魔法少女救済計画〜魔法少女の働き方改革で武装ロボットを導入するのはダメですか?〜

社畜のクマさん

私がロボットを導入する理由

第1話 そうだ!ロボットを導入しよう!

「であるからして…ダーウィンの提唱は…」


先生のくだらない授業が続く。私は頬杖をついて聴いていた。


「では眠そうな神崎…」


私は進化論について説明する。


「簡単に言えば、環境に適して進化した者が生き残り続けるカンジです。」

なんという皮肉か…だって私は…


「マジむかつく」「勉強出来るなら学校来なきゃ良いのに…」

「どうせさ…」


クラスメイトの陰口…彼女達と距離をおいているからだ…

 だって私は…


<ジリリリリー>

突然クラスに大きな音の警報が響く。


(あれ?今日は警報?)


『巨大な怪獣が出現しました。市民は地下空間に逃げて下さい。』

 緊急アナウンス…


今日は怪獣が現れた様だった。


私は席を立ち上がる。


<ドン…>

 しかし後ろからわざと女子に突き飛ばされる。


「邪魔だよ!」


他のクラスメイトは私に見向きもせずに、地下へ逃げていく。

 私がこのクラスで一人取り残されても知らん顔。先生も怖くて何も言えないのだ…


 一方で誰もいないことを確認しながら、私は屋上に向かっていく。

 私の姿を目撃されることがないように…

 

 だって…私は…


「全く…酷いクラスメイト達だね?麗愛(レイア)」


子猫の様な大きさの可愛らしい小動物が私に声を掛ける。


「ホント…暇な奴ら…」

まぁ私は気にしない。だって私は…


「じゃあ行こうか?レイア!」


「そうね、アストラ!現場の状況は?」


私はポケットから宝石の様な明るくキラキラした種を出す。

 ホープズシードと呼ばれる生命力と魔力で出来た結晶だ。


「街で恐竜型の巨大怪獣が暴れている。それに便乗して怪人が街を荒らしている。」



「そう…じゃあ急がなきゃ…」

  私はホープズ・シードを腰の辺りに持っていく。

 すると腰の辺りにベルトのような物が浮かび上がる。


 その腰のベルトにホープズ・シードをはめて

「変身」


 まばゆい光が辺りに満ち、漆黒のゴスロリ衣装を纏った魔法少女に変身する。

 髪もショートボブの黒髪から長い金髪に変わり、遠目には人形の様な姿になる。


 一つ違和感があるとすれば…


「いつも思うんだけど、その眼帯はどうにかならないのかい?」


 私が魔法少女の姿に変身する際に、右目に黒色の眼帯がつけられる。つまり片目のみで戦うのだ。


「眼帯は…いいでしょう?格好良いんだから。」

 眼帯の良さが分かっていない…隻眼というのは中二心をくすぐるのだ。


「まったく…ゴスロリに眼帯とか…本当にキミは規格外の存在だ…」


 アストラはイヤミを呟く。


「さて…今日も頑張りましょうか…」


 私は天使の様に白い羽を生やして空に浮かび上がる。魔法少女になるメリットだ。


◇◇◇

 現場周辺…ビルほどの大きさの巨大な恐竜型の怪獣が街を荒らしていた。


 地上では沢山のヒーローが暴れる怪人を退けながら避難誘導を行っていた。


 今回の様な巨大な怪獣が現れた場合は、ヒーローがロボットに乗って戦う。


 が、住民の避難が先決だ。住民を地下に避難させた後にヒーローが戦う。

 ロボットを使用すれば住民を殺傷してしまうからだ。


「殲滅しろ!」

 ロボットに合体する前の戦車や戦闘機等が、銃弾等を大量の怪人に向けて放っている。

 本当は怪獣に向けて撃ちたいだろうが、住民の避難が終わるまでは無理だ。


 怪獣を怒らせて被害を拡大しないようにしている。


(やっぱり格好良いなぁ。)

 私は戦闘機や戦車の格好良さに見とれつつも、恐竜型の怪獣に向かっていく。

 今のところ怪獣に向かう者は誰一人いない。


「やっぱり今回のは大きいわね…」

 近づくにつれて全体から一部しか見えなくなる。

 恐竜型という格好良い存在を、段々見れなくなるのが少し悲しい…


 怪人をなぎ払いつつも怪獣に近づいていく。


「標的が気づいたようだ。来るよ…レイア!」

 アストラは怪獣が私に気づいた事を教えてくれる。


「来なさい!マジカル☆ステッキ!」

 私はカラフルだが少しボロボロのステッキを取り出した。

 それを左手に構える。


 恐竜型の怪獣がまばゆく光ると同時に、ビームのような熱線を私に向けて放つ。


 私は怪獣の攻撃を左手に持つステッキで受ける。ステッキに触れるとその熱線は消滅する。

 が、消滅しなかった熱戦は私の周りの地面や建物を抉りとるかのように溶かした。


「次は私のターンね。」


 私は足に力を入れて、ものすごい速さで怪獣に近づく。

 近づくとビルのように頂上が見えなく壁のように武骨でざらざらしていた。


 その後右手でその巨大な怪獣のお腹らしき部分に右手を触れる。

神の右手ゴッド・ハンド…感度100万倍!』


 怪獣の感度…いや痛覚というのが良いだろうか?その痛覚を100万倍にした。


 つまり超簡単に言うと、怪獣は1回殴れば死ぬ。


「いくわよ!マジカル☆ステッキ!」

 マジカル☆ステッキで怪獣のお腹をポコッと軽く殴った。


「グボォ…」

 外的損傷は無い。だって痛みを増しただけだから。


 巨大な怪獣は痛みのあまり、強制的に全神経…感覚を遮断し死んだ。

 私の魔法は強烈な痛覚操作による全感覚の強制遮断。


 痛覚を増した事による感覚の遮断なんてありえない?

