9番ホール 嘘と強がりの向こう側
このホールを奪取した高校が勝ちとなる重要な場面です。
おっと、ここで長崎東西はデュアルショットを出します! 大空の強打が北端ボールを軽々と超えていった!
追い詰められて出したか、それとも都合のよい障害物を得ただけか。長崎東西の本日最初の反射ショットでした。
あきれた、フェアウェイを横切るカート道のへりを使うだなんて。アスファルト製ではあるけれど、あんなの普通ならどこに飛んでくかわからないわよ?
信じらんない、水守ちゃんはいったいどんな感覚器官を持っているのかしら。
「ナイスですつばめさん」
「ふぅっ! ありがと。美月ちゃんも足下バッチリだったよ」
これで少しでも小泉・鈴木ペアにプレッシャーを与えたいところですね。
偏向報道は良くないわヨォ高木クン?
今度は大空ちゃんの方から小泉クンに接触するみたいね。さっきのバカにしたような高笑いの件はもういいのかしら。
「あーのさ。すっごく言いにくいことなんだけども」
「どうかしたかい? 急にそんなしゃっちょこばっちゃって。もしかしてお腹でもすいたのかなァ?」
「あれ、さ。もうやめない?」
「なんだい藪から棒に。オレらが何をやめなきゃならないっていうのかい? あれかい、喋りすぎかな? それとも——」
「だからあのボール。もう使うのやめた方がいいと思う」
「お、おたくは……!?」
「そろそろ大会関係者の人たちも気づいたのかもしれない。あなたたちをみる目がさっきから変だもん。もしかしたら調べられるかもしれない。もちろん、今日はこのままバレずにすむのかもしれない。でもいつかはバレちゃう。美月ちゃんが言うには来年からボールにセンサーがつくとかって話もあるみたいだから、途中で取りかえなんてできなくなるよ。今年だけできるズルなんて、やってもぜんぜん意味なんかないんだよ」
「はは、まさかバレてるなんてね。もしかして、すり替えるの見ちゃった? 誰にもバレるはずないんだけどなあ」
「ううん、音でね。スタートホールからずっと、ずうっと音がおかしかった。打ち損じかなあ、なんでかなあって」
「音、ね。絶対音感をもつ人たちに聞いてもらっても分かんなかったものをおたくは。それで? どうすんの?」
「どうすんのって。そりゃあやめてってことだよ。まだわっかんないの?」
「いや、あそこにいるジャッジに告げればそれで終わりじゃないか。なぜそうしないんだ」
どうしたのでしょうか。先ほどまでとは打って変わり、かなり真剣に討論しているように見受けますが。
北端は表情に余裕がないわね。どっちがリードしてる高校だかわかんないくらい。
「ああそうか、自分たちの旗色が悪くなったものだから」
「そうだよ、旗色が悪くなったからだよ。だって負けた後だと負け惜しみになっちゃう。あなたたちはその時に耳を傾けてなんてくれないもん。ボクたちが倒せるんならそれでよかった。でも負けそうだから。だったら負ける前に言わなきゃって」
「どうしてそこまで——」
「だって勝ちたいから! あなたたちがそんなことをするのも勝つためでしょ? ボクだって勝ちたいもん! でも告げ口なんてしたくない! 名乗り出てもほしくない!」
「名乗り出てもほしくない? おたくはずいぶんと面白い人物のようだ。だったら——」
「ただ使うのをやめてほしいだけなんだってば!」
あれはもう口論よね、口げんかにしかみえない。
ああなるともうダメね、ジャッジが止めに入っちゃう。ほら。
「あああすみません、すぐに打ちますので——」
「ちょっと黙ってて。邪魔しないで!」
応じようとした小泉に対し、大空はジャッジに反発しましたよ。大丈夫でしょうか、ペナルティが心配されます。
しかもこの場合、通常なら打順でない長崎東西の妨害と捉えられそうですが?
あれは?
