未来を映すカメラ

@jinno11

未来を映すカメラ

本日の主人公

【ケン】



ケンは趣味で写真を撮るのが好きだったが、最近は仕事に追われ、カメラを手に取る時間もなくなっていた。


ある曇り空の土曜日の午後、彼は久しぶりに街の古びた中古カメラショップに足を運んだ。店内は薄暗く、古いカメラやレンズが埃をかぶって棚に並んでいる。


彼の目に留まったのは、古い革製のケースに収められたアンティークなカメラだった。


手に取ると、そのカメラには不気味な魅力があった。  



店主は小声で言った。


「それは特別なカメラですよ。未来を映し出すと言われていますが、その未来が必ずしも望ましいとは限りません。」




ケンは店主の忠告よりも好奇心が勝り、そのカメラを衝動買いした。


その帰り道で試し撮りをしてみることに。人気のない公園で数枚の写真を撮り、その夜、家で現像した。


数日後、写真を受け取ったケンは愕然とした。

現実には存在しない建物や見知らぬ人々が写っていたのだ。



「これは一体…」



ケンは写真をじっくりと見つめた。

その中の一枚に、暗い通りで見知らぬ女性が襲われる瞬間が映っていた。



次の日、その通りで同じ女性が襲われたというニュースを見たケンは震え上がった。




不安と興奮が交錯する中、ケンはカメラの力を試すため、様々な場所で写真を撮り続けた。現像された写真には次々と恐ろしい未来の光景が映し出され、それらが現実のものとなることがわかった。


カメラが映し出す未来は、避けられない運命のように感じられた。

彼はこの力をどう使うべきか悩んだが、その一方でカメラの持つ不気味な魅力に取り憑かれていた。





ある日、ケンは恋人のミカと一緒に過ごし、休日の様子を撮影した。

現像された写真には、ミカが交通事故に遭う場面が映っていたのだ。彼の心は凍りついた。


どうにかしてその未来を変えなければならないと必死に考える。

ケンは写真の中の細かなディテールを注意深く観察し、事故が起こるであろう場所と時間を特定した。


彼はミカを守るために、彼女にその場所に行かないよう説得を試みるも、彼女は不信感を抱き始める。結局、彼女とは距離を取ることに。



事故の日が近づくにつれ、ケンの心は焦りと不安に苛まれた。

彼はミカを見張り、全ての手を尽くして彼女を守ろうとしたが、運命は残酷だった。


ミカはケンの目の前で、写真に映っていた通りの事故に遭い、命を落とした。




彼の努力は無駄だったのだ。




ケンは絶望と罪悪感に苛まれながら、カメラの呪いを深く恨んだ。

しかし、手放すこともできず、彼の心はますます暗い影に覆われていく。




ケンは打ちのめされ、日々を生きる気力を失っていた。


彼はカメラを捨てる決心をし、かつての店主のもとへ返しに行った。

しかし、店主は不在、店も閉鎖されていた。


ケンはカメラを手にしたまま、途方に暮れた。


ある晩、ケンはカメラで最後の写真を撮ることを決めた。


それは自分自身の姿だった。


現像された写真には、ケンが闇に引き込まれるような恐ろしい未来が映っていた。




彼は逃れられない運命が待っていることを悟った。



その写真を見つめながら、絶望の中でカメラを握り締めた。




その瞬間、





カメラが冷たく光り、彼の視界が暗転した。




未来を映すカメラの呪いは、彼を決して逃がさなかったのだ。

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