第86話 聖都防衛⑧



 クロリアをテイムした俺は暴れていたユーキング&サクヤと合流をした。


「なぁシウ太くん。俺は君に聞かなくてはならない事があるんだが、何か分かるかい?」

「ユーキえもん…君が我を忘れて暴れている時の話を聞きたいのだがね?サクヤも俺を置いて暴れ回っていた時の話を」


 2人は俺から視線を逸らし別の話題に変えてみた。


「それより!もう1人の悪魔の所にいくぞ!ミドさん達のヘルプに行かないとな!」

「そうだね!ユーキさん!みんながしんぱいだー!」

「2人ともすごく誤魔化し方が下手くそですの…」

『あの悪魔...ベアル...危険...』


 クロリアが男の悪魔の名前を呟くとユーキングが反応した。


「べアル…それって教会の司祭がよく話してる悪魔の名前じゃんよ!破壊の帝王ベアル…なんでそんな悪魔が出てくんだよ」


『ベアル...我をここまで連れてきた...目的は知らない...でも...我が主とまた会えた...これは運命...』


 俺の腕に抱きつくクロリアに対して


「接触行為は犯罪ですの!私が罰するのです!串刺しの刑なのですぅぅぅ!!」

「キュリアさんやめて?!俺まで刺そうとしてるよね?!それにクロリア?俺の事を主って呼ぶの辞めよ??」

『主がダメなら…殿?それとも...旦那様?』


「「よろしい、ならば戦争だ」」


 キュリアとサクヤがハモりながら戦闘態勢に入るが、ユーキングが俺の右隣に行き


「何言ってんだ?こいつは俺の嫁だぜ?誰にも渡さねーよ?」

「お前も何言ってんの?!頭腐ったの?!もうこのメンバーヤダ!誰か助けてよ!」

「魚意!!」


 何故か左隣には魚人であるきなこが立っていた。


「なんできなこさんがここに居るの?!しかも乾きすぎて鱗がカピカピになってるよ?!」

「狐さん…申し訳ないが私に水をわけてくれないでしょうか?水をぶっかけてくれたらお礼として私の鱗を差し上げますよ?」

「いらねーよ!」


 叫びながらクリエイトウォーターで造り上げた巨大水玉をきなこに落とした。


「はふぅ…生き返ったでありんすよ。さすが我が友、素晴らしいウォーターでありまする」

「んなことはどうでもいいから…それよりなんで聖都に来てるんです?きなこさんもイベントで聖都に?」


 きなこはたまたま聖都に来ておりそのままイベントに参加したらしい。

 そしてこんな事を言ってきた。


「あの悪魔は水属性に弱いでありんすよ。海底都市の住人が教えてくれたでありますからね。ベアルが得意とする属性は火と闇、だから私でも役に立てると思い、隠れてるのをやめて姿を現したのです」

