第13話 平安時代ですよ

「平安時代に入りますよ。名前だと聞くと平和そうな時代ですけど、実態は腐敗と癒着だらけの時代です。つまり、和の心が存分に発揮された時代ですね」



「そんな和の心知りたくねぇんだけど」



「では、平安時代を語っていきますね。奈良時代に僧を優遇した結果、奈良では僧が権力を持ち始め。政務に口出しをし始めます。天皇や貴族達は僧の介入が疎ましくなり。そうだ、京都へ行こう、となって。784年に長岡京へ遷都する決定を桓武天皇が下すのです」



「そんな軽いノリで京都に行ったの!」



「長岡京で暮らしてましたが。桓武天皇に災難、不幸が続き。陰陽師に聞いたら。あっ、長岡京を造る際。弟を餓死するまで追い込んだから。呪われちゃってますね。お大事に。と言われます」



「その陰陽師、軽すぎない!」



「桓武天皇は蒼白し。新たな都の建造を命じ。794年に完成すると、逃げるように、新たなる都、平安京へと向かって行くのです」



「十年ほどで長岡京を捨てたのか」



「平安京に移ったら。今まで滞っていたのが嘘みたいに解決していきます。東北では、蝦夷(えみし)と呼ばれる朝廷に服従しない人々が反旗を翻しており、長岡京の時は朝廷の軍はやられていたのですが。平安京に移ると、人事が冴えに冴え。坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)を征夷大将軍に任命すると。瞬く間に、蝦夷の軍勢を鎮圧し。東北を平定します。此れも全て、平安京に遷都したお陰です」



「遷都したお陰かどうかは分からねぇが、上手くいったって事だな」



「そう言うことです。また、唐の衰えを見た。菅原道真(すがわらのみちざね)は、もう十分学んだし。遣唐使を送らなくてもよくよくない、と提言し。遣唐使の派遣が停止され。これにより日本独自の文化である。国風文化が華開きます」



「国風文化ねぇ。具体的な特徴とかあんのか」



「漢字を日本語にした。仮名文字がつくられましたね。これにより、柔らかい文体が生まれ。文章で女言葉になる男性が多発します。俗に言う、ネカマ(ネットのオカマ)ってやつですね」



「平安時代からそんな文化あったの!」



「また、これまでは漢詩が全てと言う風潮がありましたが。日本独自の文化を発展させるぞ、って流れになり。仮名文字(かなもじ)が使われ始めました」



「なんか、仮名文字を使った作品とかあんのか?」


「仮名文字の文学としましては、紫式部(むらさきしきぶ)の「源氏物語」が挙げられますね。ぶっちゃけ、ただの猥談話ですけど。時代によって過度に持ち上げられたり、過度にこき下ろされたりする珍しい書です」



「そんな本存在すんの」



「後、有名なのが清少納言(せいしょうなごん)の「枕草子」ですね。女官として宮中の生活などを日記として書いたり。特定のテーマを決めて言葉を表したりしています。四季で言えば。春はあけぼの。夏は夜。秋は夕暮れ。冬はつとめて。と始まり。季節の、をかし(風情や趣)を仮名文字を使って示していますね」



「仮名文字が生まれ事によって、文学が飛躍したんだな」



「まぁ、そんなとこです。また、建築も唐を真似るのではなく。日本の独自の形に変え。寝殿造りと呼ばれる。庭のある形へと変わっていきます。まぁ、住めたのは貴族だけですけどね」



「貴族が贅沢する分だけ、民にしわ寄せがくるんだがな」



「最後に宗教を語って終わりますか。平安時代を代表する宗教家は二人いまして。それが、最澄と空海です。平安時代初期、この二人は遣唐使として唐に行きます。最澄は伝統的な仏教を学び取り。日本に帰国しますが。空海は密教と呼ばれる。当時としては異端な仏教を学び取り。日本へ帰還します。当初こそは、最澄の伝統的な仏教が持ちはやされていましたが。空海が密教の秘伝で病気を治したりすると、朝廷内で大騒ぎ。密教を知ったことで、古来の仏教? 古いよね。現世で利益ある密教、サイコー。と言う形に変わり。空海はもてはやされ。最澄は立つ瀬を失います」



「密教フィーバーってやつだな」



「最澄は伝統的な仏教では、この時代の第一人者でしたが。密教に関しては素人であった為。恥をしのんで空海に密教を聞きに行きます。始めこそ親交はありましたが。空海が明らかに最澄を下に見ており。それにぶち切れた最澄は親交を断絶し。最澄の弟子達が密教を完成させます。……まぁ、言いたいことは、空海は真言宗を開き。最澄は天台宗を開いたってことですね」



「ごっちゃになりそうだな。宗教の名前と空海と最澄だったか」



「空海は密教の真言(マントラ)を唱えて現世に利益をもたらしますことを伝えました。それ故、真言宗。最澄の天台宗は、天台山と呼ばれる中国の山が由来です。天台山にて、ちぎと呼ばれる人物が天台教学を開き。その書物を読んだ最澄が感銘を受け。遣唐使になった際、天台山に向かい。学びました」



「色々と深い歴史があるんだな」



「で、十世紀になると、税と言う名の略奪が厳しくなって。民衆の目が死んだ魚になってきました。そんな中、とある僧が、念仏を唱えたら。極楽にいけるよ。と言って。浄土信仰が盛んになります。今までは貴族や富める者のための宗教ばかりでしたが、この僧によって、民間で宗教が普及し始めるのです」



「民間宗教として、浄土信仰が行われたと」



「そう言うことです。さて、今回は此処までにしましょうかね。次回は、貴族達って仕事してるの? のお話です。まったねぇ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る