第47話 4人の劣等召喚者たち2 城からの逃走

「大漁だぜ!できる限り詰め込んできたわ」


 肉丸はドサドサとマジックバッグから武器やら防具やらを取り出した。


「よし、鑑定してから武器とか防具を身につけて」


「おお、じゃあ鑑定するぞ……とは言うものの、攻撃力プラス30とか防御力プラス38とか結構すごいんだろうか」


「王城の所有物だからな。やっぱ、国宝クラス?」


「うーん、実感できんが。ま、いっか。オレは剣とこのプレートアーマー……いかん、小さすぎんだろ」


「アホか。肉丸が太りすぎてんだろ」


「この腕輪ってなんだろう?」


「南足、こっちも鑑定してくれよ」


「よしよし……凄いな、隠蔽の魔道具とか防御の魔道具とかいろいろあるぞ」


「隠蔽の魔道具。全員分あるじゃん。肉丸、優秀だな」


「当たり前だわ。というか、手当たりしだいに詰め込んだだけだけどな。とにかく、みんなはめてみてよ」


「……やばいな。おまえらが消えたぞ」


「俺もだ。どうすんだ?」


「ああ、ちょっと待て。かすかにおまえらが見えるぞ」


「なるほど。慣れが必要ってわけか」


「腕輪をしてないやつからは俺達は見えないよな?」


「多分な。ちょっと馬越、チャレンジしてみろよ。牢番の前を腕輪を付けて歩いて、気づかれそうになったら隠蔽スキルで逃げてこいよ」


「おし。ドキドキだな」

 

 ◇


「間抜けの牢番が居眠りしてたんで、軽く起こしてやったよ。キョロキョロあたり見渡してたが、ボクには全く気づかなかった」


「おし、ずらかるぞ。下水道があるからそっから行くぞ」


「「「おー」」」


 ◇


「うげっ、臭すぎる」


「肉丸、おまえの屁と同じぐらいだな」


「うるせーよ、馬越。おまえには負けるよ」


「アホなこと言ってんなよ。真っ暗だが大丈夫か?」


「俺、色々魔法が使えるみたいだ。ファイア!」


「「「え」」」


雲母きらら、おまえ大農民だったよな?」


「よくわからんが、農業に使える魔法が発現するみたいだ。火・水・土・風魔法の4つ」


「は?ずるいぞ。魔法が使えるなんて」


「全男子の憧れ、魔法の使い手。それが雲母、おまえか。羨ましすぎるぞ」


「でもさ、俺達ってカス職業って言われたけど、案外チートな存在じゃね?」


「だよな。勇者とかの女連中には負けるが、僕たちも案外イケてるよな」


「だな。ちょっと気持ちが上がってきたな」


「おし、とにかくあたりが見えるようになったぞ」



「わ、鉄格子で区切られてる」


「よし、これは僕の風魔法風刃で」『カキン!』


「雲母、すっごい切れ味だな」


「ちょっと待て。鉄格子の先に罠が仕掛けてある」


「南足、罠が見えるのか。さすが、鑑定スキル」


「よし、解除するのはシーフ技術でだな」


 4人は闇夜の中、するすると下水道を抜け、

 夜の街に消えていったのである。


 ◇


「ううう、腹減った」


「なんで、食い物持ってこなかったんだよ」


「昨夜は夕飯たくさん食べたからな。みんなゲップ状態で食い物に頭が回らなかったんだよ」


「あんな不味い飯、よく食えたよな」


「うむ。空きっ腹には変えられん」


「金はあるぞ」


「俺達、誰も金銭感覚がないぞ。市場や食堂で金出すときに変に思われるだろうが」


「というか、まだどこも開いてねーだろ。早朝だからな。早く街の外に出たいんだが」


「駄目だ。その前になんとか食い物を調達しないと。外出たら木の皮とか食べるはめになるぞ」


「仕方ない。どこかの店にこっそり忍び込んで食い物を持ってこよう」


「犯罪じゃないか」


「金貨とか宝石とか置いとけばいいだろ。よくわからんが、金貨1枚が1万円以下ってことはないだろ?」


 金貨は約10万円、大銀貨1万円、銀貨は千円に相当した。


「金貨10枚も置いておけば問題ないだろ。むしろ、店主も大喜びのはずさ」

 

 実際、店主は大喜びだった。


 ◇


「くっそ。なんだよ、この食い物」


「肉、臭すぎんだろ。肉丸と南足、なんで腐った肉もってくるんだよ」


「すまん、大慌てだったからな」


「いや、二人を責められんぞ。昨夜の肉思い出してみろ。ちょっと臭かったろ?」


「ああ」


「王国では肉は干し肉か塩肉、いずれも半分腐ってるらしいって誰かが言ってたぞ」


「マジか」


「城であれだけ臭いんだ。庶民のレベルじゃもっと臭くてもおかしくない」


「えー、これが普通の肉レベルっていうのか。俺、ムリ」


「僕も」「ボクも」「オレも」



「あとさ、このパン。色が黒いし。カチンカチンだよね」


「歯が欠けそう」


「このパンで人を殴ったら結構な打撃を与えられるぞ」


「どうすんだよ」


 …………


「ダンジ、あの4人組を見ろ」


 俺とフレイヤの二人は王都目指して歩いていた。というよりは、時速30km程度で走っていた。森のダンジョンから二百km程度の距離を午前中かけて走破している途中であった。


「なんだか、やつら妙に存在が薄いな」


「あれは隠蔽スキルを使っておるのじゃ」


「ほう。しかも、黒目黒髪。ひょっとしたら召喚者か?」


「可能性はあるの」

 


「なあ、そこのば……若者たち」


 俺は隠蔽スキルを解いて彼らに話しかけた。


「?!」


「いや、そんなにキョドるなよ。俺は怪しいもんじゃねえ」


「どちら様ですか」


「おまえら、召喚者じゃないか?いや、俺も召喚者なんだが」


「え、そうです。あ、黒目黒髪。日本の方ですか?」


「ああ。森野弾児っていうんだが」


「天の助けが」


 全員がひざまずいて俺を拝みはじめた。


「よせよ、顔をあげろよ」


「俺達、王都から逃げてきたんです」


 彼らのここまでの経緯を簡単に聞くことにする。


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