囁きの家
@jinno11
囁きの家
本日の主人公
【田中優子】
優子は都会の喧騒から離れ、静かな田舎の一軒家に引っ越すことにした。
都会のストレスから解放され、新たな生活を始めるための決断だった。
新居は古いが趣のある家で、周囲には豊かな自然が広がっている。
引っ越しの当日、地元の不動産屋の藤田が優子を出迎えた。
藤田は優子に笑顔で言った。
「田中さん、この家は長い間空き家でしたが、とても良い場所です。ただ、少し古いので色々と気をつけてください。」
優子は頷きながら家に入った。
家の中は古い家具がそのまま残されており、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。
しかし、その夜から奇妙な出来事が始まった。
夜中、優子はふと目を覚ました。何かが耳元で囁いているような気がしたからだ。
寝室の窓から外を見ると、月明かりに照らされた庭が広がっていた。
しかし、誰もいないはずの庭から、何かが動く音が聞こえてきた。
優子は怖くなり、再びベッドに潜り込んだ。
翌朝、庭を確認しても何も異常はなかった。
しかし、その晩もまた同じような囁き声が聞こえてきた。
まるで家自体が何かを伝えようとしているかのように。
ある日、優子は家の掃除をしていると、
壁の一部が不自然に浮いていることに気づいた。
試しに押してみると、隠し扉が開いた。
中には小さな部屋があり、古びた日記が置かれていた。
日記は、この家に住んでいた前の住人のもので、
そこには恐ろしい出来事が詳細に書かれていた。
前の住人もまた、夜中に囁き声を聞き、
その声に導かれるようにしてこの隠し部屋を見つけたという。
日記を読み進めるうちに、優子はこの家がかつて村全体を巻き込んだ惨劇の舞台であったことを知る。
村の長老が行っていた儀式に失敗。
その結果
家が呪われたのだという。
長老は儀式を通じて何かを封じ込めようとしていたが、その封印が破れてしまった。
前の住人はその恐怖に耐え切れず、この家を去ったが
家に残された何かが次の住人を待ち続けていた。
優子は日記を閉じ、家を出る決意をしたが、何かが彼女を引き留めるかのように感じた。
優子は荷物をまとめ、家を出る準備をしていた。
しかし、家を出ようとするたびに何かが邪魔をしているようだった。
電気が突然消えたり、ドアが開かなくなったりと、家全体が生きているかのように感じられた。
絶望的な気持ちで家の中を歩き回るうちに、再び囁き声が聞こえてきた。
「ここから出られない…ここから出られない…」その声は次第に大きくなり、優子の耳元で叫び始めた。
日記に記されていた儀式を思い出した優子は、
最後の希望として儀式を再現することにした。
家の地下にある祠で行われたというその儀式を調べ、必要な道具を揃えた。
優子は祠に向かい、儀式を始めた。
祈りの言葉を唱え、儀式の手順を忠実に守る。
しかし、その途中で異変が起きた。
家全体が揺れ始め、床から何かが這い上がってくるような音が響き渡った。
優子が儀式を続ける中、地下の祠から暗い影が立ち上がった。
それは長老の怨霊であり、儀式の失敗により、永遠にこの家に囚われているのだった。
影は優子に向かって手を伸ばし、彼女を引き込もうとした。
必死に抵抗する優子だったが、その力には勝てなかった。
最後に見たのは、怨霊の目が自分を見つめている光景だった。
次の瞬間、
優子の意識は闇に包まれた。
数日後、地元の不動産屋の藤田は、新たな入居者を迎えるために家を訪れた。
家は静かで、何事もなかったかのように見えた。
次の住人が到着し、藤田は笑顔で言った。
「この家は長い間空き家でしたが、とても良い場所です。ただ、少し古いので色々と気をつけてください。」
そして、その夜もまた、囁き声が新たな住人の耳元で響き始めた。
囁きの家 @jinno11
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます