第75話 運命の出会い
「まじで原因わからんなー」
野田はアジフライにソースをかけながら言った。
「過去にもこんなことあった気がするなぁ」
翔太は筑前煮を食べながら記憶を探っている。
ここはアストラルテレコムの社員食堂だ。
翔太と野田が担当しているシステムのサーバーが、カーネルパニック(内部の致命的なエラーを検出してOSが再起動する現象)を起こすトラブルを抱えていた。
野田は皆目検討もつかない様子だったが、翔太は謎の既視感があった。
午後からは、アストラルテレコムの開発チームに加え、サーバーを提供しているベンダー『デルタファイブ』が参加するミーティングで、今後の対応などが話し合われる予定だ。
「まー、俺らじゃわからんし、デルタの報告を待つしかないな」
野田はあっけらかんと言った。
デルタはデルタファイブの略称である。
現状では、デルタファイブ側がコアダンプ(カーネルパニック時のメモリ内容)を解析しており、ミーティングではその報告がされる予定だ。
***
(あれ? 白鳥?)
会議室に着いた翔太は、見知った人物がいることに気づいた。
(あれ……ということは……もしかして……?)
翔太はこれまでの人生で全く経験がなく、言語化できないような不気味な感覚に襲われた。
「――えっ!!!!!!!!!!!!!!!」
その人物を見た翔太は人生最大の衝撃を受けると共に、強烈な吐き気が襲ってきた。
「おい、柊! 顔真っ青だぞ! 大丈夫か?」
デルタファイブの社員と名刺交換をしていた野田は、心配そうに翔太に声をかけた。
「ご、ごめん……トイレに行ってくる」
「あ、あぁ」
翔太は足元をふらつかせながら、トイレに駆け込んだ。
***
「ぐえーっ……おえぇーっ……」
翔太は今日一日で食べたものをすべて吐き出していた。
(今日の筑前煮はうまかったのに……)
「なんでアイツが……そりゃ、いてもおかしくはないな……」
半世紀近くの人生経験がある翔太は、大抵のことでは動じなかった。
記憶を失ったときも、杜氏原に刺されたときも、比較的冷静に対処できたと自負していた。
――しかし、今回ばかりは、どうしようもなかった。
***
会議室に戻ると、ミーティングは始まっていた。
咎められると覚悟していたが、野田がうまく言ってくれたようだ。
「――ということは、まだ原因がわかっていないということですか?」
デルタファイブからの報告を受けて、明石は詰め寄っていた。
明石はアストラルテレコムの課長で、翔太と野田の出向先の上司にあたる人物だ。
デルタファイブからの報告内容に納得がいかないようだ。
翔太は会議室にいる人物が気になり、報告の内容に集中できなかった。
***
「――デルタさん、もう次はありませんからね!」
結局、ミーティングでは問題の原因がわからないまま終了となり、明石の怒りは収まらなかった。
翔太はトイレにいたことで、挨拶をしそこなったデルタファイブの社員と名刺交換をした。
翔太と野田はアストラルテレコムの名刺も支給されている。
「
石動と名乗った男性の名刺には、石動景隆と記載されていた。
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【新連載】俺と俺で現世の覇権をとりにいく
https://kakuyomu.jp/works/16818093081647355813
石動景隆と柊翔太が主人公の物語です。
神代や橘も登場予定で、本作と並行で進んでいきます。
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