俺が転生したかったのは俺tueeeeが出来るRPGゲー厶世界であって理不尽恋愛ゲー厶世界じゃない。

あれくす

やってきたよ、転生チャンス




 拝啓。

 俺、死にました。

 そこのところはサクッと紹介しよう。

 その日俺はいつものようにRPGゲームを徹夜でやり込み、迫りくる眠気と戦いながらも、空腹に耐えかねてコンビニへと向かっていた。

 差し掛かる交差点。

 歩行者信号は青……だったと思う。

 ともあれ、ふらりふらりと横断歩道を渡っていた俺は右から猛スピードで突っ込んできた大型タンクローリー車にプチっと踏みつぶされ、わずか17歳という短い人生を終えたのだった。

 考えてみれば、我ながらクソみたいな人生だったような気もする。

 両親は俺が小さい頃から不仲極まり、お互い顔を合わせたくないがために、仕事と称して年中不在。一人っ子で兄弟も姉妹もおらず、小学校では劣悪過ぎる家庭環境を同級生から馬鹿にされまくり孤立。中学からは不登校となり、なんとか高校に進学するも連日部屋に引きこもり大好きなRPGゲーム三昧。出席日数? 知らねえよそんなのは。たぶん留年してたんだろ。

 そして、今日の死に様である。

 たぶん神様ってやつに嫌われまくってたんだろう。

 どうせ死んだんだから、あの世で会ったらみっちりと苦情を言ってやろうと思う。


「それは困るのぉ」


 突然の声に、俺は目を覚ました。

 そこは一面真っ白な部屋。体の感覚は鈍く、立っているのか座っているのか横になっているのかもわからない。しかし視界と耳だけはしっかり機能しているようだ。

 そして目の前には、無駄に光に包まれたでっかい人影が。

 俺は即座にピーンと来た。


「あんた、もしかして神様?」


「いかにも。と言っても、実際はお前の言うところの神様とはちょーっと違うんじゃが……まあ似たようなもんじゃ」


「そうかそうか。会いたかったよ神様。とにかく、まずは一言だけ言わせてくれ。お前なんて大嫌いだよボケナス無能神」


「罰当たりにも程があるわ」


「うるせえよ。散々クソみたいな人生歩ませておいて何が罰当たりだよ。あんた何様だよ」


「だから神様だって言っとるだろうがクソガキ」


 それからしばらく不毛な言い合いをして、神様なるジジイはようやく本題へと入る。


「とにかく、お前の人生が過酷であったのは、ちょいとした手違いなんじゃよ。誰にでもミスはある。弘法も筆の誤り。猿も木から落ちる。神のうっかりクソ人生。すまんかったの」


「謝る態度じゃねえだろ! あんたのせいで俺の人生お先真っ暗だよ! もう終わったけど!」


「ヤケクソになっとるのぉ。しかし、さすがの儂もちょっとばっかり良心が痛んでの。不幸な事故であり、儂も忙しかったから仕方がないが、それでもちょっとは気にしておっての」


「あんたのミスのくせによくもまあそこまで開き直れるよな。さすがだよ神様」


「ほほぉ? 皮肉を言ってよいのか? お前に、ビッグチャンスをくれてやるというのに」


 神はクソむかつくニヤケ面をしながら言ってきた。


「ビッグチャンス?」


 そして神様は、高らかに宣言する。


「山田小太郎よ! お主を、希望する世界へと転生させてやろう!」


「え!? マジですか!?」


「マジもマジで大マジじゃ。ほれ、選ぶがいい。どんな世界でもたちまち用意してやるぞい」


「ちょ、ちょっと待って!」


 これは本当にビッグチャンスではないか。

 いわゆる異世界転生というものか。となれば、ここでどのような世界を選ぶかが大きなポイントとなるだろう。

 どうする……ロボット世界も捨てがたい。サイバーパンク世界もカッコいい。どうせどの世界でもヒロインくらいいるだろうし。

 ……なんてね。

 どんな世界でもって言われた時、俺の希望する世界なんてものはとっくに決まっていた。

 それは唯一の心の癒しだった。

 それは唯一俺をワクワクさせてくれた。

 広がる世界。興奮の大冒険。そして、手に汗握る強敵との対決。

 そう、俺は、RPGゲームの主人公になりたいんだ。

 とりわけ最近クリアしたあのゲームはまさに神ゲーだった。世界観、キャラ設定。全てにおいて俺の趣向にダイレクトアタックしていた。

 もう決定だな、これは。

 意気揚々と、俺は神様に告げる。


「じゃあゲーム世界にお願いします! もちろん主人公キャラとして!」


「げーむ? よくわからんが、OKじゃよ」


 そして神様は、人差し指を立て、すーいすいと空中で円を描いた。


「……はい、終了。これで世界は完成した」


「え? 今ので?」


「何度も言っておるが、儂は神様じゃぞ? そのくらい朝飯前じゃ。ともあれ、お主は間もなく目を覚ます。そしてそこは既に、お主が言うげーむとかいう世界のはずじゃ」


「わ、わかった! とりあえず信じてやる!」


「妙に上から目線が気になるが、まあよかろう。では、儂も忙しいのでな。これで失礼させてもらうぞ。では、さらばじゃ」


 そして神様は消えた。

 神様の光がなくなると、たちまち視界は暗転する。かと思えばBGMが流れ始め、少しずつまた明るくなってきた。

 穏やかな曲だった。しかしどこか物悲しさもある。

 色んなゲームをしてきたが、まるで聞いたこともない曲だった。

 さらに視界は明るくなると、目の前には丘の上の美しい景色が広がっていた。


(あー、これってたぶんタイトル画面か)


 なんていうか、すっごい見覚えのある演出だったからすぐにわかった。

 案の定、景色の向こうから何やらどでかい文字が飛んでくるのである。

 そして、青空にバカでかくタイトルが表示された。


『ネバーエンディング・エターナルラブストーリー・フォーエバー』


「…………なにこれ」

 






  

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