君と希望の花園で。

letam

第1話 『希望の花園』

「う…うーん…」朝、目が覚めるとそこは、花園だった。

「おいおい…一体どうなってんだこりゃ…」俺は寝ていたベッドから体を起こし、ぼやいた。

俺は辺りを注意深く見回した。

周りにある他のベッドから推測するに、おそらく他の人達もここに連れて来られたのだろう。

前を向くと、向こう側に蛍が飛んでいた。なにかおかしい。

「蛍…?今は10月だぞ…?」俺は頭の中で思っていた疑問を呟いた。そこでふと、後ろを振り向いてみた。そこには、何もなかった。さっきまで自分が寝ていたはずのベッドも。「…はぁ…前に進むしか無いって事か…」そう言うと俺は、歩き出した。

蛍のいる場所まではそう遠くもなかった。いや、何故か、少し歩いたら蛍のいる場所まで着いていたのだ。「なんでだ…?」俺は疑問に思いつつも蛍が居た場所にあった石碑を読む。

「希望の…花園…?なんだそりゃ…?」すると、いつの間にか周りの景色が変わっていた。前方から人が近づいて来ている。「あの…誰ですか?」すると相手は答えた。

「あぁ、突然すまないね。私はこういう者だ。」その男は胸ポケットから名刺を取り出して、それを俺に渡した。

冥刊めいかん新聞社 記者 羽鳥駿一はとりしゅんいち

名刺にはそう書かれていた。

「冥刊新聞社って…」俺が言いかけたとき、彼は口元に人差し指を立て静かに、というマークを出してきた。

「君が知っての通り、冥刊新聞社はもはや倒産しかけの零細企業だ。最近、余応街あまおうがいでの不審死が多くてね。その調査の途中で、こんなことになってしまったんだ。」彼は周囲を警戒しながら私に尋ねた。

「そういえば、君の名前をまだ聞いていなかったね。名前を教えてくれるかい?」

春山朔大はるやまさくたです。よろしくお願いします。」

「春山…どっかで聞いたことがある名前だなぁ…」

「そうなんですか?」

「あぁ。確かこの辺に…」彼は手元のカバンからなにかを取り出そうとした。

それと同時、少女の声が頭の中に響く。

「あー、あー。聞こえてるかしら?」

俺は、頭の中の声に問う。

「誰なんだ。お前は。」

すると頭の中の声は嘲笑うように返答した。

「私が誰か?そんなのを知って何になるの?まぁ、名前くらいは教えてあげるわ。」

すると、また周りの景色が変わり、気がつくと人が10〜20人ほどいる少し大きめの劇場のような場所に居た。

そこのステージの真ん中辺りに小柄なブロンズカラーの髪色の少女が現れた。そして、口を開いた。

「初めまして、かしら?貴方たちにここに来てもらったのは他でもない。面白いゲームを始めるためよ。それじゃあルール説明から…」するとそこに一人の男が口を挟む。

「おい!いきなり連れてきて何だってんだ!俺をこのわけわからねぇクソみてぇな空間から出せ!」

すると、辺りに霧が立ち込めはじめた。

そして、霧が晴れると、その男は球状になっていた。

するとそこで悲鳴が飛び交う。しかしながら、彼女は特に気にしていないようだ。彼女は、球状になった『』を踏み潰し、説明を再開した。

「引き続き、ルールの説明をさせてもらうわ。ルールは嘘をつき続ける事。簡単でしょ?そしてプレイヤーひとりひとりには、特殊能力を1つ与えるわ。能力は完全ランダムで、重複などはないわ。」

彼女は淡々と説明する。

「このルールが適用されるのは、私が『ゲームスタート』と宣言した後から、『終了』と宣言するまでよ。」

すると彼女は俺達に質問した。

「さて、ここまでで質問のある人は居る?」

そして俺は、彼女に問いかけた。

「すまない。まだ、名前を聞いていないんだが…」

彼女は答えた。

「私の名前?そうね…ストレアとでも呼んで。…こんなことで時間を食わないで。」

彼女は頬を膨らませ、怒っていた。

そして彼女は、もう一度問いかける。

「もう一度聞くけど、質問のある人は居る?」

誰も答えなかった。

「分かったわ。それじゃあ早速始めさせて頂くわね。」

そして彼女は宣言した。

『ゲームスタート』と―

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