2.別の世界に転生して5歳になった僕

「明日はいよいよ、アーベルが力を授かる日だな」


「そうね。神様からの大切な贈り物。アーベルはどんな力を授かるのかしら」


「生活魔法はもちろんだが、他にもたくさんの力があるからな」


「アーベルはどんな力を頂きたい?」


「ぼくは、パパとママの、おてつだいできるまほうがいい」


「お、本当か?」


「あらあら、それはとても嬉しいわね。でもお手伝いは力を頂かなくてもお手伝いできるものよ。他に使いたい力はないの?」


「ん~、ない!」


「アーベル!! あそぼ!!」


「あっ! カロリーナだ! ママ、あそんできてい?」


「ええ、お昼には1度帰ってきてね」


「うん!」


 僕は玄関に向かう。と、後ろからパパ達の話し声が聞こえてきて。


「まさか頂きたい力が、私達の手伝いができる力だなんて」


「はははっ! あいつはいつも、他の子供達が絵本に書いてあるような力に憧れる中、君の畑仕事や、俺が狩ってきて解体した、魔獣の片付けばかり手伝ってくれているが。そのままって感じの答えだったな!」


「もう、笑い事じゃないのよ。明日の儀式で将来が決まるんだから」


「まぁ、どんな力を授かっても良いじゃないか。もしもの時は、それこそ俺の手伝いや君の手伝いをすれば。そうして将来は畑仕事をそのまましても良いし、俺の仕事の手伝いの延長上、素材を売る仕事に就いたって良いんだ」


「それはそうだけど」


「それに、どんな力を授かったって、俺達の息子には変わらないんだ。将来あの子が困らないように、力が弱くとも強くとも、私達が導いてやれば良い」


「ふふ、そうね、私達が導けば良いのよね。そうだは、もしもの時は私の薬学を教えても良いわよね。高位の薬学は無理でも、最低限できれば、生活には困らないはず」


「あ~、そ、そうだな」


 パパ、オーランドと、ママ、アシュリーの話しを嬉しく思う僕。でもパパ達の話しを聞いていると、また僕を呼ぶ声が。急いで玄関を出れば腰に手を当てて、ドンッ!! とかまえている、僕の幼馴染のカロリーナが立っていた。


「おはよ」


「アーベル、おそい!! はやくいきましょ!!」


 僕の挨拶は無視され、手を掴まれてグイグイ引っ張られる僕。そうしてカロリーナに連れて行かれたのは、カロリーナの家の裏。小さな畑があるんだけど、今日はそこでおままごとをするらしい。


 カロリーナの両親に挨拶をして、もう用意されていたおままごとの道具の前に座る。地球での82年の人生を終えた僕に、おままごとって感じだけれど、まぁ、その辺は。


 もしも5歳の体で、大人がやるような事、話すような事をみんなの前でやれば、僕は絶対におかしな子供だ、って思われるだろう? それで気持ち悪いって嫌われて、両親達にも嫌われたら?


 せっかく出会えた新しい家族に、そして周りの人達に、そんな風の思われるのは嫌だから。僕はなるべく周りに合わせることにしている。

 まぁ、そのうち、もう少し大人になれば、体が追いついて変に思われないだろうから。それまでの辛抱だ。

 

「きょうは、あたしのおとうとね」


「おにいちゃんじゃない?」


「だって、このまえのアーベルのおにいちゃん、あんまりだったもん。またこんど。きょうはおとうと。アーベル、おとうとはじょうず」


 う~ん……。どうも僕のお兄ちゃんは、カロリーナにはお気に召さなかったみたいだ。


 同じ歳のカロリーナ。いつも僕のことを思ってくれる優しい僕の友達だ。だけど僕のことを連れ回して、無理難題も言ってくる。

 それからどうも、僕のことを自分よりも弱い存在と認識しているらしく。いつも僕は弟のような扱いをされる。だから今も弟が上手だと。その辺はちょっと納得がいかない。


 そうしてすぐに始まったおままごと。おままごとをするとよく思い出すのは、僕の過去の子供達のことだ。妹のおままごとに、兄がよく付き合わされていたなと。今の僕のような扱いで。


 過去の子供達……。そう、過去を後悔しながら、人生を終えた地球での僕は、何とあれから本当に生まれ変わり、アーベルとしての生を受けていた。まさか本当に生まれ変われるとは。しかも前世の記憶を持ったまま。


 初めてこの世界で意識がハッキリとした時、それはそれは驚いた。会ったことのない人達が目の前にいて、とても嬉しいそうに笑いながら、知らない言葉を話していたんだ。

 そして僕は驚きながらも周りを確認しようとしたけど、何故か頭を動かすことができず。そのままの姿勢で見えたのは、見たことのない天井で。


 そして何とか思い出したのは、自分が家で倒れたことだった。意識を失い死んだと思ったけど、すぐに発見され病院に運ばれた? そうして目を覚ました僕に、医師や看護師が、喜んでいるのかと。そう考えた僕。


 まぁ、医者や看護師にしてはおかしな格好だとは思ったけど。目の前にいた人達は白衣を着ておらず、何と言うか老後に読んだり映画で見た、ファンタジーで出てくるような洋服を着ていたから。


 だけどとりあえずは、今の状況を聞かないとと思って。僕はその人達に声をかけた。しかし僕から発せられた言葉は、『あぶぅ』とか『ばぶぅ』だった。

 その事にまたまた慌てた僕。そうすると何故か勝手に涙が溢れてきて。その時の泣き声が、また赤ん坊そのもので。気づけば私は意識を手放していた。


 それから現場を把握するのは大変だったけど、どうにか自分に起こったことを受け入れることができた。そして受け入れることができると、死んだ時の誓いを思い出し、今度こそ間違えずに、本当の意味で家族のために生きると強く誓った。


 僕のこの世界での名前はアーベル。少し前に5歳になったばかりだ。そしてパパの名前がセオドリック。ママの名前がアシュリー。何故パパとママと言うか。


 過去の自分はもちろん、自分の両親を父さん、母さんと言っていた。だけど5歳でそれじゃあ。それにパパ達は自分のことをパパ、ママ呼びして欲しいみたいだからね。だからパパとママと呼んでいる。

 まぁ、高校生くらいの歳になったら、父さん母さんに変えようとは思っているけど。それくらいの歳でパパ、ママじゃあね。


 そしてこの世界と地球との違いだけど、この世界は地球とは全く違う世界だった。

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