16.戦友たち(半身転生その後2)

 前回に引き続き、各キャラのその後を書いていこうと思います。


 まずは前回ジークで終わったので、双子の姉ナナ・クレストから。

 彼女は特に冒険者や軍属になることはありませんでした。

 結婚相手はウル帝国皇帝バルゴ・ウルの息子。

 ただし継承順位は低く、次期皇帝となることはなさそうです。

 一昔前なら継承権をめぐり骨肉の争いが勃発したのでしょうが、それも遠い昔の話です。

 今となってはウル帝国でクーデターがあったことなんて歴史の1ページでしかないのです。

 そんなこんなで、ナナは比較的早くに家を出ました。

 ジークよりも自立が早く、案外と手のかからない子だったのでしょう。

 その辺りも前回のループとは異なる点です。


 クリスはアラタたちと共に数年間働いた後、貴族院を退職しました。

 めぼしい戦闘任務もなくなりましたし、彼女なりに役目を終えたと感じたようです。

 ノエルとアラタが結婚してからは借家に住んでいた彼女でしたが、退職と同時にこれも引き払ってしまいます。

 数年間旅に出る。

 そう言って彼女は世界の端から端まで旅をしました。

 道中なぜか一緒になったエイダンと帰国後ゴールイン、しかし籍は入れていないようです。

 彼女は全然眼中になかったみたいですが、エイダンがクリスのことを気にかけているのは本編でも描写がありますね。

 その後はエイダンの故郷レイテ村に帰って仲良く暮らしているようです。

 エイダンの妹とも母親ともうまくやっているようです。


 キィ、リャン、エルモ、カロン、デリンジャー、バートンの仲良し旧1192小隊組はそれぞれアトラの街に根を下ろして暮らしました。

 諸外国との調整や軍事顧問は体力勝負なので、現役期間は短かったです。

 いいおっさんになった彼らはそれぞれの道へ進み、結構な頻度で会っては飲み会を開いているようです。

 それこそ月一くらいのペースで会っているらしく、本当に仲良いのなと半ば呆れ顔なアラタもちゃっかり参加しています。

 旧1192小隊組で唯一仲間外れ気味なのはアーキム・ラトレイア伯爵です。

 彼は1192小隊から2係になるタイミングで家の都合により戦線を離脱しました。

 そんな彼が帝国事変終盤で公国軍を率いて加勢に来たわけですが、やはりその後は伯爵家の復興に尽力してそれどころではなかったようです。

 ラトレイア家は物語序盤の大公選編でかなりのやらかしを犯しているので、アーキムの代はほとんどその尻拭いを立て直しに費やしました。

 まあ要約すると何かと忙しかったので、自然と旧友たちとは疎遠になってしまいました。

 そんな中でもエルモとバートンはよくラトレイア家に遊びに行っていたようですが。


 魔道具師メイソン・マリルボーン。

 黒装束から始まった数々の魔道装備の開発兼製造者。

 彼がいなければアラタたちは相当苦労したことでしょう。

 天才魔道具師の名をほしいままにした彼は、やがて公国に魔道具師という職業と資格制度を普及させる礎を築きました。

 それまで危険な素材の取り扱いって自己責任だったのですが、これを資格制度に組み込んだり学校に専用のコースを設立するなどして環境整備に尽力したのです。

 500年後の世界で一番名前を憶えられているのは案外彼のような人間なのかもしれません。

 ちなみにアラタはことの大事さが分かっていないので、とりあえず出資だけしていました。


 アラタから生まれた妖精シル、ベルフェゴールを監視するために下界にやってきたラグエルは共に楽しく暮らしているようです。

 シルはともかくラグエルは楽しくしてちゃまずいでしょと思われがちで、実際その通りです。

 彼女は天界に上げるレポートの締め切り前になると急に態度が変わります。

 まあそういうことです。

 作中で明言されませんでしたが、シルはアラタが神の座に手をかけた唯一の現存する証拠です。

 彼とのリンクを持つシルの能力の高さは、それすなわちアラタの能力の高さとなるのです。

 期せずして実質不老不死となったシルですが、特に何か変わったことをするわけでもなくシルキーとしてアラタ家もといクレスト家に仕え続けています。

 アラタの死後、その息子ジークの死後もクレスト家に仕えているようです。

 ラグエルはジークの死後ベルフェゴールが元の世界に帰ったのですが、そのまま異世界にとどまり続けています。

 シルが提供する快適な生活から抜け出せなくなったようで、なんだか心なしか天使の輪もくすんで見えます。


 ジーク、ナナを除く8人の子供たちは何不自由なく暮らしました。

 前のループでは生まれるはずのなかった子供たち、特異点となる……そんな展開はありませんね、はい。

 普通に生きて、普通に幸せで、普通に大人になって、やがて普通に死ぬ。

 アラタが若い頃望んでやまなかった普通がそこにはありました。

 ただし、受肉体としてアラタをしばらく使うことが出来ないと分かった神は、ジークやその兄弟たちに何回かちょっかいをかけようとしました。

 彼らが気付かないところで悉くベルフェゴールが対処したのですが、アラタはもしかすると気付いていたかもしれません。


 とまあ、こんな感じでもう少し「半身転生」のその後について書き続けようと思います。

 では。

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