう事を考えてどういう風に物語を展開したのか書いていきます。


 まず、これは以前にも書いたのですが、私は「半身転生」の終わり方をいくつかに絞っていました。

 そのうちのどの終わり方になるのかはギリギリまで決まっていませんでしたが、いずれにしてもハッピーエンドになるのは決まっていました。

 山のように人が死ぬ話でしたから、死には報いがないと救われませんからね。

 現実問題、意味のある死ばかりではないからこそ、フィクションの中でくらい報われて欲しかったんです。


 とにかく、ハッピーエンドに向けて動くにあたり、それはもうありとあらゆる障害を一個ずつ排除していきました。

 主人公たちが幸福な未来を歩むために、その邪魔になりそうなものは悉く排除します。

 そういう意味ではユウやドレイクが生きていてはいけなかったので、彼らはその時点でメタ的に敗北が決まっていました。

 作中最強クラスの彼らを倒すのがどれほど大変だったか、まったくこちらの身にもなって欲しい所です。

 ただ、どんな無理をしても障害は排除しきると決めていました。

 それが終わりに向けての仕事のひとつです。


 それからもうひとつ、アラタには物語終了後穏やかに過ごしてほしかったというのがあります。

 だからというわけではありませんが、彼の能力を全て没収しました。

 彼は自分の力を他人のために際限なく投入してしまいますから、それならいっそ取り上げてしまおうということです。

 もっとも、作中の神は単純に受肉用の器として中身を空っぽにしておく必要があったからそうしただけですが。

 その辺の利害関係もうまく描き切れたのではないかと思います。


 どんな終わり方を目指すのか、どんなその後をキャラクターに過ごしてもらうのか、そういうところから終わりを逆算するのは大いにありだと思います。

 成り行きに任せる終わりというのもいいなと思いますが、それを私の技量でやってしまうと主人公が死にかねないです。

 何としてでも生かしてみせる、そういう強い覚悟を持って初めて主人公生存ルートが生まれるほど厳しい世界でした。

 主に私のせいですが。


 終わり方というのは、何も主人公だけのそれではありません。

 ノエル、リーゼ、クリス、その他登場人物それぞれにそれぞれの終わりがあります。

 その後どうなっていくのかも。

 だから、当然ながら全て思い通りというわけにもいきません。

 相反する願いは必ずどちらかもしくは両方の願いが破綻します。

 そういう部分もあったので、片方には涙を飲んでもらうこともありました。


 例えばウル帝国の旧第2皇子派閥はアラタたちに並々ならぬ恨みを持っていますが、彼らが復讐を遂げることはありませんでした。

 アラタは天寿を全うしてこの世を去りましたからね。

 願ったことが全て叶うとは限らない。

 それでも物語の世界の神様であるのなら、出来る限り多くの人々の願いを叶えてあげたい。

 私ってばなんて良い神様なんでしょう。

 作中の神とは大違いです。


 とにかく、物語の大枠に沿って展開してきたものをまとめるのはそこまで難しくありませんでした。

 初めから終わりが決まっているのなら、約束された終わりへと向かうだけですから。

 終わりを決めて書く、決めないで書く、どちらがいいかなんて場合によります。

 ただ終わりが決まっているのなら、より良い道中とより良い最期を迎えることが出来るように最大限努力するべきです。

 終わりが決まっていないのなら、より良い終わりに辿り着けるように道中を全力で駆け抜けるべきです。

 どちらもスタンスが異なるだけでプロセスに大差はないでしょう。


 そろそろ終わりますかね。

 今回も、この作品も。


 あと少しだけ書きたいことを書いて、そうしたら次の作品を始めようと思います。

 次回作の構想を練るのに時間がかかっているので、先に「半身転生」絡みの物語を書こうかと思います。

 アラタが千葉新だった頃の話。

平凡な中学生に過ぎなかった彼が、どのように高校No. 1投手と呼ばれるに至ったのか。

 その軌跡、峻烈な生き様を書こうと思います。

 どちらが先になるかわかりませんが、どうかお付き合いください。

 ではまた次回。

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