「火と闇なら光も弱点ってことだよね?なら俺とキュリアで暴れますか!」

「ストレス発散するのです!この鬱憤をばら撒きにいくのです!!!」


 俺とキュリアは走り出し、ベアルの元に向かっていった。その後をクロリアも着いていく。


「おにぃとキュリアちゃんも戦闘狂だよね…ユーキさんは今回はあまり役に立たないかもね。炎属性だし。」

「まぁなんとかなるっしょ!」


 ユーキングとサクヤも俺の後を追い始めた。



 △▽△▽△▽△▽△▽



 ミドリムシ達はベアルのHPを半分まで減らしていた。


「あと少しで倒せるでござるよ!ラード殿は大丈夫でござるか?危なければ下がって回復するでござる!」

「それなら少しだけ前を任せます!一撃が重くなってきてるんで消耗がヤバすぎですよ!」


 ラードの守りによってミドリムシ達は安全に戦えていたのだがHPの減りが早かったラード。

 前に出たミドリムシは水龍を作り出しベアルに放つ。


「妾も続くのじゃ!魔拳 双雷迅!」

 それに続き人化している姫が両手に雷を帯びさせ殴り掛かる。


「小賢しい!ヘルズフレイム!」

「めんどくさいでござるぅぅ!相殺してくるでござるぅぅ…」「尻尾が燃えてるのじゃ!ファイヤーテイルなのじゃ!!消火してくれなのじゃぁぁぁ!!」

「なら動き止めようか?チェーンバインド」


 蒼紫が鎖をベアルに投げつけ両腕を締め付け行動を阻害する。


「一点集中。ヘッドショット」


 後方からスナイパーライフルを構えたストレクーガがベアルの頭を狙い撃つ。


「そんな攻撃は私のブラックカーテンで防ぐわ!」


 ベアルの体からは黒い靄が出ており、その靄が壁となり銃弾を防いだ。


「それならこれを食らうのです!シャイニングフェザー!」


 無数の光り輝く羽根がベアルに襲いかかってくる。

 靄は光に負けベアルの体に羽根がいくつも刺さる。


「がぁぁぁぁ!!貴様は!天使か!」

「プリティヴァルキリーキュリアちゃんなのです!」


「俺の事も忘れんなよ?第08水狐小隊整列!狙いはあのおっさん!とつげきぃぃぃぃ!!!」


 10匹の水狐がベアルに向かって走り出していく。

 火弾を放ち水狐を消していくが3匹の水狐がベアルに体当たりをした瞬間、水柱が立ちベアルを上空へ飛ばしていく。


「今がチャンスでござる!食らうでござる!行け、水龍!」

「それなら俺も…魔弾装填、MPフルバースト…レールガン!!あぁ…耐久値が1桁になっちった…こいつは修理するまで使えないか」


 俺の攻撃に続きミドリムシが水龍を、ストレクーガが魔銃の耐久値と引き換えにレールガンを放つ。

 水と雷の相乗効果で大ダメージを与えるが、ベアルも極大魔法を使い始める。


「これで滅びよ!深紅の轟炎クリムゾン・フレア!」


 俺達の足元に巨大な魔法陣が現れる。


「これはやばい!ベアルに総攻撃!マジックキャンセルさせろ!」


 魔法発動中に攻撃を受けると中断させることができるのだが、ブラックカーテンが邪魔をして攻撃を当てることが出来なかった。


「くそ!間に合わない!こんな所で死に戻りかよ!」

「ユーキえもん、諦めるのはまだちと早いぜ?俺に任せときな!魔獣化!」


 シウは妖狐の姿になると


「叢雲…俺たちを守ってくれ!スキル…友の守護!キュリア!お前はこの街を守れ!」

「はいなのです!聖都は私が護るのです!聖なる護り!」


 俺は装備で手に入れたスキル【友の守護】を使う。

 これは自身の周りのプレイヤー全員、1度だけ必ず攻撃を防ぐと言う優れたすきるである。しかし、1日に1度しか使えない。

 キュリアも見習いから卒業をし、戦乙女になったことによって覚えたスキル【聖なる護り】を使う。

 巨大な結界を張り全てのものを護る効果があるのだ。キュリアは聖都全域を護るようしている。その為、MPが枯渇したのだ。こちらも1日に1度のみだった。


 「燃え尽きろ!人間共よ!」


 魔法陣が紅く光り出すと同時に巨大な火球が現れ爆ぜる。

 すると全てを焼き尽くす様に炎が広がる。


 「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!これでこの街も消えたも同然よ!」



 「それはどうかな?氷檻雷轟」


 白磁色をしている狐が炎の中から現れ、ベアルを氷の檻に閉じ込める。すると檻の中で無数の雷を帯びた狐が現れベアルに噛み付く。雷狐は噛み付くとベアルに高圧電流を流し始める。


 「俺の全MPを使ってやる。そのまま凍てつけ…アブソリュートゼロ」


 氷の檻の中で感電しているベアルは俺の追撃を受け氷の像となってしまう。


 「氷は粉砕するのじゃ!魔猫拳!」

 「駄猫のはただの右ストレートなのです!穿け!岩砕迅槍!」

 『主と会わせてくれた事は感謝...でも...処す...時雨一閃』


 姫、キュリア、クロリアが氷像になったベアルに3人同時にアーツを打ち込み粉々にしてしまう。


 「綺麗にお掃除しないとね〜。黙示録の業火アポカリプスフレイム


 サクヤが魔力構築で造り上げた炎魔法で粉砕した氷を消していく。




『破壊の帝王 ベアルの討伐完了。見事聖都防衛です、おめでとうございます。王都防衛が終わり次第結果をお知らせします。』









「あれ?私…活躍してないでありんすよ…あぁ…また鱗が…乾いてきたのでございまする…」



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