夏休みにアルバイトを始めたら革命が起きた話

月丘ちひろ

1話 アルバイトを始めたら、一軍女子と靴を買うことになり、連絡先を共有される話

1-1 クラスメイトに嘲笑されたので自分を変えるためにバイトを始めることにした

 ある高校に川里元かわりはじめという名の生徒がいた。川里は教師から真面目と言われるが、クラスメイトからは嘲笑われる生徒だった。


 補習を免れる程度の成績。

 規律の範囲内だけど無精な容姿。

 運動部に埋もれる程度にはある運動神経。

 総じて川里は地味で無個性な生徒だった。

 教師の言う真面目はいわゆる方便だった。


 川里がクラスメイトの評価を知ったのは高校一年生の夏、好意を抱いた女子生徒に想いを打ち明けたことがきっかけだった。


 その女子生徒は目立つ女子に埋もれていたが、会話に耳を傾ける落ち着いた雰囲気があり、川里は彼女となら力を抜いて付き合えると期待していた。


 しかし川里の期待は外れた。

 彼女は見下すように川里の告白を断った。

 

 それだけであれば川里の傷は浅かった。

 好みは人それぞれ。

 断られることはよくある話。

 こうした展開は受け入れることができた。


 川里の心に傷を与えたのは翌日のことだった。

 昨日の告白が教室中に知れ渡っていたのだ。

 

 川里と一緒に過ごす友人は、哀れむような視線を彼に向ける。教室内で人気のある男女が集まったグループは川里の陰口で盛り上がっている。


 細身な短髪の男子生徒曰く、


「あんな見た目で何を考えているんだろうな」


 低身長な茶髪の少女曰く、


「川里に好意をもたれたあの子が可哀想」


 そんな二人の意見に同意するように大柄な男子生徒が相槌を打ち、高身長な金髪の少女はニコニコと笑っていた。


 そこで川里は自分が不快な存在として認識されていることを自覚した。真面目という教師の評価をステータスに感じていた自分を恥ずかしく思った。


 生まれ変わってクラスメイトを驚かせたい。

 何なら振った女子生徒を後悔させたい。

 川里の心にそんな感情が芽生えた。


 幸いにも季節は夏。

 まもなく夏休みがやってくる。

 生まれ変わる時間がある。


 川里は休暇の期間で自分を変えるために行動することを胸に誓った。この日、帰宅した川里はすぐに行動に移すことにした。


 家で勉強だけしてゴロゴロしていては今までと同じだ。自分を変えるなら、行動を変える必要がある。


 そこで思い付いたのが夏休みからアルバイトを始めることだった。どうせ行動を変えるならお金になることをしようと考えたのである。


 川里は計画を立て、いくつかのアルバイトに応募をした。そして夏休みからアルバイトを始めることになった。


 川里元の自己変革が始まった。

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