ビルとビルのすき間のビル

「やれやれ、困ったものだね」


 そろそろ定年という壁が見えて来た男は、軽く溜息を吐く。

 実はその業界では成功をおさめた会社の人事部長だ。

 今日は戦力増強の為の面接日。

 しかし、困った事に面接を予定している人間が来ないのだ。

 遅れるとの連絡は受けているのだが、その後一行に来ない。


「もういい。彼の携帯に連絡して、伝えろ。不採用だ、と」


 しびれを切らした部長はそう部下に言う。

 もう次の面接者が来る時間だ。

 とりあえず、お茶を飲み、気を落ち着ける。


 面接者が来るはずの時間。

 入って来たのは、部下からの「面接者が遅れるそうです」という連絡。

 部長はまた溜息を吐く。


 朝からこれで5人目。

 遅れるという連絡の後、実際に来た者はいない。



「まぁ仕方ない。辿り着いた人間を採用する仕組みだしな」



 ちなみに、その会社の名前は「株式会社忍者派遣サービス」という。

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