双方に1打のペナルティが課せられたわね。
現場のジャッジの判断だな。さっきまでの行いに対し罰したようだ。結局どちらにも課したものだからなんの効力もないペナルティなんだが。一応の警告だな。
ありゃりゃ、今度はつばめくんとジャッジでやり合っているよ、逆に小泉くんが仲裁してる。
いつもは止めに入りそうな鈴木くんも美月くんも止めずにふたりで話しこんでるぞ。どうなってんだこりゃ。
結局小泉が打つことで再開になります。大空はジャッジの言いつけでしょう、距離を取らされました。
おや、アドレスに入らずまだ話しこんでいますよ北端と水守は。
一度ペナルティを課せられたから時計がリセットされてはいるけれど。意外と肝がすわっているのねぇ、あの子も。
「まったく、反則負けになるとこだったぞ。にしてもだ、すごいんだなおたくらは。この状況でも勝負をあきらめていない。そればかりか、オレらの不正を知りながらそれをジャッジに申告しないなんて」
「わたくしたちの住む島では、密告することをなによりも恥ずべき行為だとする考えがあるんです。たとえどんな不正があったとしても知己を売らないと」
「地元は長崎だっけ? まるで現代の隠れキリシタンじゃないか」
「その昔、年貢をちょろまかしていたそうですよ? 圧政に耐えかねて、それで対抗措置として」
「重すぎる税にか。今も昔も変わらないんだなぁ」
「でもオレらは他人だ。他校の人間だ」
「いいえ、同じ人間です。同じゴルファーではありませんか。島ではよく友人や家族とゴルフをします。でしたらこうして切磋琢磨しているあなた方ともいっしょにホールを回る友人同士。わたくしはそこまでお人よしの考えではありませんが、あの頭からっぽのパートナーはそう考えるようです。友人が誤った道を歩もうとするのを黙ってみていられないのです、大空つばめという人間は」
「それは……。フフ、そうか、オレらは戦う前からおたくらに負けていたのかもしれないな。いや、だからと言ってこの勝負をゆずるつもりはないが」
「もちろんそうなさって?」
「ああ、だがここからはまっさらな心で打つ。オレらの全力を放つ」
「もちろんそうなさってくださいまし」
水守が離れます。いよいよか。
「そうは言ったものの。どうするよ小泉くん」
「いつもなら3オンで着実に、勝負は次のホールで、なんですけどねえ。ああ言った手前、不正はここまで、次のホールから使えないってなるでしょう? 使わなければすぐに負けちゃう。さーて、困った。ああ困った困ったあんああ〜ん」
「んなこと言っちゃって。あるでしょひとつだけ」
「あるっちゃありますが。こうなると勝つ方策はひとつだけ」
「アレをやる」
「アレをやる」
「うお、そろった! やるんですか会長?」
「いや、会長じゃないって、去年までなんだって。それはそれとして、衆人環視のボールを交換するのは到底不可能だ。だから清く正しくなる前に最後の悪行を。それで是が非でも優勝して、先生にいい報告をしようじゃないか」
「自分でも言っといてなんですが、さっきのは半分冗談だったんですよ? ちょっと遊びでやっただけで大変なことになった禁じ手を? 全力で? この場面でですか?」
黙って見つめあう北端商業のふたり。
そろそろ2度目の遅延指摘が気にかかるところですが?
「オレらがグリーンに一打で届かせるにはそれしかないじゃないか。高反発ボールを使い、禁じ手ショットを使ってやっとの距離だ」
「生徒会長のその目は最後の手段、って言ってるように見えますが。本当にやります? やめときましょうよ。まさか、もしかして会長——」
「言葉とは裏腹に目は生き生きとしてきたじゃないか」
「指摘しないでください会長。オレにもまだ、どこかにゴルファーの魂みたいなもんが残っていたんでしょうよ。外から言われてやっと、あなたと同じくね。それより遅延でもう1打課されるのはご免こうむりましょう。さっきまで以上にかっこ悪い姿を彼女らに見せるわけにはいかないですからね」
「フ。会長と呼ぶなっての」
大空にウインクをしたのか小泉、北端商が制限ギリギリで試技に入りました。が?
