002:魔法って、こんなマズイの?

002:魔法って、こんなムズイの?

 俺が魔法を学び始めて2年が経った。

 年齢も3歳となって、それなりに会話をしてもおかしくは思われない年齢になった。

 それによって俺は、母さんに魔法を学びたいんだという事を、3歳児らしい可愛らしさでアピールした。



「そっかぁ。魔法のお勉強がしたいのかぁ………それならママに良い考えがあるよ!!」


「良い考え?」


「そうよ!! ママに任せておきなさい!!」



 なにやら母さんには考えがあるみたいだ。

 ここは元冒険者の母さんに任せておけば、それなりに魔法を学ぶ事はできるだろう。

 それにしても赤ちゃんの可愛いアピールというのは、凄い威力があるものなんだと分かった。このまま何かにつけて赤ちゃんの力を使ってしまいそうだ。

 そんな事を思っていると母さんは、午後にある女の人を連れてきてくれたのである。

 見た目が全人類が想像しているであろう魔法使いと同じなので、直ぐに「あっ。この人が教えてくれるんだ」と理解する事ができた。



「アッシュちゃん。この人は私とエリックが、冒険者時代に同じパーティーを組んでた人でね」


「初めまして私は〈ラグネル=ゴーヴァン〉。これから貴方ほ師匠になる者です」



 まさしく魔性の女という感じだろう。

 程よく垂れた目に、スタイル抜群と世界の誰もがいうボンキュッボンって感じだ。これが初恋と言っても、周りの人は納得するくらいの綺麗な人だ。

 このラグネルさんに、これから魔法を学ぶんだと考えたら、結構やる気になってしまうな。



「ラグネル。貴方の魔法の技術に関しては、私は脱帽するモノがあるけれど………ウチのアッシュちゃんに、手を出したりしたら殺すわよ?」


「そんな見境が無い獣みたいに言わないでよぉ〜」


「(ん? 母さんはなんて言った?)」



 とてもじゃないが見過ごせない内容が飛び出した。

 もしかしてラグネルさんは、ショタに手を出すようなヤバい人なのだろうか。

 こんな事を自分で言いたくはないが、アッシュとしての俺の顔は、それなりに整っていると思う。



「どの口が言ってるのよ!! 貴方、私とエリックが付き合っているのを知ってて、エリックをホテルに誘おうとしたわよね?」


「もぉそれは説明したじゃないのよぉ。結局、貴方とエリックは結婚したんだから良しとしましょうよ」


「これでアッシュちゃんにまで、手を出そうとしたらラグネルは真っ二つになるわよ」


「分かってるわよ。確かに若い男は好きだけど、3歳になんて手を出すわけないじゃない」


「それはそれでイラッとしたわ。真っ二つにしてやろうかしら!!」


「面倒くさいわね!!」



 過去に色々あったらしいが、それでも母さんが俺にラグネルさんを紹介するという事は、それだけラグネルさんの実力があるという保証になっている。

 母さんとラグネルさんの小競り合いが終わったところで、俺たちは庭に移動して本格的に魔法の授業がスタートするのである。



「それじゃあ基本として、魔法には8種類の属性が存在しているわ。火・風・土・雷・水に、光・闇と無属性魔法の8種類よ」


「はいっ!! 無属性というのは、どういう魔法の事をいうのでしょうか!!」


「君、本当に3歳なの? まぁ良いわ。無属性魔法っていうのは簡単に言えば、身体強化とかが無属性よ」


「はいっ!! 僕が使った炎魔法っていうのは、火魔法とは違うんですか!!」



 久しぶりに授業なんて受けているモノだから、つい聞きたい事をバシバシと質問してしまう。

 そんな俺にラグネルさんは、本当に3歳児なのかと疑いの目を向けられるが教えてくれる。



「君が使ったという炎魔法というのは、火魔法の上位互換だと言われているの。つまりは説明した8種類の属性魔法には上位互換が存在するって事ね。だけど無属性魔法のみは上位互換とかは無いわ」


「(そういう事だったのか。つまり俺は最初から火魔法の上位互換を使って、母さんたちを驚かせたって事か)ありがとうございます!! それじゃあ続きをお願いします!!」


「わ 分かったけど、本当の本当に3歳児なの? 立ち居振る舞いもそうだけど、最初に使った魔法が炎魔法なんて十二聖王や五大賢人と同格のような………まぁ才能というのは、誰にでもありますものね」



 ラグネルさんは考えても仕方ないという、結論に至って俺が3歳児かを疑う事を諦めるのである。

 というか十二聖王や五大賢人なんて、凄い人たちと見比べられるなんて神様の与えてくれた力って、本当にチート級なんじゃないか。

 それにしても十二聖王と五大賢人って、凄い人だという認識はあるけど、どんな人たちなんだろうか。



「十二聖王と五大賢人って何なんですかぁ?」


「そうよね、そんな言葉を聞いた事も無いわよね。じゃあ説明するけれど、少し難しいなら集中して聞くのよ」



 ラグネルさんは十二聖王と五大賢人について、3歳児でも分かりやすい説明をしてくれた。

 要約すると十二聖王は、冒険者の中からトップオブトップに君臨する12人の事をいうらしい。そして五大賢人は、その魔法使いバージョンだという。

 元冒険者のラグネルさんがいうのだから、俺は3歳児にしてトップオブトップなのかもしれない。



「それじゃあ基礎中の基礎は話したから、次は魔法発動に関する説明をしていくわね。魔法というのは自分の体内に流れる魔粒まりゅうを、自分の適性を持っている属性魔法に変換して体外に放出するモノの事よ」


「魔粒ですか………はいっ!! その魔粒が多いと、魔力量が多いってなるんですか!!」


「そうね。魔力量というのは、魔粒を魔法に変換した際に言われる量の単位と考えても良いわね」


「(うーん。かなり難しくなって来たなぁ………前世の世界とは、かけ離れすぎていて難しい)」



 魔力量とかは前世で聞いた事もあったが、こっちの世界では魔粒と呼ぶらしく記憶しておく事にした。



「魔粒とかは成長していけば、それなりに増えたり訓練で増やしたりはできるけど、まぁ才能と言えば才能かもしれないわね」


「(そこはやっぱり才能なのかよ………訓練で増やせるのなら死ぬ気で増やすけど、才能なんて言われたら残酷じゃないかぁ)」


「そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫そうよ。正確に測ったわけじゃないから安心はして欲しくは無いけれど、私の見る限りでは十分過ぎるくらいに魔粒を感じるから………だから3歳児とは思えないのよ」



 そういう事だったのか。

 もちろん所作で違和感を持っている部分もあるだろうが、ラグネルさんが疑問に思っていたのは俺の魔粒量の事を言っていたんだと分かった。

 それじゃあ俺は才能がある方なんだと鼻息荒くなる。

 しかし安心もしていられないだろう。

 どうしてかというと、天才なんて囃されていたが姿を消した人なんてザラにいるからだ。ここから才能を磨いていくのは、やはり努力以外にはあり得ない。

 だが、あまりにも魔法の授業が難しすぎて頭がパンクする日は近いのかもしれないと思っている。

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