第2話 ひき肉とジャガイモのオムレツ取られた 店ごと森のダンジョンに転移した2
「火魔法は究極調理のスキルの一つじゃ。どうじゃ。納得したか?早くここを開けよ。腹が減った」
俺の店の周りは鬱蒼とした森。
ステータスオーブン。
渡り人。
火魔法。
俺は混乱の極みだ。
「カチャ。ガラガラ」
俺は扉とシャッターを開けた。
どうなってるんだ。
早く説明しろ。
「うわっ!」
「おはようなのじゃ」
眼の前にというか、真下にいたのは白猫だった。
オドアイの黄色と青色の目がこっちを見ている。
こいつがしゃべっているのか?
「おお、いい匂いがするの。じゃあ、頂きますなのじゃ」
猫は遠慮もなくテーブルの上にのっかった。
そして、あっという間に俺の朝飯をくいやがった。
「おい!」
「うーむ、すこぶる美味であるがちょっと量が物足りんの。もっとくれなのじゃ」
うーん、ずうずうしさにちょっと負けた。
美味いと言ってくれたのは単純に嬉しいからな。
冷蔵庫からブルーチーズを出して数切れ与える。
「ふむふむ。まあまあのチーズじゃの。少し香りが不足しておるが」
おまえはおフランス帰りか?
「なんでもいいが、ちょっとこの状態を説明しろ」
俺は猫がしゃべることを受け入れつつあった。
そもそも、状況がおかしい。
猫はこう説明する。俺は日本から店ごと転移してきた。ここは森に見えるがダンジョンである。平面ダンジョンで第10層。職業は俺が得意なジャンルを表す。そしてスキルは与えられたスキル。
「大調理人とか究極調理とかそんなにいいのか?」
「調理に関するあらゆるスキルをお主は発現する可能性があるのじゃ。ちなみに、4属性魔法は確実じゃの」
「4属性?」
「火・水・土・風じゃ。いずれも調理に必要じゃろ?それからな、間違いなく【包丁】スキルが発現しておるはず。肉か魚を
俺は熟成させておいた魚を取り出した。
「包丁を構えて【解体】と唱えて捌いてみるのじゃ」
「【解体】うわっ!」
解体と唱えると、魚の内部構造が浮き上がった。そして、その直後、あっという間に魚が柵状態になっている。
「生の魚ならの、血抜きもパーフェクトのはずじゃ」
なんじゃこりゃあ。
松田優作どころじゃねえぞ。
こんな技、トップの和食調理人にだって
できんぞ。
「待て。俺はなんでここに転移してきたんだ?」
「知らん。神の気まぐれかなんかじゃろ」
「神の気まぐれだと?」
今日は大事な店のオープン日なんだぞ。親戚、友人、SNS、いろんなところに告知してスタッフも一人採用して。どうすんだよ。
「まあ、深く考えるな。それよりも、お主はここでどう暮らしていくのか考えたほうがええじゃろ」
「暮らしていくって……どうすりゃいいんだよ」
「食堂に決まっておろう。今すぐにでも開店できるではないか」
「こんなところでか?周りは鬱蒼とした森の中でか?客はいるのか?」
「森は
「は?」
「まあ、見ておれ」
猫は俺の裾を引っ張って、外に出る。
そして、キランと瞳を光らせたかと思うと、
「トルネード!」
瞬時に竜巻が!そして、周りの木々を根こそぎ引きちぎり、吹き飛ばしてしまった。
「どうじゃ。見晴らしが良くなったじゃろ?」
「……」
アゴがはずれるとはこのことだ。
「そんな凄い技でもないぞ?お主もしばらく修行したらできる程度の技じゃ」
「まさか?」
「お主の大調理人・究極調理な。職業・スキルの中でもS級なんじゃぞ。この世界の最強の一角じゃ」
「調理人なんてたくさんいるだろ」
「料理人はたくさんおる。が、調理人はめったにおらんのじゃ。さらに大調理人は調理人の頂点。無論、大調理人>調理人>>>料理人じゃ。しかも、スキルが究極調理。例えていうと、剣聖+大魔導師+大料理人じゃな」
「なんだ、チートすぎて理解できんぞ」
「でな、
「は?」
「特別じゃ。お主の料理は美味いからの。さあ、昼飯が楽しみじゃ」
「なんでだよ」
「お主も不思議なことをいうの。ここは森の中。結構深いところじゃ。凶暴な魔物がたくさんおるというのに店は無防備。お主、どう防衛するつもりじゃ?将来性はともかく、今の力じゃと昼頃にはお主は魔物の腹の中じゃぞ?」
「魔物って、ゴブリンとか?」
「あれはただのアホじゃ。じゃなくて、ヘルハウンドとかだと集団で襲ってくるの。グレートボアとかグレイベアとかも腹すかしておる」
ヘルハウンドとか。
俺でも知ってる。
凶暴な犬の魔物だ。
「グルル」
などと言っていたら、本当に来た!
黒い犬?狼?
でかいのが10体ほどいるぞ!
「ブラックハウンド(黒犬)の集団じゃの。さあ、どうする?お主、一人でやっつけるか?」
俺は顔面真っ青だ。
「じゃろ?まあ、少し待て」
猫はそういうと、右前足を掲げた。
「ファイアストーム!」
業火が猫の肉球から飛び出した。
「「「ギャイン!」」」
あっという間に黒い犬は火につつまれた。
そして瞬時に黒いカスとなって霧散した。
「どうじゃ、上手いもんじゃろ。森の中ではの、火魔法は危険なんじゃ。森に火が移ると大変じゃからの。精密なコントロールが必要なんじゃ」
「うんうんうん」
ちょっとちびったかもしれん。
俺は高速でうなづくしかなかった。
突然、この世界に転移してきた俺。
今まさに俺は死に直面した。
それを考えれば、この猫は随分と親切だ。
「妾が以前、渡り人にあった話はしたの?随分とお世話になったでの。その時の恩を同じ渡り人に少しは返そうかと思うのじゃ」
前の渡り人。
何をしたのだろう。
「それはの、禁則事項じゃ」
なぜか話せないらしい。でも、右も左もわからないこの世界で、猫の助けが有り難いのは確かだ。
というわけで不思議な猫とのタッグが瞬速の決断できまったのであった。
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