これは?
ボールをはさんでふたりがドライバーを構えたわね? ボールを中心として点対象にアドレスしたわ。
いったい何をするつもりなのかしら。
小泉が正規位置、ところが鈴木はまったくの反対で。あさってを向いてクラブを構えます。あのまま鈴木が振ったらひとつ前のホールに向かって飛びますが?
やはりそのままで打つつもりのよう、トリッキーな北端商業でもこれはかなり異質な光景だが?
なんと! ふたり同時にスイングを!? ついに始めてしまった! 始まってしまった!
まさか! そんなことしたらボールをはさんでクラブ同士が衝突しちゃうじゃないのよさ!
「手間ぁとらせたな長崎ペア。これはオレらの罪滅ぼしだ。贖罪であり、勝利に賭ける執念だ!」
「受けとれよ北端最後の意地を! ボールよ、病室の先生に届け!」
「これが禁じ手、フレンドリーファイア!」
もう止められません、そのまま鉢合ったあ!
ゴルフでは聞いたことすらない、まるで銃声のような破裂音が!?
鈴木クンが弾かれてふき飛んだわあ!?
「グワッ!」
それとは対照的に小泉が堂々とフィニッシュのフォロースルー! ところがすぐにひざをついて!?
「いてて……。会長……!」
ボールはどこなの!?
ないわよ? ボールはどこ!? 高木クンには見えた?
近くで見ていた俺にもわからないが、どうやら彼ら彼女らにはみえたらしい。みんなでグリーンの方へ目をこらしているよ、必死に。
「飛べよ! 乗れぇっ! それでベスト4だ!」
「っ! まさか!」
「この位置から本当に届くの!?」
先にグリーンへと向かっていたカメラがボールを捉えました。たしかにグリーンへと向かっています北端商ボール!
本当に狙って打てたの? あんな打ち方で? 方向性バァッチリじゃない!
ここは到達可能距離ではないとの判断で、フェアウェイを横断するギャラリーの列のさらに上をゆく! 風切り音を聞いて驚くギャラリーたち!
どうか!?
グリーン手前はわずかにのぼりだが?
そのまま無人のグリーンへ白球が吸いこまれるかのようにして!?
乗ったーっ! 乗せてきたァーーーーっ!
なんと小泉・鈴木ペア、残り460ヤードをまさかの一打で! 772ヤード・パー6の伏兵18番ホールを、まさかの2打で攻略したァーッ!
「やった! 勝ったぞ!」
「どうだ! 見たか長崎東西!」
勝利宣言か、水守・大空ペアに向かって小泉がクラブをかざして咆える!
パラパラとした拍手とともに大空が応えます。
「アルバトロスおめでとう。見たよ、この目で。すごいじゃない、やればできるんじゃない」
「まあね。本気を出せばあんなものさ。おたくらでもこの距離はさすがに手が出ないでしょ。いくらおたくらの方が近いといっても400はゆうに越えてる」
「ううん、あきらめないよ。あなたたちがこの試合をあきらめなかったように、ボクたちだってこの一打のことをあきらめない」
「ふぅん、そうこなくっちゃ」
「見せてもらおうじゃないよ、おチビちゃんの底力ってやつを」
「準備しといてよね、次のホールが本当の最終ホールになるはずだから」
「その意気だ。見せてもらおうじゃないか」
座りこんで動かない北端商をそのままに、水守と大空が自分たちのボールへと向かいます。
力強い歩みだよ。まるで北端に勇気をもらったかのようだ。気落ちせず、自身の次なる一打に期待する面持ちで。
何かしらやるつもりだぞ彼女ら。
おそらくはそうでしょう。この一打を乗せられなければ敗退が決まる場面です。長崎東西にはもうチャレンジしか道が残されていません。
ギブアップって道もあるわよぉ〜?
でも絶対に選択しないわよねあの子たちなら。同じ負けるにしても全力を賭してから散るのを選ぶわ。
私もそのように思います。
グリーンまではおよそ430ヤード。北端商よりは短いですが、それでも長崎東西ペアにとって未踏の距離。乗せてイーブンを継続できるか、それともショートさせてここで散るのか?
