第84話 聖都防衛⑥

 イベント開始当日



 俺は未だに魔力構築を覚えられずにスライムと共に遊び呆けていた。


「スラ吉さんや、この場所って意外と特殊な薬草とか生えてんだな。それにこの花ってなんだよ。スラ吉さんはこんなの食ってたの?」


 俺が見つけた花は


 鉄花 レア度8

 花弁が純鉄で出来ている花。


「これ食べ続けてたらメタルなスラ吉に進化するわけ?」


 スラ吉はなにも答えずに震えている。

 そんな馬鹿な事をしながらも魔法を使い続けている。


「イメージで魔法が変わるならゲームの仕組みが変わるんじゃね?そこの所はどーなってんだよ…攻撃魔法で試そうとしてるから悪いのか?俺が使える魔法なんて付加と水と氷炎に雷か…とりあえず水を作ってみるか…」


 クリエイトウォーターを使いながら考える俺。

 本来のクリエイトウォーターは水の玉が浮かび上がり水を作り出すのだが、水の玉のイメージから蛇口から出るように思い浮かべた時、水の玉が消え人差し指から水が出始めた。


「うぉ?!なんか見た目気持ち悪!でも出来ちまったよ…今までの俺の苦労はどうなんねん!でもスキルとして現れないってことはまだ未完成って事か。ここからさらにイメージを変えてみるか」


 指先から出ている水を鞭の様に出来ないかイメージしてみると水は止まり、1本の水の鞭が出来上がった。

 俺は水で出来ている鞭を振ってみると普通に使えた。


「Wow…ここまで出来るなんて…俺ってば天才?MPをとか威力をどうにかするって事じゃなく形を変えることからスタートするのが正解ルートなのか?わからんけど!」


 その後も鞭から剣に変え、剣から槍に変えたりと徐々に形を変えて行っていた。

 イメージにより形を変えることに慣れてきた俺は攻撃魔法でも挑戦することにしてみた。


「攻撃魔法はどうやって変えてみるか…形か?大きさか?とりあえずウォーターボールの大きさを変えてみる!」


 ウォーターボール使い大きさをまずは大きくするイメージすると、徐々に大きくなっていき、バレーボール程の大きさから倍ほどの大きさに変わり、MP消費も倍になった。


「あっ、出来たわ。大きくしたらMP消費が大きくなるのか…威力はどうなんだ?スラ吉さんよろしく!」


 スラ吉に大きくなったウォーターボールを投げつけると以前なら全くと言っていいほどダメージを与えられなかったのだが今回はダメージを与えられていた。

 その後も小さくして連射出来るようにしたりなど色々と試していた。

 MPが無くなり休憩をしていた時、時刻を確認しようとステータス画面を開いた俺は固まってしまった。

 メールもかなりの数が来ており、出るはずの無い冷や汗感じていた。


「……妹様がおこだぉ…これはやばい…イベント開始まで後1時間…それまでにスラ吉を消し炭にする!よし!スラ吉さん!消し炭になってくれぇぇぇ!!!」


 水魔法から氷炎魔法にシフトチェンジしてスラ吉をひたすら魔法で攻撃し続けた。

 イベント開始時間になった時、スラ吉を光に変えた瞬間だった。


『魔力構築を覚えました』


「よっしゃぁぁぁ!!覚えたぜぇぇ!!桜華!直ぐにここからだしてくれぇぇ!」

「そんなに急いでもいいことないぞ?」


 俺の背後に現れた桜華は3本に増えたシウの尻尾のうち1本を握った。


「あっ…あかんて!敏感なところを触ったらあかん!しかも増えたばかりやから危険!あっ…やめ…モフらないで…」

「無事に魔力構築も覚えて三尾に変われたね!んん?覚えたのは魔力構築だけじゃない?珍しいなぁ。まぁんな事よりシウちゃんの尻尾はとても気持ちいいからモフらせてもらうのだ!もふもふ〜」


 10分も桜華にモフられた俺は意気消沈していた。

 だがイベントの事が頭を過り復活した俺は桜華に直ぐに屋敷に戻すように頼んだ。

 屋敷に戻ってきた俺はキュリアと姫と合流をするのだが、俺の前に現れたのはキュリアと見たことの無い女性が居たのだ。


「あれ?キュリアさん…あの駄猫はどこにいったんだ?駄猫の代わりにそちらの女性がついてくるの?いきなりのメンバーチェンジかな?」

「主!何を言ってるのじゃ!妾なのじゃよ!」

「妾詐欺かな?新手のオレオレ詐欺が誕生したのかな?」

「マスター…信じられないかもですけど…あの駄猫なのです」

「うそだろ?!駄猫がこんな…こんな美少女に変わるなんてありえへん!確実に姫はロリロリな感じになると思ってたのに!まさかのキュリアよりスタイルいいなん「マスター?そこから先を言うとマスターの頭と体が離れることになるのですよ?」さーせん!!!」


