残骸国の歩き方
はるむらさき
はじまり
『残骸国 ガラクタ』
国そのものが大きな建物で構成されている国、それは様々な文化の寄せ集め、日に日に新しく増築され続けており、常に領土を拡大し続けている成長し続ける国、発展の象徴とされ、技術の最先端である。
様々な人種、経歴を持つ人々が集う場所、それ故に独自に発展したルールが存在しており、同じように食文化も発達している。
この国は来るもの拒まず、入ったら出られない穴蔵である。
『世界を歩く』より抜粋
「だってさ、この国は穴蔵なんだって」
『それにしては華やかな穴蔵だなぁ』
腰から刀を下げた少女が雑誌を読みながら独り言をこぼしている、周りの人々はその光景を不思議とは思っていないようだ。
「出ることができないじゃなくて、出る必要がないが正しい話なのにね」
『違いねぇ、この国はなんでも手に入るからな』
「そうだね、富も名声も命も、対価さえあれば全部が手に入る」
二人分の声を発しながら読んでいた雑誌をゴミ箱に捨てる、と同時に
「きゃあああ!ひったくりよぉ!」
悲鳴と共に前から黒服で覆面を被った人が走ってきた、手には女物の鞄が握られていた。
「あら」
咄嗟のことだったので思わず躱してしまった。
「誰か捕まえて!」
続けるように先程悲鳴をあげた女性が叫んだ。
「仕方ないなぁ」
走り去って行った人を追いかけるように走った。
残骸国ガラクタ、国そのものがひとつの建物で、様々な文化の集合体、道路のようになっているのは下の建物の屋根で、上を見上げると空は見えない、そんな場所だから治安は悪く、全ては弱肉強食で成り立っていた。
「悪いことしたらダメだよお兄さん」
入り組んだ路地を抜け袋小路に追い込んだひったくり犯を叱るように声をかける。
「うるせぇ!お前には関係ないだろう!」
「関係ないけど、見て見ぬふりはできないでしょう?」
「正義の味方気取りか!」
「正義の味方なんてそんなそんな、私はせいぜい悪の敵くらいにしかなれないよ、痛い目を見る前に盗ったもの返してよ、素直に返してくれたら何もしないからさ」
「うるせぇ!信じられるか!お前ら!出てこい!」
男の号令でぞろぞろと人が集まってきた。
「やっぱり、貴方達最近ここら辺でよく聞く泥棒グループでしょ」
「だったらどうした!今度はお前が逃げれねぇぞ!野郎ども!やっちまえ!殺すなよ!最初に捕まえた奴には美味しい思いさせてやるよ!」
「典型的なクズだねぇ、やろう」
『あいよ、殺さずってところか?』
もう一人の声がした、それは携えている刀から発せられたものだった
「喋る刀……まさかお前」
「毎度お世話になっております、利便事屋ナラシでございます、以後お見知り置きを」
落雷のような轟音が轟いた。
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