私的選外〜其の二
花恋亡
欲望の前の無力〜背脂マシマシ〜
拙者は今、この暴れん坊なお腹の癇癪を鎮める為にこの列に並んでいるのですな。
そうこの二郎インスパイア系の新参モノ
「豚肩チャーシューは歯茎で咀嚼」
西新井大師店の行列に。
いやはや出店早々に人気店となっただけはあって、平日と言えど凄い人の数なのでありまする。
炎天下、空腹、待ち時間、否が応でも期待が膨らんでしまうというものですぞ。
拙者の前におわしまする見目麗しい女性もその空腹を黒烏龍茶で誤魔化されてるご様子。
むむっ。
むむむ、むむむ、むむむのむ。
まさか、まさか、まさかのマサラタウンのサトシ。
もしやこの女性はかの有名お天気キャスター嬢では御座らんか!
そのおっとりした喋り方とかわちい顔立ち、それでいてラーメンフリークというギャップ爆弾で世の男どもの脳天を棍棒でかち割り歩くあの御方では御座らんか!
変装されているご様子だが拙者の目は誤魔化せませんぞ。
その溢れ出るかわちいオーラ、この鼻が嗅ぎ取りましたぞ。
あークンカクンカ、クンカクンカ。
Good smell !Good smell!フォー!
芳醇な香りに脳がとろけまするな。
堪りませんぞ。
この香りの芳香剤が発売されたら箱買い必至!
おや?
肩に一本の抜け毛が。
あー欲しい!
その御ヘアーをちゅぱちゅぱしゃぶりしゃぶりさせて頂きたい!
使わない時はジップロックで厳重に保管して、神棚に祀らせて欲しいですぞ!
いやーしかし暑いでござるな。
お天気キャスター嬢も黒烏龍茶を飲み干す寸前ですな。
無理も御座らんが、折角のラーメンの前に水分でお腹を満たしてしまっては勿体ないですぞ。
黒烏龍茶は食後こそ至高。
カロリーを相殺する魔法の液体。
ほら飲み干されてしまったでは御座らんか。
…
欲しい。
…
欲しいですぞ!
そのペットボトル!
空き容器!
もうレロレロチュッチュさせて頂いてから色々使わせて頂きたい!
なんとしても欲しいですぞ!
どうしたものですかな。
そうだ拙者も手持ちの黒烏龍茶を飲み干してこう声を掛けるのですな。
もし良かったらついでなんで捨てて来ましょうか?
なんと妙案。
むしろこれ以外の正答は御座りませぬな。
最早ラーメンなどより大事な戦いがここにはあるのですぞ。
よし。
拙者よ言うのですぞ。
い…言えっ言えっ!
ああっあっその…
「はい?」
そのぅ…あのぅ…すっ、すっすっすうー…
「すうー?」
すっ…スープが絶品なのですぞこの店舗は
「そーなんですねー!わーい楽しみー」
拙者の馬鹿!
愚か者!
怖じ気付きおって!
千載一遇の好機を逃してしまったではないか!
これは切腹ものですぞ。
恥を知れ恥を。
などとやっておりましたらな、いつの間にか順番が来ていたという事があったのですぞ、我が妹よ。
「ふーん良く分かんないけど、兄ちゃん人間界って楽しそうなんだねー」
無論ですぞ我が妹よ。
人間界は娯楽で溢れて御座る、魔界よりよっぽど刺激的でWARNINGがDANGERなのですぞ。
「でも兄ちゃんさ、なんでその女の人を食べなかったの?その女の人がラーメン食べ終わってからその人食べちゃえば良かったのに。そうすれば兄ちゃんはラーメン二杯食べた上に好きな女の人と一緒になれたのにさ」
…我が妹よ…
……天才か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます