ハラスメント撲滅隊 あとがき
※ 読まなくても本編に影響はありません
和竹という小物を始末するのに10話もかかってしまいましたw
今回は映画関係者をウルトラ警備隊に見立て、和竹というモンスターを退治するという形にしてみました。
正体を隠している翔太隊員がウルトラマンだと気づいた方は立派なおじさんです。
正体 = 翔太 を連想した方はおやじです。
この話では、それぞれの隊員ががんばっている姿を見せたくて、群像劇スタイルにしてみました。
もしかしたら、「さっさと和竹を仕留めろや」という声の方が多かったかもしれません。
皆様の感想や好みを頂戴できれば、今後の創作の参考にさせていただきます。
さて、ハラスメント、特にセクハラ(セクシュアルハラスメント)は扱いが難しいテーマです。
特にラブコメにとっては、存続の危機ですらある課題だと作者は考えます。
本作では、和竹が明確な悪役として描写されており、勧善懲悪的な終わり方をしていますが、現実の世界では解決が難しい課題が山のように残っていると考えます。
いくつかの問題のうち、セクハラ行為が証言だけで認定されないケースを考えてみます。
これは主に女性が被害者となり、セクハラの事実があっても泣き寝入りするパターンになってしまうケースです。
このようなことが多く発生すると、女性による男性不信が高まり、ジェンダー間の分裂を発生させる要因となり得ます。
逆に、証言だけで認定されてしまうケースを考えてみます。
セクハラの事実がないにも関わらず、虚偽の証言をされるパターンです。
所謂、冤罪ですが、これも社会問題となっています。
特に社会的地位が高い人は、セクハラの冤罪を避けるために異性との距離をおく傾向が見られます。
これもジェンダー間の分裂を生み出していると言えます。
特に、上司となる男性がハラスメントリスクを避けるために、側近を同性で固めてしまうケースもあるようです。
これは、女性の社会進出にとって大きなマイナスになります。
別の問題を考えてみましょう。
作者が懸念しているのが、多くの場合においてセクハラの基準が曖昧であるという点です。
現在においては、容姿を褒めることもセクハラと認定される場合があります。
例えば、男性が「この眼鏡かわいいね」と女性に向かって言ったと仮定します。
女性がこれをセクハラと訴えた場合、多くの男性はその女性に話しかけるのをためらうのではないでしょうか?
何がOKで、何がNGなのか?
この基準が曖昧なままでは、お互いに安心した状態での会話が成立しなくなることが懸念されます。
結局、同性どうしで会話したほうがリスクが低いと判断されれば、これもジェンダー間の分裂を生み出していると言えるのではないでしょうか?
ここからは、ラブコメの危機について触れていきます。
多くの恋愛的なアプローチは、相手の合意がない場合、現在の倫理観ではセクハラに該当する行為となり得ます。
先程の「この眼鏡かわいいね」もラブコメにありそうなセリフですが、セクハラの定義が曖昧な以上、読み手によってはセクハラと解釈されても不思議ではありません。
本作を例にとると、神代が翔太に行っている行為も、読み手によってはセクハラです。
翔太も神代の容姿を褒めているので、同様です。
また、本作に(今のところ)性描写はありませんが、2023年には不同意わいせつ罪(新176条)と不同意性交等罪(刑法177条)が新設されました。相手の合意なしに、わいせつ行為、性行為をした場合は刑事罰に問われます。
このような係争を避けるため、性的同意書に署名したり、性的同意があったことを記録するアプリケーションが作られたりしています。
これをラブコメにそのまま落とし込んでみましょう。
「ねぇ、手をつないでいい?」
「では書面を用意するね」
「――はい、確認しました。この条文だと腕を組むのところまでは合意できていないということかな?」
「そうだね、この場合は新たな書面を用意するか、条項を追加しよう」
「できれば、ハグやキスまで入れたいんだけど?」
「そのときの気分でしたりしたくなったりするので、その都度同意する手続きをしましょう」
***
「今日はデートに誘ってくれてありがとう。とっても楽しかった。次は法廷で会おうね」
どうでしょうか?1周回ってありな気もするかもしれませんが、書く方はたまったもんじゃありません!
現在の倫理観では、誰にも文句を言われずにカップルが成立する方法は、お見合い――今ではマッチングという方法以外にはないかもしれません。
これはラブコメの危機と言ってもいいのではないでしょうか?
極論すると、少子化の原因ともいえそうです。
逆に、ラブコメの危機ではなく、チャンスと捉える考え方もあります。
マッチングのように、事前に合意がとれてからの恋愛行為しか許可されなくなった世界線に突入した場合、ロマンティックな展開を望むのは難しくなります。
つまり、この世界線においては、フィクションであるラブコメを消費することでロマンス成分を補給するということになります。
例えると、現実では満たされない性癖を創作の世界で満たすようなイメージです。
とりとめもないことをあとがきとして書きましたが、作者の駄文として読み流していただければと思います。
(もしかたら、本作において、翔太の恋愛観に現在の倫理観が影響しているかもしれませんが……)
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