「こんな感じかな?」
「つばめさん? なにを始められたので?」
「あれれ、美月ちゃんちょっとにぶい」
どうやら大空がまた何か始めたようですね。
「まさかあのおチビちゃん、小泉くんの天秤打法をマネしようとしてるんじゃあ?」
「うえっ、ウソでしょ会長? さっき見たばっかですよ? ニュースに出てたとしても北海道大会なんて知らないでしょうから、昨日の今日ですよ?」
「ごらんなさいよ、どう見てもクラブの回転と落下地点のコツをつかもうとして放っているじゃない」
「たしかに……」
あれを素振りと呼ぶのでしょうか。大空のあの行動はおそらく北端商のお株をうばう天秤打法。
それを練習しているように見受けられますが。
そのまさかだろうね。そうでなければただの体力のむだづかいだ。
「委細承知しました。ではお願いしますねつばめさん。その辺りの微妙な感覚はきっと、あなたにしか再現できません」
「オーキードーキー! これでどうにか20ヤード上乗せしてみせるっ!」
本気なのかしら? いくらなんでも、ぶっつけ本番もいいところじゃない。雷獣ショットのモノマネは前日練習したんだとは思うの。でもあれはたぶん今日初めて見たんでしょ? うまくいきっこないわ。
しかしつばめくんはやるつもりだよ。彼女らの最長距離を更新するドライバーショットが必要なのは今日なんだ。明日じゃ遅いんだよ。
「うん、たぶん大丈夫。こんな目的ではないけれど、クラブを宙に放るのは船の上でもやってたもんね。ほんと、人生なにが役に立つかわからないもんだねえ」
「つばめさん……。ヒマになんてさせるものですか。これからはわたくしが放っておきませんとも。いつでも密着しますのでそのおつもりで」
「あれれ、ヒマってところに反応しちゃった? 大丈夫だよ、いつも太郎といっしょだったから」
「それはドライバーのお名前でしょう? これからはわたくしがひとりになんかさせませんのでっ!」
「ふふふ。……いくよっ!」
「ええ!」
小さな大空が大きく頼もしく、ボールの前で仁王立ち!
「そおれ、飛んでけ! ポーイ!」
そしてクラブを、先ほどまでのように天高く投げた! 北端の鈴木のように投げ上げてしまった!
もうっ! 見てられないっ!
いや、見なさいってば。この一瞬を逃したら一生後悔するぞ。
「かがまなくて良いぶん視界がひらけていますね。どうぞつばめさん!」
「いっくよぉ〜! 第2の奥義・改っ!」
「菩薩掌!」
「ブロークンマリオネット・オブ・アルバトロスっ!!!」
これは!?
しかも単純な北端商の再現ではない?
「いっけええええええええええええ!」
なんてことをするんだ!
つばめくんが放り投げ、つばめくんがスイングする。雷獣ショットのようにダフったなら、インパクトの瞬間に美月くんが上から強烈におさえこむ。
あんなものを打って、半年前まで中学生だった体が果たして耐えられるものなのか?
それでもボールは飛びました! 前へと!
グリーン方向です! 高い高い弾道で、しかしどこまでも力強く!
今度は見守る立場となった北端商の小泉、まぶしいのか? それとも笑ったか、腰を下ろしたまま目を細めます。
その小泉クンを置き去りに鈴木クンがジャッジの方へと向かうわね? なにかあったのかしら。
「————」
なッ!
まだ勝負はついてないじゃないか!
長崎東西のボールはまだ止まってすらいないじゃないか!
ど、どうかされましたか赤井さん? すごい剣幕で。
マイク、入っていますよ?
ちょっと黙っててくれ。一大事だ。
北端商に何か動きがあったもようですが。こちらでは鈴木の音声を拾えてい——
ん乗ったわ長崎東西! 大空ちゃん! 水守ちゃんん!
なんと乗せ返したのか長崎東西高校!?
