32話 前哨戦③

まずやるべきは『左側の敵』を速攻で倒すこと。その次に『正面の敵』vs『右側の敵』の戦いに乱入して漁夫る。

だけどもし『左側の敵』との戦いで負傷しちゃうと『正面の敵』vs『右側の敵』に漁夫を入れることができなくなってしまう。

負傷した人間を見逃すはずがないからね。少なくとも俺なら浮いた敵として速攻狩る。

だから最少は積極策をとらない。まずは向こうの攻撃をいなすことに専念する。できることならカウンターを狙いたいけどね。


「よっと」


正面から振り下ろされた敵剣を刀で受け流し、そして空いたほうの刀を相手の首元めがけて振るう。


だけどこれを敵は剣の腹で受け流し、カウンターとばかりに俺の腹部に蹴りをいれてくる。


「ガッ」


左手で受け止めたはいいものの勢いは殺しきれなかった。そのまま5メートぐらい後ろに吹っ飛ばされる。

その隙を相手は逃すはずもなく追撃を仕掛けてくる。


(これはちょっとやばいかも)


そう思った俺はすぐさまを刀を相手に投げつけると同時にバックステップで相手との距離をとる。相手の攻撃は俺には当たらず空を切った。

(ふぅ~)


ひとまず難を逃れたことに安堵しながら刀を構える...刀を....刀...


あれ?もしかして俺、刀投げちゃった?


「マジかよ」


予備のナイフを取り出す。


。だけどナイフ一本じゃどう考えても不利だ。


「あぁもう最悪」


いやぁ、普通に癖で手放しちゃった。普段から持っている武器に執着がないというかなんというか。

まあともかく日頃から論理とかクソくらえ的な戦い方をしているからノリと勢いだけで戦っちゃうんだよね。


「まあしょうがない。刀は倒した後に回収すればいいし、このまま行くか」


またナイフを構えて相手と対面。とりあえず武器がこれだけなのは心もとないけど仕方ない。


相手は俺が武器を持っていないと見るやすぐに距離を詰めてくる。だけど俺、刀以外はそこまで使えないわけじゃないからね?


「そりゃっ」


まずは相手の武装解除をするために腕を攻撃する。


まあでも当然相手は俺の狙いにすぐ気づいて剣を引っ込めるが、その隙を見逃すほど俺は甘くない。そのままナイフで切りかかろうとして……やめた。


(いや、これじゃあさっきと同じじゃん)


そう、これだとまた同じ結果になるだけだ。だから今回は違うやり方で攻撃する。


右足で地面を蹴って敵の懐に一気に距離を詰める。今度はナイフを使わずに体術で戦う。ナイフで相手の剣を防御しながら体を敵の懐に、ゼロ距離まで詰める。そしたら当然相手は距離を取ろうとする。


そこでワンテンポずらして左足で足払い。


当然ながら敵は足を払われたことによって地面に倒れる。


「どっこりゃせ」


だから俺は相手の上に乗ってナイフで一振り脳天を刺す。


これで俺の勝ちだ。


「次は...」


『左側の敵』を始末した後、『右側の敵』と『正面の敵』の戦いに参戦しようと立ち上がり振り返ると、ちょうど『正面の敵』が倒れるところだった。


「あちゃ~」


漁夫るつもりだったがどうやらちょっと遅かったようだ。すぐにさっき投げてしまった刀を拾って二刀流で構える。今度は武器を投げない。相手からしたら厄介だろうな。2つの刃渡りの違う武器から繰り出される変則的な連続攻撃。

もし俺がそれを受けるのならFワード必須だろう。


「とりあえず、様子見かな」


相手が剣を振りかぶった瞬間に片方の刀で斬撃を防ぎながらもう片方のナイフで切りかかる。だけどこれは見事にシールドで受け流された。


「やるな」


なんて言いながら次の一撃を入れる。刀が首筋に触れ、血が伝ってくる。


「浅かったか」


相手が首を傾けていたせいで切り込みが浅く、致命傷には至っていない。まあでもこれで十分だ。俺はそのまま相手と距離を詰めて追撃をする。


「これで」


刀で相手の首を切り落とそうと振りかぶったところで相手が俺目掛けていきなり魔法を放ってきた。


「うおっ」


まさかの反撃に思わず後ろに後ずさる。だけどその隙を逃すほど相手は優しくない。すぐに距離を詰めて剣を振ってきたが、それを何とか受け流してもう一度距離を取る。


(あ~、やっちまった)


なんて思いながら自分のミスを反省する。どうやら『正面の敵』は魔法を使うタイプの剣士だったようだ。


「....シールド張るか」


といい自分の正面にシールドを展開する。そしてそのままダッシュ。


相手は魔法を放つが当然、シールドだけなら誰にも負けない自信がある俺からしたらその程度の魔法など全然問題ない。


魔法をシールドで受けながら全力疾走しついに自分の間合いに持ち込んだ。

そしてそのまま自分のシールドごと貫いて相手に刀を刺す。


「ふぅ~」


これで俺の勝利が確定、つまり決勝戦に出場だ。





勝った。勝っちゃったよ。


いや別に負けるつもりはなかったんだけどいざ勝ってみるとあまり実感がわかないんだよね。とはいえ実感がわかないからと言ってボケっとしている暇はない。次は決勝戦の8人によるバトルロワイアル。


「その8人の戦いを観察しないとな」


仮想ステージから降りた後すぐに観客席のほうに移動、次の予選を観戦することにした。


「よっ!」


観客席には綾人と雫が試合を観戦しに来ていた。


「思ったよりも苦戦してたな」


「本気を出さなかっただけだし、次はボロ勝ちよ」


「ガキみたいな言い訳だな」


「うるせぇ」


「まぁまぁ、勝ったんだからいいじゃん」


観客席で雑談している第2試合が始まろうとしていた。


「そろそろ始まるぞ」


「おう、しっかり見とくよ」


次の戦いのために観察を始める。それはおそらく第一試合の時も同じだ。全員が俺たちの試合を見て、俺の戦い方を学習している。


「さて、どうすっかな」


少なくともゴリ押しだけでは勝てないだろう。次の試合のための作戦を考えないとな。そんな風に思いながら第2試合を観戦するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る