31 一緒に登校
某日の朝。
外に出るとりいなさんが玄関前で立ち尽くしていた。どうしたのだろうか。
「りいなさん、おはようございます」
「お、おはよう」
彼女は水色のリボンが付いたシャツに紺色のスカート、そしてブレザーを着ている。
やっぱり他校だったか……。俺の通っている高校の制服じゃない。
「どうかしましたか?」
「んー、どうって事でもないんだけど、あなた達と登校したくて……ハルくんを断った罪悪感に押し潰されているの」
なんてラブラブなんだ。
てか、彼氏さんと俺らとりいなさんで登校すれば良かった話じゃないのか?
「もしかして、私たちが玄関から出てくるのをずっと待ってました?」
「うん」
えっ!?
でも一緒に登校しても、他校だから途中で分かれてしまう。だから彼氏さんと登校したほうがいいんじゃないだろうか。
「インターホン鳴らしてもよかったんですよ」
「……」
何故かりいなさんは答えない。
ひょっとして彼氏さんと喧嘩でもした?
「じゃ、行こっか」
りいなさんが先を歩く。
彼女は笑顔で軽快に歩いているので、喧嘩したようには見えない。
「玲愛、制服可愛いね」
「りいなこそ、お似合いですよ」
二人の仲も良くなったようで一安心。波長が合わない、と言っていたのにここまで距離が縮まった。
りいなは俺を一瞥するも、何故か俺の制服姿は褒めてくれなかった。
と思ったら、玲愛がりいなに凄い睨みを利かせていた。そういうことか。
相変わらず玲愛の独占欲は強い。
――マンションから離れて通学路へ。
「りいなさんって高3ですか?」
「うん。二階堂くん達は?」
「高2です」
りいなはいーなー、と羨望の眼差しを向ける。それだけ彼氏と一緒にいられるからな。
これから大学受験で忙しそうだな。あ、大学受験といえば五城と一緒じゃん。
「――玲愛って二階堂くんに毎日お弁当作ってあげてるの?」
「ええ」
「そしたら私と一緒だね! 私もハルくんに毎日お弁当作ってあげてる!」
自慢げに言うりいな。
「私のは愛妻弁当ですから」
「「関係進みすぎじゃない!?」」
見事なまでにハモった。
愛は物凄く感じるが……。夫になった覚えは無い。
でも将来、愛妻弁当を持って会社に行く未来が来るのだろうか。そう考えていると顔がぽっ、と赤くなった。
「カナメくん、顔赤いですが、熱でもあるのですか? それとも……私で妄想、してたとか?」
「何でもねーよ」
「ふふっ。照れてるカナメくん、可愛いです♡」
隣でイチャイチャしているカップルが居て、居心地悪そうなりいな。
「玲愛、彼氏をからかうの、上手いね。私も真似しようかな」
「真似、しないほうがいいと思います!」
きっぱり断言する俺。
本当に彼氏側からしたら、羞恥心で死にそうなので、新たな被害者を生まないでほしいと切に願う。
「――ねえ、二人は何がきっかけで付き合うことになったの?」
不意にりいなさんがそんな事を聞いてきた。ゴクリ、と唾を呑み込む。付き合うきっかけはすごく複雑だ。全部を話しても理解してくれるか、分からない。そもそも教えるべきかすら迷う。
「それには深い事情がありまして――」
玲愛が代わりに答えてくれた。
「事情? あ、もうお別れの時間だね。私、こっちだから。またね」
「ええ、ではまた」
「じゃあね、りいなさん」
手を振ってりいなさんと別れる。
「――付き合うことになったきっかけ、教えますか?」
「俺は教えたくない」
「そしたら、二人の秘密、ということで」
正直、フラれた事もデリケートな事なので言いたくないし、「五城さんを見返す為」というのも俺ららしくない。正当な理由で付き合ったならまだしも、俺と玲愛が付き合うことになったきっかけにはまるで愛が感じられない。だから、教えたくない。
りいなさんが忘れてくれることを願うばかりだ。
*あとがき
諸事情の為、これから先、更新頻度が火・木・土更新より酷くなるかと思います。ご了承下さい、すみません。
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