第30話 男女のコンビは大体付き合うか付き合ってる

そして現地、下水道の通用門にて私達を含め、4人の冒険者が集まる。

相手側2人はどうやらこちらと同じコンビを組んでいるらしい、

ジンと同じく、18歳で成人を迎えたばかりと思われる男女、

男の方は柄の長い斧を背負い、女は腰に短剣を差している。

戦士とサポーター、もしくは魔法職か神官か、

いずれにせよ、駆け出しでは無難な組み合わせだと思う。


「あんた達が今回一緒に行動する冒険者か?

 俺はアーシュ、こっちがリエルだ、よろしくな」

「リエル、です。よろしくお願いします」

「私はララァ、こっちはテスだ。今日はよろしく頼む」

「テスと言います、こちらこそよろしくお願いします」


茶色の短髪、装備は軽装に厚手の皮防具を身に着けた戦士、アーシュ。

肩ほどの長さの青髪、ローブを纏って大きなカバンを背負っているリエル。

いかにも駆け出しらしい見た目、だが悪くはない。


「依頼の確認をしましょう。

 この下水道は騎士団が管理している、2つの下水道の内の1つになります。

 通用門を進めば中に騎士団が駐在しているので、

 アーシュさん側が預かっている物資を届けるのが目的です」

「ここは第1下水道っつーらしいんだけど、メンテナンスの為に今は閉鎖してんだ。

 下水処理した後の比較的、綺麗な水を流してるって話だけど、

 たまーに、下水道で育った魔物が出てくるらしいぜ」

「や、やめてよアー君・・・怖がらせないでよ・・・」


アーシュの話を聞いたリエルが怖がってアーシュにしがみ付く、

初々しいなぁ、見せつけてんじゃねぇよという言葉が喉ぐらいまで出てくる。


「下水育ちは様々な病気や毒を持っている、万が一噛まれたら

 すぐに解毒薬を飲む必要があるわけだが、2人は持っているのか?」


私の問いに、2人は手持ちの解毒薬の小瓶を見せて答える。


解毒薬、というより水薬ポーション類は大抵の物は値が張る。

駆け出しの冒険者の収入で買うには躊躇される代物であるが、

この2人は自分の命に対して出資を怠ってない。


「偉いな。だが水薬は高いから、あとで野草で作る傷薬と

 毒止めの作り方を教えてやる。毒止めは解毒はできないが、

 進行を遅らせることができる、その間に医者に連れて行けば安上がりだ」

「いいのか?助かるぜ、実はこの解毒薬買うにも結構金を工面したんだよな」

「これくらい礼に及ばんよ、それでは行こうか」


私とアーシュが先行し、リエル、テスの順で列を組み通用門を潜る、

中に入っても、私の記憶にある下水の不快な臭いはあまり感じなかった。

泥水を綺麗な水に変える魔法は存在している、

ただ、首都の規模の汚水を魔法で・・・と言うのはあまり現実的ではない、

恐らくだが、下水の浄水システムに機人族の発明品でも使っているか、

それに相当する何かの魔道具を使用しているのだろう。

流石にそれくらいの施設がなければ、人口100万人の大都市なんて出来ないか。


「リエルさん、今の所魔物の気配はないから安心していいですよ」

「は、はい・・・下水の魔物は怖いって学校で学んだので、

 つい、襲われたらって考えると・・・」

「アーシュとリエルは冒険者学校の出なのか?」

「あぁ、そうだぜ。見ての通り俺は戦士を目指してて、

 リエルは鍛冶師になりたいんだ。

 俺のこの武器は、リエルが初めて1人で作ったんだぜ」


そう言って、アーシュは自慢気に背負っていた長斧を見せてくる。

遠目からは中々分からなかった、これと言った目立ったデザインではないが、

手に持って初めて分かる『技術力』がそこにあった。

『鍛錬』、『研ぎ』、目に映るその精度は、熟練の職人が打つ一等品と

言われても気づかないだろう。

間違いなくリエルは逸材だ、だが逸材だからこそ、理解できない部分もある。


「凄いな・・・これだけの物が作れるなら、

 冒険者ではなく鍛冶師として弟子入りしても良かったんじゃないか?」

「わわ、私はアー君が、アー君と一緒に、居たい、から・・・。

 それでっ、アー君が取って来た素材で、アー君に凄い装備を・・・」


初々しいなぁ、見せつけてんじゃねぇよという言葉がまた喉ぐらいまで出てくる。

好いた男の為に、より近くで、より輝けるように、健気に支えたいだなんて、

まるでハーレム物の冒険物語みたいな話じゃないか、

ちなみに私とテスはモブキャラだからな、立ち位置的に攻略キャラかも知れんが。



「はは、初々しいですねあまり見せつけないでください」


いやお前テスは言うんかい





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