たしかに乗ってるぞグリーン上! やりました水守・大空ペア! この土壇場で飛距離の自己記録を更新!
このホールはイーブンとなり、キャリーオーバーを維持! 本当におもしろいシーソーゲームの様相を呈してまいりました!
勝負の天秤はなおも水平を保ちます!
スタートホールで北端商が先制して以降は3ホールを連続キャリーオーバー、さらにこのホールを終えて3ポイントをプール、次を奪取した高校が勝利となる状態が継続します。
まさかまさかよね。放り投げて、ダフって、二人羽織?
驚きすぎて、ハァ。なんだか疲れちゃった。
一方で北端になにか大きな動きがあったもようです。
ジャッジが生徒会長でキャプテンの鈴木に強く問いかけているようですが? 内容はこちらまで伝わっていません。
赤井さん?
赤井さん??
そちらで何があったのかお伝えいただけますか?
ああ。大きい方のマイクを用意できたから、ここからは音声を送るよ。俺が説明するより彼らの問答を聞いたほうが早い。
「どうしたというんだね北端商? 小泉くんも同じ意見なのかね?」
「はい」
ジャッジと北端商の鈴木の会話をお届けしています。鈴木の声にいささか元気がないように感じられますが。
「君たちはこのホールを終えて2.5ポイント、長崎はまだ1.5ポイントだ。あとひとつイーブンを重ねるだけでも勝利となるが。理由を聞かせてもらえるだろうか」
「はい。先ほどのショットで冒したムリがたたり、僕らはもうクラブを握ることもできません。よってここに、ギブアップを。改めて宣言します」
ギブアップ!
北端商業がここでギブアップを宣言しました!
しかし18番はすでに両者グリーンオンが認められ、イーブンでホールアウトと判定された直後です。たとえホールアウト前であったとしても、これが意味するものとは——
ルールに照らし合わせると、自動的に長崎東西が次の1番ホールを奪取したことになるわ。
そうなると?
長崎東西の? 勝利?
なんということでしょう、意外なかたちでの幕切れ! 北端商の選手故障により1番ホールのギブアップが宣言され、キャリーオーバーのポイントと合わせて4ポイントが一挙に長崎東西へ!
長崎東西が準決勝一番乗りを決めましたァーーーー!
ジャッジからの裁定が長崎東西に告げられたよ。当人たちは嬉しさよりも当惑といった表情かなぁ。
大空ちゃん?
まだ立てない小泉クンのところに走っていっちゃったわね。
「あれだけ勝ちに固執してたあなたたちがどうして?」
「おめでとう、おたくらの勝ちだ。ナイストライ、そしてナイスアルバトロス」
「まだチャンスはあるじゃない。なんならもひとつイーブンならあなたたちの勝ちじゃない。それをどうして?」
「もちろんその通りだよ。だけどオレらはもう、少なくとも今日はクラブをにぎれないんだ。見てくれるかいこの手を」
「それって?」
「あのショットの代償さ。オレはさっきからこのしびれがとれない。これではクラブを振るどころか握ることもできないんだよ」
水守と鈴木まで戻ってきました。鈴木が小泉を左手で助け起こします。
「小泉くんはまだいい方だよ。オレなんか右手首を捻挫してるんじゃないかなあ。さっきから痛くて曲げられないんだ」
「それ本当? 大丈夫?」
「まあ自業自得ってやつさ。業がめぐりめぐって戻ってきただけだよ。気にしないでくれ。だからこのまま次のホールへ行ってもボールを打てやしないんだ」
「しかし完敗だ、まさかまさかだったよ。おたくらが乗せられなくて勝利、次の準決勝を不戦敗、ってのがベストシナリオだったんだが。オレらの天秤打法をすぐにものにされちゃうとはね」
「いや〜、ははは。なんでかうまく行っちゃったよね」
意外な幕切れ、興奮冷めやりませんがここで急かされて両校がホールアウトします。
後ろの組に随行するジャッジがついに催促してきたんだよ。当然の結果ではあるがホールアウトなんだ、もう少し気を使ってくれてもよかったかなぁ。
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