第89話 秋月、現る
俺はサクヤと蒼紫にモフられぐったりしているとミドリムシが声をかけてきた。
「そろそろオイラは行くでござるよ。なにか分かったことがあれば連絡するでござる」
「えーもう行くの?もう少し狐様の尻尾を堪能したいのに〜!」
「充分堪能したでござろうに!オイラなんか我慢してるのに…さっさと行くでござるよ蒼紫殿!」
「むー!ミドちゃんが拗ねてるから行くね〜。あっ!狐様狐様!フレ登録しよ!ミドちゃんよりいい情報届けるから!」
蒼紫は俺とフレンド登録を済ませミドリムシとユーキングのクランハウスから去っていった。
「嵐が過ぎ去っていった…落ち着くはずのブラッシングが…拷問に変わったぜ…」
「これからも時々やらせてね!おにぃ!」「お断りします!!」
今までラードとお茶を飲んでいたストレクーガがユーキングの方に顔を向け
「あの…秋月って…銃剣士の秋月ですか?」
「お?クーガは知ってんのか?」
「はい、エルフのガンナーとして有名ですから。この前まで一緒に行動してたし…」
「なら近くに居そうだな。シウから連絡すりゃ飛んでくるだろうさ。それよりシウ、修行してなにか得たのか?」
「とりあえず魔力構築と魔力感知を覚えたぞ。それと…まぁ…うん…」
俺はなぜか視線をユーキングから逸らし誤魔化そうとしていたがユーキングは見逃すはずもなく
「全て吐け!お前がやらかすのはわかってんだから!」
「おにぃは知らずのうちにやっちゃう人だからね…」
「覚えたってよりこの前のイベントで貰ったチケットを使っただけだぞ?」
まだ使っていなかったレアスキルと交換できるチケットを使い俺は新しくレアスキルを手に入れていた。
「何を覚えたんだ?どーせまともなやつじゃないだろ?」
「……魔力タンク」
「ん?」「え?なにそれ?」
ユーキングとサクヤは聞いたことが無いスキルを俺から聞き、掲示板を開き調べていた。
「まって?そんなスキル載ってないよ?おにぃ情報プリーズ!」
「俺の尻尾増えたやん?そこにMPを貯めることが出来るようになった。1本に付き100貯められる…よ?」
ユーキングは呆れて
「なんだよ…それ…お前専用か?お前だけのスキルなんか?あ?アクセでそういうのあるけど…なんだよ尻尾に貯めるって…」
「ユーキさん!気をしっかり持って!掲示板で探しまくったら載ってたよ!人外スキルだよ…それ…」
「あの…それ…俺も取ってる…」
獣人であるストレクーガも俺と同じ様に魔力タンクの固有スキルを手に入れていた。
「お?!クーガくんも俺と同じだな!同じ獣人だし!俺一人じゃ無くて良かったぁ〜」
「人外スキルでも尻尾があれば使えるみたいだし、獣人の特権」
「私も種族変更チケを手に入れて獣人になろうかな…めっちゃ欲しい…そうか!おにぃの尻尾を1本もぎ取って私に着ければ!」
「やめて?!もぎとらないで?!新手の拷問を思いつかないでくれます?!」
俺は尻尾を抱きしめながらサクヤから距離をとる。
両手をワキワキ動かしながらゆっくりと近づくサクヤだが、ユーキングに止められる。
「そんな馬鹿な事しなくていいから。とりあえずシウは今のところ魔法寄りになってんのか?」
「んーどうなんだろ?弓も短刀も普通に使うけどダメージ的に言えば魔法の方があるかな?でも四尾からは魔法系じゃ無いみたいだし…この先どうなるかはわからん!」
「今の所魔法寄りなら秋月が知ったら魔銃を勧めるかもな」
「あの人ならゴリ押しして来そうです…」
魔銃はINTとDEXが必要となり、今の俺にうってつけの武器となっているのだが...
