暁月に消ゆ
@sig_sig
異常食欲者1
ジリリリリリリリリリリリリ......!!
朝の日差しが眩しく差し込む部屋で、新品の目覚まし時計が鳴り響く。
季節は桜が咲き誇る春の始まり。
道ゆく人々の表情は期待に満ちていたり、不安そうだったり様々だ。
メキョ...!!
そして、
新品の目覚まし時計は唐突にその天寿を全うした。
「ふあぁぁ・・・まだ眠ぃ・・・ッテ」
ふと手に痛みを感じた彼はベッドの下の足元を見る。
するとそこには捻り潰されてガラクタとなった目覚まし時計が、無惨にも広がっていたのだった。
「えっ誰なの?俺の大事な目覚ましを壊したのはよォ!」
部屋に響く慟哭・・・
自分で捻り潰したことに気付かずに喚き続けている。
「毎日毎日さぁ!ほんっと勘弁してくれよォ!もう買い替えるお金もないんだよォ...」
彼は金遣いが荒く常に貧乏だ。
なぜなら、ケツを拭くために金を使っているから。
トイレットペーパーの存在を知らないのだ。
無惨にも破壊された目覚まし時計。
その針は7時を指している。
まだ早朝と言っても良い時間だろう。
「スンスン・・・ん???」
なにやら、香ばしいにおいが漂ってきているようだ。
においが漂ってきた方向の窓を見ると、
昨日クソ暑かったから窓を開けっ放しで寝たことを思い出した。
そして脳裏を支配する香ばしい甘美な香りにより、
彼はもう目覚まし時計のことなど、とうに忘れていた。
「じゅる...このにおいは隣に住んでるミチコおばさんが焼いたトーストのにおいだな」
彼はここ一週間何も口にしていない。
それ故に食べ物に関しては異常な執着心を見せる。
《異常食欲者》
「そういえば腹ァ減ったなぁ」
彼は4日以上寝たきりだった。
理由はない。ただ寝ていたのだ。
「んじゃあ、ミチコん家のトースト盗りに行くか」
彼の不規則な生活が、醜く歪んだ心を生み出した。
「っと。何も食ってないのに便意が込み上げてきた。盗る前に便所行っとくか」
誰に言う訳でもなく一人でつぶやき、
そして彼は徐に便所へ向かうのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
トイレにて
彼は苦虫を噛み潰したような表情で用を足し始めた。
彼の便は固形ではなく、限りなく水に近い状態だった。
これは彼の不規則な生活が招いた悲劇である。
「ッジュボアツマイラェヒョヒイイイイイッ!!」
彼はあまりの不快感の為に、意味不明な奇声を発している。
そんな彼の名前はジル=ブランフォード
異世界からこの現代日本に漂流した、異世漂流者である。
街を歩けば誰もが振り向くぐらい容姿端麗(誇張)だが中身はダメ!本当にダメ!
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