 姫は俺と離れている間に人化を覚え、キュリアより成長して俺の目の前に現れた。


「姫の人化の事は後にして!聖都に直ぐ戻るぞ!イベント始まってら!」

「遅刻はマスターが悪いのです。さっさと妖狐の姿になって死ぬ気で走るのです!」

「妾は主の背中に乗るのじゃ!ちみっ子は飛んでいくのじゃ!」

「駄猫は元の姿に戻れやァァァ!なんで俺に乗ること前提なんだよ!」

「マスターは今日一日は私たちの言う事を聞くのです!遅刻した罰なのです!」


 成長したキュリアに言いくるめられた俺は渋々妖狐の姿になると直ぐに姫が乗ってきた。


「主の尻尾が増えてるのじゃ!後でこれはモフるしかないのじゃ」

「私もマスターの尻尾をモフるのです!これは確定なのです!」

「あーもう!好きにしてくれ!それよりさっさといくぞ!桜華!また後日くるからその時に今日までのお礼を言わせてもらう!」

「行っておいで。戻ってきた時に私もたっぷりとセクハr…モフらせてもらうからよろしくね〜」

「うん、聞かなかったことにするわ。んじゃいってくる!」


 俺達は聖都に向け全速力で駆け出した。

 獣人の街から出て静かなる森を走り抜け聖都まで全力で走ってきた俺だが聖都付近でMPが切れ人の姿に戻った。

 聖都に入ると街は静かで俺は違和感を感じていた。


「人が居なくね?!めっちゃ静かやん」

「街の人達が消えてるのです!神隠しなのです!!」

「ひぃ…怪奇現象は嫌いなのじゃぁぁぁ!!」

「あっ、姫の背後に目玉が…」

「主!いくらホラーが嫌いでもそんな冗談はダメなのじゃ!」

「いやいや、本当に目玉が浮いてるから。見てみろよ」


 姫はゆっくりと後ろを振り向くとそこには目玉型モンスターが浮いていた。


「ぎぃゃぁぁぁぁ!!!!」


 姫は叫びながらも渾身の右ストレートを目玉に打ち込んだ。

 姫の右ストレートは眼球に刺さり爆散し、光になって消えていった。


「うわぁ…なんか俺の目ん玉が痛く感じるのは気のせいか?素手で目ん玉殴るなんて鬼畜かよ…」

「駄猫の右手が汚いのです…変な汁がついてるのです…」

「目玉が浮いてるのじゃぁぁぁ!!いっぱい浮いてるのじゃぁぁぁ!!」


 聖都に溢れている目玉型モンスターを姫は発狂しながら殲滅していった。


「ある意味暴走だな、これ」

「私の出番が無くなるのです…駄猫が暴れてるから私の獲物が…」

「キュリアも姫と一緒に目玉潰ししてくるか?」


 俺とキュリアが話しながら歩いていると教会の上に突如として魔法陣が浮かび上がり、俺は嫌な予感がした。


「キュリア!姫!走るぞ!あの魔法陣はやばい気がする!」

「了解なのです!私は飛んでいくのです!」


 キュリアは光の翼を使い飛んでいく。


「姫!いくぞ!」

「らじゃ!なのじゃ!」


 走って教会に来たが入口は閉まっており中に入れなかった。


「なんでしまってんねん!どうするよ!」

「主、周りの建物の屋根からならいけるのじゃ!」

「ナイス姫!屋根から教会に侵入じゃ!」


 教会の近くにある建物の屋根に上がり、姫は人化を解き元に姿に戻ると


(主、背中に乗るのじゃ!ここから教会に飛ぶのじゃ!)


 猫の姿に戻った姫に乗ると、姫は駆け出し教会の周りにある塀を飛び越え、無事に教会に入る事が出来た。

 再び姫は人の姿になると


「また魔法陣が現れたのじゃ!主急ぐのじゃ!」

「言われなくても!」


 俺は魔法陣が現れた場所まで行くとユーキング達の姿が目に入った。

 だが、ユーキング達の前には知らない人物が立っており俺はすぐ様マップを確認すると赤いマーカーだった。


「あの二人は敵!狙いはあの2人じゃ!!俺の新しい氷炎魔法を食らえ!」




 謎の男がユーキング達に


「もう遅い!常世の闇に消えるが良い!イービルス「させねぇぜ!焔孤爆撃隊!突撃ぃぃぃぃ!!!」」


 炎の狐が5匹現れ男の悪魔目掛けて走っていき、近くまで来ると突然炎孤達は爆発していった。


「くっ!誰だ私の邪魔をする奴は!」


 男は炎孤達が来た方向を向く。


「やっと来てやったぜ!俺!さんじ「妾!参上!なのじゃぁぁぁぁ!!!!」」

「俺が言いたかったのにぃぃぃぃ!!!駄猫が俺のセリフ取ってんじゃねぇよぉぉぉ!!!」


 そこに立っていたのは

 頭には猫のような耳があり、尻には尻尾があり…

 Tシャツ姿にホットパンツを履いている1人の女性だった。


 遅れて来た俺は決め台詞を言おうとしたのだが姫に何故かいい所を取られた

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