夕凪渚

「じゃあ、学校行ってきます。」

「渚、大丈夫か?学校で何言われるかわからないぞ。」

「礼央、安心して、礼央は私のものだから。」

「違う意味で安心できないよ。何かしでかしそうで怖いんだけど。」

「大丈夫だから、心配なら一緒に行く?」

「顔バレして、熱愛報道があるVは外でない方がいいから、俺は家から出ないよ。」

「でも、ガチ恋してなかったから言う程燃えてはいなかったよ。」

「そうだとしても、そもそも、ガチ恋以前にVは顔バレしちゃいけないんだからな。」

「じゃあ、礼央は私が何しでかすか分からないけど、ここにいるしかないね。」

「くそ、しょうがないいってらっしゃい。」

「その、『くそ』とかいう汚ない言葉遣い絶対に配信でしないから私だけのものだね。嬉しい」

「渚が俺のことを好きなのは理解したから、学校いたほうがいいよ、遅刻するよ。」

「礼央は自分の危機なのに遅刻させないようにするなんて優しいね。大好き、いてきます。」


 私、夕凪渚は落ち着いた声によってjkながらも声優としての評価を受け、たくさんのアニメに出させてもらっている。最近はラジオで冠番組を持ち、いくつかのアニメで主演を演じさせてもらっている。そんな私はブラコンである。そして、兄である夕凪礼央が配信を切り忘れたことにより、また都内チャンスを得たのだ。礼央が兄であることを隠し、その上で彼氏ということにする。これでやっと、礼央を独り占めすることができるのだ。そして私は、学校に到着した。


「みんな、おはよう。」

 思った通り、私はクラスどころか、芸能科の多くに囲まれてしまっている。

「ねえ、レイくんと付き合ってるって本当?」

「高校生でスキャンダルってどういう気分なの?」

 これも想定どうりの質問たちが私に投げかけられている。煽る声、羨ましがる声、興味深そうな声、軽蔑する声、おめでとうという声その他たくさんだ。

「ええ、私はレイくんと付き合っています。」

「やっぱり。」

「お似合いだよ。」

「推しと推し、尊い」

 決まった。これで礼央は私のものだ。

「渚、なにしてるの?」

「えっ」

 なぜかそこには、制服姿の礼央が立っていた......

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