「魔銃ねぇ…でも俺にはこの魔弓があるから別にいいんだけどな」
「まぁ秋月に会えばわかるさ。とりあえず今日はこの辺でお開きにするか。メンバーを待たせてるしな」
「私もリンちゃんとホノちゃんと会う約束してるから行かなきゃ!おにぃ!王都にもちゃんと来てよ!」
「わかったよ…ちゃんと行きますよ…俺達もそろそろ行こうか。クーガくんはどーすんの?」
俺はストレクーガに聞くと
「自分は特に予定は無いけど…シウは秋月にこの後連絡取る?取るならついて行くけど」
「まぁ早めに連絡しておいた方がいいだろうしな。それならどっか店に行って連絡するか。ならクーガくん、一緒に行こっか」
「わかった」
ユーキング達と別れた俺はストレクーガと近くの喫茶店に入っていく。
喫茶<カレーは飲み物です>
「久しぶりのめちゃくちゃな名前の店だよ…カレーは食べ物だろよ!飲むなよ!」
「マスターがまた店の名前にイチャモン付けてるのです…」
「主のいつもの病気じゃな…」
『我が主…恥ずかしいので店の前で叫ばないで下さい…本当に…』
「………いつもこんなにうるさいの?」
4人からの口撃に俺は撃沈して大人しく店に入っていく。
姫は人の姿から元の猫の姿に戻っていたのだが、人化を覚えた為、念話を使わなくても話せるようになっている。
席に案内されそれぞれ飲み物だけ頼み、俺はすぐに連絡先から秋月を選びコールをかけると
『やっとかかってきたぁぁぁ!!しーくん!しーくん!しーくーーーん!!しーーーーー』プツッ…
「ふぅ…」
「どうしたんだ?シウ?繋がらなかったのか?」
「いや、どうやら違う秋月さんだったみたいだな。コールかけたのにイタズラ電話されたみたいだよ…」
しかし直ぐに秋月からコールが来た。
『しーくんなんでいきなり切るんだよ!ひどくない?!』
「うるせーよ!大声で名前連呼されたら切るわ!」
『別にいいじゃんよ〜。それよりしーくん今どこにいるの?王都?聖都?』
「え?聖都のカレーに居るけど…」
『わかった!すぐに行く!超特急でいく!逃げんなよ?!』
そう言うとコールが切れ俺は呆然としていた。
「ここに来るみたいだね…あの人らしい」
「まぁ来るまで待ってるか。それよりキュリアさん…あなたに聞きたいことがあるんですけど…」
「なんです?マスター?私のスリーサイズは秘密ですよ?」
アプリルジュースを呑んでいたキュリアが言うと
「ちみっ子のスリーサイズなんて…ふっ…妾より小さいのに何をいうのじゃ」
『...どんぐりの背比べ...ふっ...』
「よしお前ら、落ち着け。誰もお前らのスリーサイズなんか気にしてない。おれが聞きたいのはその槍だよ。なんでいきなり変わってんだよ…」
「この新型貫き丸なのです?聖都に戻った時にパンさんから貰ったのです!私の新しい槍を作ったからあげるって言われたのです!」
キュリアの背中には普段から使っている白兎ではなく違う槍があったのだ。
スマートな白兎では無くなっておりごつい槍に変わっていた。
「てか…勝手に装備変えれたのね…」
「人型モンスターで意思があれば武器を渡せば勝手に装備されるの知らなかったの?」
ストレクーガが言うが俺は知らなかった。
直ぐにキュリアの装備を確認する為に装備欄を確認すると
「ガンランス 月兎…パンくん兎好きなのか?てか見た目かなり変わったなぁ…しかもガンランスって俺の知らない武器…」
「魔力を込めると魔弾が撃てるのです!敵を貫いた後に撃つことも可能なのです!遠近両用キュリアちゃんに変身なのですぅぅぅ!!」
『...その槍で私を貫いた…槍…コワイ…』
クロリアはキュリアの槍を見ると身体が震えていた。
キュリアに貫かれたことがトラウマになっていたのだ。
そんな時だった。
カレーは飲み物ですに勢いよく入ってくる1人のエルフが現れた。
「しーくん見つけた!やっと会えたよーー!!」
「お客様…お静かにお願いします…」
店員に怒られながら秋月がやってきた。
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