夢の途中

犬時保志

第1話 プロローグ

 何時だったか旅の途中の分岐点、茜色に染まったあの坂道を登ったなら何が在ったのだろう何が待って居ただろう、頂上から見た景色はどんなだったろう?


 ウッド級、アイアン級、カッパー級と順調に昇級し、シルバー級に手が届いて居た、冒険者の頂点ミスリル級を夢見ていたあの頃、あのまま夢を追い続けて居たなら私はどうなっていただろう?


 商人に転向そこそこ成功し、守る物が多くなり自由に身動き出来んようになった・・・私は今幸せなのか?多くの子や孫それに曾孫に看取られ・・・何を思い描いてこうなったのか・・・「今は、全てが懐かしい・・・」


 いや!まったく懐かしく無い!!全てに悔いが残って居るだけだ!!

 命が尽きようとしている今、出来る事ならやり直したい!!

「人生が二度有れば・・・(神よ!いや!!この際悪魔であっても良い!我に二度目の人生を、あ・た・え・た・ま・え・・・)」



『戦う輸送隊』の創始者インノケンティ・スモクトウノフ通称インノ・ウノフが今静かに息を引き取った、凶年105歳の大往生だった。










(・・・おや?妙に身体が軽い?)

 視線の先に見える、朝焼け空が眩しい。

 今は野営状態の様だ、視線を身体に向けると硬質革鎧こうしつかわよろいが目に入った。

いまわの夢か・・・ん?」

 身動きしたせいで、首に掛けた冒険者タグが革鎧に触れ「カシャン」と鳴った。

「やはり夢か・・・」

 二度見三度見した冒険者タグは、ウノフが手に入れる事が出来なかったシルバーに輝いていた。

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