第26話 堕ちた女神様はアップルパイがお好き
「【フレイヤ】、だんだん存在で名前を呼ぶことに慣れてきたぞ」
「そうか」
「フレイヤ。どうだ、自然だろ」
「おお、ええ感じじゃの。じゃあ、ダンジ。どうじゃ?」
「ああ、聞く方も不自然な感じがなくなってきたな」
「ダンジもだんだん森のダンジョンに馴染んできたということじゃの」
「うーむ、喜んでいいのかどうかわからんが、とにかくだ。今考えなくちゃいかんのは、省人化或いは効率化だ」
「うむ。手順を並べて考えてみるといいかもなのじゃ。注文をさばくにはだいたい次の通りじゃろ?」
お水を出す
カトラリーを並べる
注文を受ける
注文した料理を並べる
食べ終わった料理皿等を下げる
皿等を洗う
対価をもらう
「注文取りと対価をもらうのは魔法とかではちょっと難しいじゃろ」
「うん、案はあるんだが現状では難しそうだな」
「その2つ以外は魔法なり魔道具なりが使用できそうではないか?」
確かにフレイヤの言うとおりだ。
お水は各テーブルで自動給水
カトラリーもテーブルにまとめて置いておく
注文した料理はテーブルに取り出し口を設け、
そこからお客様自らが料理を取り出す
食べ終わった料理皿等は魔法で一気に流しへ
食器洗器を魔道具で
注文取りも魔道具を作れるかもしれない。
回転すしとかにある注文システムを真似て。
以上、検討した結果を急いで実現していった。
そして、翌日のお昼までには間に合わせた。
「だいぶ楽になったとは思うのじゃが、どっちにしても人は必要じゃ。ちょっと森で探してくるので、妾は午後からちょっと抜けるのじゃ」
◇
「ダンジ、連れてきたで」
フレイヤがえらく美人な女性を連れてきた。
髪は青銀色とでもいうのか?
青くキラキラ光っている。
目はブルーサファイア色。
黒目がちで大きな目、
ノーブルな鼻
上品そうな口元。
それらを小さめの卵型の顔が包んでいる。
全体的にスリムで手足が細長い。
かといってギスギスではなく、
滑らかな曲線を描いている。
ちょっと見たことのない美形だ。
美しすぎて直視するのに慣れが必要だ。
「エカテリーナじゃ。愛称はリーナ。リーナ、こちらは店主のダンジじゃ」
「「はじめまして」」
「あらかじめ、ゆーとく。リーナはもともと天界におっての」
「天界?」
「そうじゃ。女神をやっておったんじゃ。まあ、やんごとなきお方やったんやが」
「女神?やんごとなきなんてもんじゃねーぞ」
「うむ。しかしの、ちょっと天界でいろいろあっての、地上にくることになったのじゃ」
「いろいろ?」
「まあ、そこはつっこんでやるななのじゃ」
「ああ、察し(つまりは、堕女神ってやつか?)」
「(そうじゃ。で、今は野良女神なのじゃ)」
「(大丈夫なのか?)」
「(うーむ、少し癖があるやもしれぬ。が、悪さをするようなタイプではないぞ)」
「リーナさん、どうですか、この店で働いて頂けますか?時間は夕方から夜の10時ぐらいまで。賄い付きでお給金は希望があればお伺いしますが」
「リーナで結構ですのよ。勿論、働きたいですわ。お給金も特段必要ありません。ただ、条件は料理の質。試食させていただけませんこと?」
「わかりました。まだそんなに用意していないのですが、まずは焼き肉とドリンクを提供するつもりです。少しずつ肉を焼いていきますので食べてください。ドリンクはご自由に注文してください」
「では、りんごジュースをいただきますわ」
「はい、焼き肉の盛り合わせおまたせ。これらの調味料で食べてみてくださいね。あと、りんごジュースもどうぞ」
「ありがとうございます。では、いただきます……なんですの!このお肉!香りもお味も喉越しも素晴らしいではありませんか!」
「お口にあいましたか。りんごジュースも飲んでみてください」
「ゴクゴク……ああ、りんごジュースも爽やかで美味ですわ。それに質の高さが光りますわ。磨き抜かれている感じがしますわ」
「ドリンクはいろいろ種類があるから、遠慮なく頼むのじゃ。酒なんかどうじゃ?」
「ああ!お酒を飲みたいのですが!
「戒めですか」
「実は……私、お酒を頂くと無意識に魅了魔法を放ってしまうみたいですの」
「魅了魔法?」
「はい。それで、知らないうちに多数の殿方を巻き込んでしまいまして……」
「騒ぎになったと?」
「ええ。それで、主神様からちょっと地上で修行してこいと追い出されまして……」
いや、そんな問題のある女神様を天界から追い出してもらいたくないんだけど。ほうぼうで問題しか起こさない未来が見えるぞ。
「わかりました。じゃあ、お酒はパス、と。僕としては昼はカフェ、夜は居酒屋も兼用するような形にしたいと思ってはいるのですが」
「カフェはわかりますが居酒屋とはなんですの?」
「天界にはありませんか。居酒屋はお酒を飲むところですね」
「ああ、お酒ですか!ちょっと今はお酒から離れたいので……と申しますのは、私、魅了魔法の件もありますが、お酒きらいではないのですの」
「(けっこうなノンべ、と。気をつけなきゃ)わかりました。今は夜の焼き肉で頑張っていただければ」
「あと、カフェといいますと」
「お昼にですね、ソフトドリンクとスィーツを充実させようかと」
「まあ!スィーツ!なんて甘美な響きですこと!お一つ頂きたいですわ」
「では、アップルパイを」
「あらまあ!このアップルパイ、私のハートを狙い撃ちしておりますわ!なんて、愛おしいパイなんでしょう。わかりました。私、ドリンクとスィーツの店の店長として精一杯働かせて頂きますわ」
「いや、焼き肉屋のお手伝いをしてもらいたいんだけど」
「問題ありませんのよ!お昼はスィーツの店、夕方から焼き肉の店で働きますわ!」
ということで、なんだか、ハイテンションな女神様だった。カフェはまだ準備段階であるが、夜の部で落ち着いたらカフェもオープンですることとなった。
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