壊れ始める日常
第9話 イケメンが何をやっても許されるのが許せない
「では全ての学校に囮の怪人を放つぞ!良いんだな?」
悪そうな顔の老人は心配そうな顔で幹部らしき人間や怪人に言った。
「はい。総統閣下…これで素早く怪人を倒した場所ほど、魔法少女やヒーローがいる可能性が高いのです。」
「なぁ…もしいなかったら?善良な人間に恐怖を抱かせちゃうぞ?
PTSDとかにならないか不安じゃ!」
「総統閣下!怪人組織の総統としての威厳を保ってください!
それじゃただのおじいちゃんですよ?」
「はぁ…本当にやるのか?」
「仮に学生じゃ無いとしても、これで魔法少女達をおびき寄せれば、どの地域に潜伏しているか絞ることができます。
我々の未来のためなのです!」
「ではしょうがないか…怪人達よ!出撃せよ!」
総統閣下は気が進まなかった。これを行えば後戻りが出来なくなるから…
◇◆◇
「キャー…今日もスメラギ様が来てるわよ!」
モテモテのホストみたいな茶髪のイケメンバイク乗りが校門の近くに立っていた。
女子の集団とは単純だ…凄いイケメンがいるだけで騒ぐ…
こいつは暇なのか黄色い声援を浴びる為に学校の前に突っ立ちに来る。
キャーキャー言われているが、恐らく職業ニートか紐男だ。
うちの高校は女子高だ。男子はいない。
他の女子とは違って、私は彼を不審者としてキャーと悲鳴を上げて遠ざけたい。
イケメンが校門前に立っていても、警察は呼ばれない。
本当の不審者が出て、そのイケメンが間違われて警察に連れていかれた時があった。
イケメンが逮捕されたのを見て女子生徒は警察を「無能」と言いながら、ボコボコにすると言う暴動が起きた。
その不審者はイケメンが捕まえたのだが、事情聴衆の為に警察に結局彼は捕まった。
つまり前科があるキズ持ちなのだ。
それでも彼だけは罪がなかったことになっている。
イケメンならば何をやっても許される…本当に許せないイケメンだった。
「キャー…スメラギ様がなんかヤンキー女子に絡まれているんだけれど…」
はぁ…珍しいコトもあるものだ…ヤンキーまでこの女子高に現れるとは…
「てめぇ…まさか
めっちゃ聞いたことのある声が聞こえる。赤髪の少女だろうか?
見たくない…見たら胃が痛くなりそうだから…
「テメ…ちょい裏こいや…この不審者め!」
「キャー…大変…彼がヤンキーに拉致されてるわ…助けに行かなきゃ…」
こうしてクラスの…いや学校中の女子生徒が教室を抜け出して校門まで走り出す。
<キンコンカンコーン>
授業のチャイムが鳴る。クラスの女子は皆出払っている。
「えー…では授業を始め……られませんね…」
「はぁ…バカらしい…」
私は呟いた。
<ジリリリリリ…>
なんか学校の警報が鳴った。また怪獣でも出たのだろうか?
「えー全校生徒に連絡します。怪人が当校に出現しました。
現在は被害はありません。
生徒の皆さんはすぐ逃げるように…」
聞き覚えのない声が生徒の避難のために放送を行う。
罠だな…恐らく敵の狙いは魔法少女の炙り出し。
魔法少女がいる学校ならば、すぐに解決できるはずだ。
今後の計画の為に魔法少女のいる場所をあぶり出したいのだろう。
明らかに怪しすぎて罠だと確信している。
とりあえず私は怪人を探しに行くことにした。
危険度が高そうならば、私が直接倒すが…恐らく敵は囮のはず…
そこまで強くは無いはずだ。
「ふははははははは。女子生徒の諸君。
このアーマード・ライダーの
校庭から声が聞こえる。なんか…ものすごく…嫌な予感がしていた。
私はクラスの窓から外を見る。
スメラギは格好をつけて、ベルトにホープズ・シードを嵌める。
「
バイクのアクセルを入れ、高速でバイクに乗りながら空中で回転をしながら飛び上がる。
バイクが変形し彼をと合体した。
上半身がアーマースーツを着けた仮面をつけたアーマーライダー、下半身がバイクのケンタウロスのようなヒーローに変わる。
「さぁ…かわいい女子生徒諸君!怪人から君を守ってあげよう!」
無駄に格好をつけているようだった。
それにより女子からの「がんばれー!」等の黄色い声援が校舎に響き渡る。
「ククククク…俺様を倒す気でいるとは…」
どこかから声が聞こえる。けれど場所がわからない。
「クソ…まさか屋上とは…バイクで上がれない場所に出現するとは、なんと卑怯な!」
大袈裟にポーズをとり、ライダーは悔しそうな声をあげる。
………もうノーコメントで良いですか?一人で新喜劇やってんじゃねぇぞ?
「ハハハハハハ。なんか知らんが計算通り!」
怪人はすごく嬉しそうに話す。姿が気になる。
「まぁ良い。俺の最大必殺技を見せてやる。」
なんかバイクのライトの部分が光始めた。
ちょうど彼が人である時の股間の位置だ。ちょうどその部分にライトがある。
「はっはっは…どれだけライトを光らせてもこの距離では攻撃は届かないだろう!」
それ…なんかフラグな気がするが…
「喰らえ!ライダー……荷電粒子砲!」
彼の股間からとてつもない威力の白色のビームが発射された。
「え?」
怪人の短い「え?」の言葉を最後に、静かになった。
それ以降、なんか静かになった。その間、1分にも満たない。
スピード解決…今回は新しく手に入れたロボットを出撃させるコトもなかった。
後の調査によると怪人は姿形が全くなかったそうだ。まぁそれもそうだ。
荷電粒子砲を喰らったら、物質は分解され生き物なら死ぬ。
「ふははは!正義は必ず勝つのだよ!」
その発言で周りの女子はキャーキャー騒ぐ。
五月蝿い。前世は蝉か蛙かなんかか?
「やっぱりロボットに荷電粒子砲も良いかもなぁ!」
私はロボットを手に入れてから、ずっとどうカスタマイズするかを考えていた。
やっぱり自分のロボットってだけで、ものすごくワクワクする。
(小さな時に将来の夢を描く子供の気持ちって、きっとこんな感じなんだろうなぁ)
なんか忘れている気もするけど、まぁいいか…
私のIQは3位になっていた。考えることがバカらしくなったのだ…
◇◆◇
「まさか…1分以内に対処するとは…」
総統閣下は怒りに手を震わせていた。
「警報発令後、すぐにアーマード・ライダーが出現したそうです。」
「ライダー?魔法少女ではなく?」
「はい…ですが…ライダーの中身の人間は、ずっとその女子高を見張っているようで!」
「偶然…では無さそうだ!そこに…彼女がいるのか?それとも…ただの不審者か?」
「不審者である可能性は低いと思います!
なぜなら不審者なら通報されている筈だからです!」
「ククククク…やはりそうか…
ライダーが見張っているのは…やはり…」
「恐らく学校を怪人に襲われると困るからだ!
例えばそこにいる魔法少女の正体がバレてしまうからだと…」
「ククククク…
魔法少女を守護していたが、アンポンタンめ!まさかそこに魔法少女がいることを知らせてくれるとは!」
「では総員!戦闘準備をせよ!
魔法少女に街の平和を守らせるか…それとも学校を守らせるか選ばせてやれ!
『魔法少女…魔女化計画』を実行する。」
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