 これは魔法だ。考えるな、感じろ!


 怪獣は自らの体重を支える術がなく、ビルにもたれ掛かる。ビルは怪獣の重さで次第に押し潰されていく。


 ゴォォォォォォ

 自分のいる空中より更に高い空から飛行機が飛ぶ音が聞こえる。


「合体」

 飛行機・戦車等の乗り物が合体しロボットに変形した。怪獣を支える為に…


「おっそ…」


「悪魔の左手」

 私は左手を怪獣にかざす。すると怪獣の体は次第に消滅していく。


 そこから更に私は怪獣の心臓部分に埋まっている巨大な宝石の種を探す。


 種と言うより怪獣の核だ。

 怪人や怪獣はその核の力により動く。核がなくなれば消滅する。


『ディザイア・シード』

 魔法少女やヒーローが変身するホープズシードとは別の魔力の結晶。

 呪いや魔力を帯びている禍々しい種…


 高く売るか、自らのシードに魔力を吸収させて能力を向上させることが出来る代物だ。


「あったあった。」

 その核を私は右手でつかむ。それを吸収した。それと同時に怪獣は消える。




「ありがとう!ヒーロー…魔法少女!」

 歓喜の声が上がる。住民の中にはわざと逃げるのを遅らせる人間もいる。

 生で怪獣や怪人退治を見るために…


「任務完了。」

 そう言って私は帰る準備をする。


 残りの怪人を退治しても良いが、せっかく戦隊ヒーローがロボットに変形させたんだ。

 見せ場は奪わない。



 再び学校へ戻ろうとする中、先程の怪獣がいた場所に魔法少女やヒーロースーツをまとった人間達が向かっていく。


 もう出番が無いのにだ…残りの怪人の持つディザイア・シードを狙ってだろう。



「たった一人で巨大怪獣に立ち向かってとか…」「……ありえない。」

 会話しているようだったが、私には聞こえなかった。興味が無いし聞く気もなかった。


「ふはははは。怪人は殲滅だぁああ!」

 ロボットによるド派手な爆発音が聞こえる。残党の殲滅戦が始まったようだ。


◇◇◇

 こうして私は再び屋上に戻った訳だが…

 緊急避難警報で学校は既に封鎖された後だった。つまり全生徒帰宅済み。残りの授業なし。


「やっぱりさ…魔法少女やってると、こういう学業や私生活は不便よね…」

 私はアストラに話しかけた。


「それはしょうがないよ。平和の為さ。」


「保険なんてないし、給料も出ないのにねぇ?」

 給料は無い。敵を倒した際のディザイアシードを換金してお金を得る。

 売れば大金になるのだが…福利厚生は皆無…



「………き…君たちの素晴らしい精神のお陰で世の中は成り立っている。」


 ん?アストラ…ブラック企業のクソ上司みたいに誤魔化そうとしていないか?


「やっぱり魔法少女の働き方や環境を改善する必要があると思うの!」

 これは提案だ。私だけでなく、他の魔法少女の環境の改善。


「具体的には?」


「戦隊ヒーローみたいなロボットを導入しましょう?ヒーローのより小回りが効くタイプを…


 トラブルをスピード解決する為に…」

 ロボットを導入する。それにより業務の効率化が図れるはず。


「ねぇ…そんなモノ必要かい?もちろん却下だ。」


「でもあると便利よ?」


「魔法少女にそんなのがあったら鬼に金棒どころか、鬼にミサイルみたいなモノだ!


 それにキミはヒーロー達の唯一のアイデンティティを奪うつもりか?」


「それで淘汰された場合は、世の摂理じゃない?」

 弱肉強食…これが世の中の摂理だ。存在価値がなければ、いなくなる。

 ダーウィンも言ってた気はする。知らんけど…


「そんな物なくても根性でがんばれ!キミたち魔法少女なら出来るから!」


 うわ…出たよ…根性論…

 ったく、昭和のオヤジかよ…


「そもそもレイアみたいな強すぎる魔法少女にはロボットは必要無いでしょ?」


「いや…ロボットって…やっぱり実用性は無くてもロマンがあると思うんだ!」

 確かに理論的には必要ない。それは考えるな…

 魔法少女にロボットがあった方がクールでしょ?感じろよ!


 こうして私たちは暇になった時間で魔法少女の働き方について話し合った。

 提案はことごとく根性論を出されて却下されるクソみたいな環境だ。


 本当にブラック企業も真っ青な労働環境…



 なんだかんだあって一日が終わり、私は眠りにつく。


 アストラは満月を眺めて呟いた。

「ロボットの導入?出来るわけ無いじゃないか?だってキミ達魔法少女は…」

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