パラレルワー有ルド

我成小鳥

第1話 『俺』と「私」と『お前』と「此奴」《こいつ》

【ニュースキャスター】(6月15日のニュースをお届けします。まずは話題のニュースから、昨夜未明P都w区の高校生が行方不明になる事件が起こりました。事件についての詳細な情報がまだ掴めていない状況です。先日にも相次いでこのような怪奇的な事件が起こっています。このことについて~)





曇り空の妙に辺りが静かな夜

【俺】『なんなんだ!』

“ドォン!”玄関のスライド式ドアを、これまでにないスピードで開ける。

【私】「家を出てどうするんだか」

【俺】『なんでこんな目に合わなきゃならないんだ!』

心の、身体の、すべてから絶叫した、これまでにないほどに。

【私】「何を言っているんだ、これからだろう。」





~今朝頃~

【私】「午前5時半自転車で登校、いや開始と言ったところだろうか、大変そうだ。」

【俺】『今日はいい日だ、これまでにない野球日和って感じで、最っ高だぜ!』

朝なので、今日もスライド式のどあをそっと開け、小声かつ心では大声でテンションを上げ、自転車に乗った。

【私】「そんなこと言って、楽しそうな奴だ。」

【俺】『ひゅ~、たまんね~。』

勢いよく坂を下る、風を切り裂き、突き抜ける、たまらない高揚感で胸が熱くなる。

【私】「どうせお前のことだ、坂を下るだけで高揚感とかを感じているのだろう、とても愚かだ。」

【俺】『なんだか今日はいい感じだぜ、へへ』

信号が変わるのを待ちながら腕を回す、学校はもうすぐだ。

【私】「なんという能天気ぶりだ、もはや尊敬の念を送るよお前には。」

【俺】『よし、今日も時間に余裕をもって登校してやったぜ~。てことはどうでもよくって。そう、今日は大事な最後の夏のメンバー発表の日だ。』

校門の前で“ぎゅちゅん”と口内に溢れた唾液を飲み込む。

【俺、私】『「さぁ運命の日だ」』

学校に入ろうとしたその一瞬であった。目の前がブラックアウトしたのだ、混濁する意識の中、声が聞こえた・・・気持が悪くなることが分かる声、鳥肌が足の先から指の先までいきわたるような、壮絶な悪寒が俺を襲った。その声で同じ言葉を言わないでほしい。

~保健室~

“ブファ”何かを捲った俺、ほこりが舞う、ここはどこだと辺りを見回す、保健室のようだ。

【俺】それより、メンバー発表はどうなったんだ、俺はベンチ入りできたのか!?

【野球部の顧問】(おっ気付いたか、大丈夫かい?校門で倒れていると部員から報告を受けたから、急いで駆け付けたよ、気持ちは悪くないかい?)

【俺】『あっ、先生!大会のメンバー発表はまだですか!?』

【野球部の顧問】(急にその話か、その言いずらいのだが・・・今回は、残念ながら)

意識が遠のく、、、微かに聞こえる声は、最初の方だけ聞いて分かる、おちた。

そう気付いた瞬間またもブラックアウト。視界がブラックアウトするのは今日で通算二回目だ。“プチュン”





~???~

【私】「おやおや、まだ起きられないのかい?貧弱な奴だ、それも仕方ないか入り方が悪いからな、残念だけれどまた今度になりそうだな。」

顔を見なくても分かる此奴が嫌いだ、恐らくすべてを知ったうえで嫌いなタイプであることを確信できる、だからわざと意識があるうちに首を此奴と逆の方向に向けてやった。ざまぁみろ、ぶぅぁあーか!

【私】「お前の行動には苛立ちを覚えるよ、本当に。」





~保健室~

【俺】『むぁ~』

大きなあくびと共に起き上がった、するとまだ保健室の中だった。俺は絶望半分、残りは虚無で目覚めた。・・・何にも考えられない、そのうちに学校が終わった、今日はすぐに家に帰り、誰もいない部屋でテレビを付けた。4時ごろの並の高校が見ても面白くないニュースや通販ばかり放送されている。

【俺】『はぁ~』

出てくるものはため息ばかりだった。とりあえずニュースを付けたが、スポーツの話題が少しでも出ない様にと願った。

【ニュースキャスター】(6月14日のニュースをお届けします。まずは話題のニュースから、昨夜未明P都w区の高校生が行方不明になる事件が起こりました。事件についての詳細な情報がまだ掴めていない状況です。このことについて~)

親が帰ってきた、今日は外で夕食を食べるようだ、そんな話を遮り俺は言った。

【俺】「ベンチに入れなかったよ、今までありがとう。」

俺の胸が“キリュキリュ”と、まるで音を奏たい不格好な弦楽器のように耳障りな音を立てた。

【母】(よく3年間続けてこれたわよ、偉い子だよ。)

予想通りのような、テンプレートのような言葉だ、俺はそんな言葉聞きたくない。

【父】(そうか、お前ならベンチ位なら入れると思ったんだがな、残念だ。)

遭いも変わらず糞だ、なんだベンチ位って、イライラする。“キリュキリュ”と、またこれだ、そしてどうじだった ,音と同時に涙が零れた。すぐに自室に籠った。外から音が聞こえる、何か親が喋っている。

【親】 (周りから期待されていたからな、なんと報告したらいいものか、そうね。ご近所さんにも何て言えば・・・)

心底絶念した、そこからは覚えていない、というより思い出したくないという方が正しい。

あとはもう言葉にならない様な無様な言葉?を絶叫しながら家を出て走った。

【私】 「そうだ、そのまま真っすぐ、下れ。」

~県境~

そしてそこに行き着いた、堺目や境界と言われる何かを繋ぎ留めている場所。そしてここは、県境、四つの県都が繋がっている場所、上から見ると綾取りの箒のようになっている。何か悪い事が起こる予兆なのだろうか、曇り空の中、轟々と鳴る様にして

吹いていた風がピタリと止んだ。怖くはなかった、家で見たニュースの様になってしまえと思いながら足を大きく広げ、跨いだ、跨いだんだ、境目を。“プチュン”





~何処かの部屋~

【私】「それで今ここに来たんだ、思い出せたかい?そして突然で悪いのだが、お前と私は同一人物だ。」

【俺】『俺とお前が同一人物!?信じられるか!』

当然である。

【私】「はい、想定どうり、これで終わりにしよう、分かってくれ、お前は私だ!」

いやいや、そんなこと言われてもな、というところだ。

【俺】『一回この部屋を出てもいいか?』

【私】「だめだ。きっぱり言わせてもらうが、もうこの会話を指では数えきれない程繰り返しているのだよ!」

“ドン”と机をグーで殴っていった。

信じてみることにした、ここまで言うのだ、さぞ大変だったのだろう。

【私】 「さぁ始めようか、まずは・・・そうだね、なぜお前を呼んだかについて。」

 

次回に続く!





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