家知らずのツバメ  記憶を失くした少年の冒険譚

ユービィ

Ep1-目覚め

「な…… き…… い…… ん…… た…… の…… の…… み…… こ…… じ…… め」

「ここは……」

 目蓋を開いて見ると見たことの無い光景が広がっていた。淡々と木が連なっていて滝のような音も聞こえる。森にでもいるのだろうか?

「僕は……なんでこんなところに……よいしょっ! ……わ! 」

 腰に激しい衝撃が走ったと思えば光景がまた変わっていた。上からは緑の雨とも言える程の落ち葉が舞っていた。きっとあの上の枝から落ちたのだろう。

「痛てて……枝に乗ってたなんて……それにしても何でこんな森にいるんだろう? あれ……僕って誰? 」

 周りの状況を把握した彼はまた新たな謎に悩まされる。そう、自分のことを思い出せないのだ。落ち葉、滝などの言語や常識を忘れた訳ではないのだが自分に関することを一切合切分からないのだ。何か霧のようなものを頭の内側で感じた。ちょっとしたパニック状態であった彼にまた新たな情報が舞い降りてくる。目の前に出てきたのは文字や数値、グラフがある黒色の薄いモニター。

「ステータス……テーブル? ーー使ったことはないけど……使い方はわかる!? 」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リゲロン(Lv1) 17歳 

種族 : 人族       筋力・・・1

職業 : 未開放      器用・・・1    グ

□ スキル        反応・・・1    ラ

□ 状態異常       魔力・・・1    フ

MP ・・・10        魔防・・・1

タイプ・・・接近格闘   知力・・・1

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ステータステーブルという名のモニターは自分のステータスや状態を見ることが出来る。左半分には小さく綺麗な六角形のグラフの角には「筋力」「器用」「反応」「魔力」「魔防」「知力」と書かれていた。全て1だったけど。左側にスキルと書いた項目があったので押してみたがやはり何も無い。次に押してみた状態異常には「錯乱」と「女神の呪縛」と書かれていた。確かにこの状況を理解出来ず錯乱はしているが「女神の呪縛」というのは明らかに怖そう。「錯乱」を押すと

「知力、反応低下を引き起こす。心情の変化によるもの」

では「女神の呪縛」を押すと

シーン

何も出てこなかった。「女神の呪縛」が何かを知りたかったが今はまだ分かりそうにない。そして上のほうにあったLv1…もしかして僕はとても弱い?そんなことはいいとして(よくない)何となくだがステータステーブルの使い方を理解した。ステータステーブルはその人の状態を表すことが出来る。Lv……歳……ステータス……スキル……状態異常……MP……タイプそして名前。

「ーーリゲ……ロン! 」

右も左も分からない場所に放り出され、ましてや自分のことを知らない僕からしたら唯一自分を証明出来るものを見つけたことには涙が出るくらい嬉しかった。今すぐにでも名前を教えてくれたステータステーブル君を抱きしめてあげたい。そう思ってしまった。これで今集めれる情報は全て集めれた。ここで座ってても何かある訳では無い。よし、まずは散歩!……じゃなくて探索の時間だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る