富山県呉東からの小話
狩衣 旅兎
御挨拶と最初の話
筆名に「普段着で気軽に旅ができるようになりたい」願望を込めた男、狩衣旅人(かりぎぬ たびと)です。
幽霊や火の玉を目撃したとか、未確認飛行物体が・・・・・・という話ではありませんが、私が見聞きした話を書き連ねたいと思います。
では、始めさせて頂きます。
小学校中学年の頃でしたか。日が沈むのが早い時季でした。
午後四時を過ぎたばかりなのに、家の中は薄暗く照明を点けないと不気味なほどでした。
父親は仕事で不在。母親は弟を保育所に迎えに行きがてらの買い物に行き、私は照明を点けず薄闇の室内で一人留守番をしていました。
テレビは再放送ドラマが面白くなく、廊下の端にある二階への階段の二段目くらいに腰掛けボンヤリしていた時に、気配を感じて廊下の突き当りに顔を向けると壁から女児を模った茶運び人形が現れたんです。
突き当りに広がる六畳ほどの板の間を、おかっぱ頭に赤い着物を着た人形が湯呑を載せたお盆を持って、カタカタ音を立てながら壁から斜め前に進んで行くんです。
家には存在しない人形。テレビ画面でしか目にした事のないモノが現れた恐怖に瞬時に鳥肌が立ちました。
私は外に飛び出して、家の花壇の縁に腰掛け恐怖のあまり半泣きで母親達の帰りを待ちました。
どれくらい待ったでしょうか。記憶では、かなり長い時間待っていたと思います。
弟を連れて帰宅した母親に「壁から茶運び人形が出てきた!」と懸命に訴えましたが、呆れた表情で一笑に伏されました。
弟は無言で不思議そうに私を見つめるばかり。
母と弟と共に板の間に確認に向かうと、そこには何者も存在していませんでした。
一度限りの体験なのですが、これは農地解放の影響で没落し自宅裏の墓もそのままに夜逃げした地主の屋敷跡に家が建っている事と、関係があるのでしょうか?
旧地主家の墓は今も繁茂した木々の間に、静かに建っています。
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