寝すぎたオッサン、無双する〜親友カップルをかばって昏睡から20年、目覚めたら俺のハズレスキル〈睡眠〉が万能究極化してて最強でした。超人気配信冒険者の親友の娘姉妹が、おじサマと慕って離してくれません〜
寝すぎ22 真・試される度量と覚悟と精神。……負担は想像もつかねえが、やるしかねえ、か……!
寝すぎ22 真・試される度量と覚悟と精神。……負担は想像もつかねえが、やるしかねえ、か……!
「んふふ。ネルおじの背中、すっごく
泡だつタオルを持った小さな手が一生懸命に背中を擦る。
「そ、そうか? に、20年ずっと寝てたから、俺自身ではよくわかってな、ひぁっ!?」
「ん……。ハワぱぱと同じくらい、頼れる背中。安心、する」
ぴとっと、その少し冷たい額とさらさらとした銀の髪がネルトの背中にくっつけられる。
そのなんとも言えない、むずかゆくも心地よい感触を背中ごしに感じながら、ネルトは早くも後悔していた。
――見えなければ、大丈夫?
……否。なぜなら、見えなくとも、それはそこに在るのだ。見えずとも、むしろ見えないからこそより伝わるものも。
背中ごしに触れる体温。息づかい。ネルトのうしろですぴぷるぷにゅんとはずむふくらみ。15歳という年齢からは規格外にあちこち育ったやわらかなその肢体。
――そう。それはまさしく、昨日ネルトのために親友ハワードが用意した睡眠学習用教材からは意図的に外されていたが、この20年で発展した文化文明の一つ、大人向けな映像にかかったモザイクの向こうの魅惑のように。
そして、いまネルトに課された越えなくてはならない壁はなおも高い。
我を忘れて姉妹に――というだけならばネルトは容易に耐えられるだろう。まさか親友の娘姉妹を傷つけることをどれだけ興奮しようと、ネルトが望むはずもないからだ。
だが――違う。
なぜなら、パフィールとスピーリアの娘姉妹はいま、ふたりの父ハワードと同じ感覚でネルトと混浴している。
――そう。過剰反応してはいけないのだ。
わずかでもネルトが過剰に反応した瞬間、この時間、そしてこれからの同居生活は非常に気まずく、ギクシャクとしたものになるだろう。
この娘姉妹があまりに
自分たちほどに可愛く美しく愛らしい娘、それも裸で――に当然男が抱くだろう感情や反応に、姉妹はあまりにも無自覚で無防備だった。……いまは、まだ。
ゆえに、
――へっ……! 普通の使いかたじゃねえし、正直負担は想像もつかねえが……! やるしか……ねえ、か……! 頼むぜ……! スキル〈睡眠〉……!
「ん……! きれいになった。じゃあ、今度は、ネルおじ。わたしの背中を、お願いする」
――この輝くようなきらきらとまぶしい笑顔を守るために。
「どうだ? スピー? 気持ちいいか〜?」
「ん、んん……! 気持ちいい、けど、ネルおじ……ちょっと、くすぐったい……!」
「はは。悪い。もうちょっとだから我慢しろよ〜?」
なだらかな背中を泡立つタオルでごしごしと擦り上げられ、くすぐったさにスピーリアがぴくぴくと肩を震わせる。そして、ザパッとお湯をかけ、背中流しは終了した。仲睦まじい父娘のような気安さで。
「お、オジサマには、と、特別に、あたしの髪を洗わせてあげるわ! か、感謝しなさい!」
「ああ。パフ。本当にすっげえ艶々で綺麗な髪だな。まるで金の絹糸みたいだぜ」
「そ、そそそう? ああ、ありがと……!」
その後も、緊張しすぎなパフィールの長い艶やかな金の髪を丁寧に丁寧に梳くように洗い。
「どうだ〜? スピー? かゆいところあるか〜?」
「ん〜。だいじょぶ〜」
青い瞳を気持ちよさそうに細めるスピーリアの銀の髪をワシャワシャと洗い。
「わひゃっ!? ちょ、ちょっとオジサマっ!? へ、変なところ触らないでったらぁ!?」
「……いや、マジで普通にパフの背中、泡タオルで擦ってるだけなんだけど。ちょっと敏感すぎねえ?」
ぴくぴくと敏感に反応しつづけるパフィールの背中をなるべく慎重に洗い。
「あはは! 何これ! オジサマの髪、すっごい泡だつんだけど! あはは!」
「んふふ。なんか、ふわふわしてて気持ちいい」
「おいおい。笑うのはいいけど、ふたりともなるべく丁寧に頼むぜ?」
最後に、姉妹ふたりががりでネルトの髪をぱふすぴぷるにゅんと洗ってもらった。
「じゃあ、俺は先に出るから。パフとスピーもしっかり体あっためてから出ろよ〜。おやすみ〜」
「は〜い! オジサマ、おやすみなさ〜い!」
「ん。おやすみ。ネルおじ〜」
そうして、家族のように一緒に風呂に入り、さらに気安い仲となった湯に浸かる姉妹ふたりと挨拶を交わしてから、扉を開けて脱衣場へと入り――そこでネルトは、がくりとひざをつく。
その額には、脂汗すら浮かんでいた。
「へ、へへっ……! さすがに……かなり無茶だったみたいだな……! スキル〈睡眠〉の超超々連続発動……!」
――そう。
つまり、ネルトが行ったことはこうだ。興奮状態が一定の
同時に、一瞬とはいえその寝ている間の状況の把握を特殊系派生の一つ、〈超睡眠学習〉で行うことでごく自然な会話を可能とし、見事かけらもギクシャクすることなく、この難局をいっさい過剰反応せずに乗り切ったというわけだ。
「くっ……!?」
だが、その負担は大きい。睡眠と覚醒双方にかかる断続するエネルギー消費に加え、脳への疲労の大きい、休眠と覚醒状態をも通常ありえない頻度で断続的にくり返したのだから。
結果、いまのネルトは昼間の姉妹の父ハワードとの全力の一戦よりも遥かに疲弊していた。
「は、はは……! まあ、パフとスピー、ふたりがかりみたいなもんだしな……! 仕方ねえ、か……!」
そうして疲れた体を引きずってなんとか部屋に戻り、もろもろの寝支度を整えてベッドに入ろうと部屋の灯りを消そうとしたとき。
ピロン。
スマホがメッセージの着信を知らせ、ポチポチと操作して、ネルトはそれを読み上げる。
「今日はすっごく楽しかったわ! ん。これからもよろしく。家族みんなで仲よく楽しく暮らしていきましょう! オジサマ! ネルおじ、か」
そこには、撮ったばかりと思われる画像が添付されていた。
それは、どちらかの部屋のベッドで戯れる部屋着の笑顔の姉妹。ただし湯上がりのためか、濡れ髪で胸もとや裾がやや無防備だったり、おへそがちらりとしたりと、やや煽情的な――
目を閉じ、もう一度精神を鎮静すると、ネルトはカシャ、ポチポチとスマホを操作する。そして。
「よし! 寝るか……!」
すっきりとやりきった気持ちで、長い一日の眠りについた。
さっきもらった姉妹の画像には、消えないようにしっかりと保護をかけ――
「おう! こちらこそ今日からよろしくな!」
――と、渾身のドヤ笑顔と
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