寝すぎたオッサン、無双する〜親友カップルをかばって昏睡から20年、目覚めたら俺のハズレスキル〈睡眠〉が万能究極化してて最強でした。超人気配信冒険者の親友の娘姉妹が、おじサマと慕って離してくれません〜
寝すぎ16 超セレブお宅紹介と、ツン姉娘。……その赤い瞳をそっと閉じて。
寝すぎ16 超セレブお宅紹介と、ツン姉娘。……その赤い瞳をそっと閉じて。
『『オカエリナサイ、オカエリナサイ』』
「うわっ!? な、なんだこの丸くて平ぺったいやつら!?」
玄関で靴を脱いですぐの幅の広い廊下。ずらりと並んだ円盤のような魔導装置がチカチカと光りながら、いかにも作りものらしき音声で話しかけてきた。
「ああ。オジサマ。それはね」
「待って。パフねえ。ここはわたしが」
驚くネルトの前に、娘姉妹の妹スピーリアが姉パフィールを止め、白い制服のミニスカートから伸びる生足もまぶしく説明のために魔導装置たちの前に立つ。
「ん。紹介する。ネルおじ。この子たちは、自律魔導掃除機。通称ロール。家の中をぐるぐる回るからそう名づけられた。わたしたちの代わりに、寝てるときやいないときでもどんどんきれいにしてくれる、がんばり屋さん」
それから、並ぶロールを一体ずつピッと指さした。
「名前は順番に左から、黒いのがワンコ。青いのがイヌコ。白いのがネコ。赤いのがニャンコ。そして茶色いのがゴエモン」
「へー! これが自律魔導掃除機ロールかぁ……! 知識としては知ってたけど、馴染みがねえし、やっぱいきなり現物見ると、ちょっとビクってしちまうなぁ……! ……ん? ゴエモン? 一体だけ、なんでそんな名前に?」
「……? 5体目、だから?」
ネルトの素朴な疑問に、スピーリアはきょとんと小首を傾げ、そう答えた。
『『ソウジサイカイ、ソウジサイカイ』』
帰ってきた主人への挨拶を終えたロールたちがふたたびそれぞれに散っていく。
床だけでなく、壁や天井までもズリズリと這っていくその姿を見て、ネルトは「これ、夜真っ暗な中で壁とか天井とかずりずり這ってるのに出くわしたら超怖えだろうなぁ……」としみじみ思うのだった。
――ネルトの驚きは、まだまだ続く。
「な、なんだ……!? この広さ……!?」
「あら、そうかしら? オジサマ? こんなもんじゃない?」
ネルトと姉パフィールの眼前に広がるのは、リビング。いったい何部屋分あるのか、ひと言で言えば、室内犬とか飼ってたら、ゆうに駆け回れるほどに広い。
ちなみに妹スピーリアは、部屋着に着替えるとのことで別行動中。
それはさておき、大きくやわらかなソファが4組も用意されていて、ネルトが試しに座ってみたらどれもさっきのリムジンのもの以上にふかふかだった。
さらにドヤ顔でされたパフィールの説明では、壁面の一つが映像を映すためのものになっていて、ド迫力の大画面で楽しめるらしい。
試しに、ネルトのスマホに入っている幼い頃のパフィールがぎゃんぎゃん泣いてるシーンを映してみたら、ものすごい速さで半泣きのパフィールに止められてしまった。
それから、あまり使っていないという広々としたキッチン。数か所に設置されたトイレなどを案内してもらいながら、横幅の広い廊下を進んでいくと、パフィールが一つの部屋のドアを開ける。
「はい! とりあえず、オジサマはこの部屋を使って! 使ってない客室だけど、広さは十分だと思うし、家具とか必要なものは、また追い追いそろえていきましょ! ……あ、あたしが手伝ってあげるわっ!」
「ああ! ありがとな! パフ! 助かるぜ!」
さっきリビングでパフィールをからかった件の機嫌は、少し頬を赤らめていることから考えても、まだ直っていないだろう。
それでも、そう言ってくれるパフィールの優しさに感謝して、ネルトはその艶やかな金の髪をそっとなでた。
そして、とまどいながらも、パフィールは気持ちよさそうに、しばしの間されるがままに、そっとその赤い瞳を閉じるのだった。
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