どうやら11番目に転生した勇者は人類最後の希望だそうです~先に転生した10人のチート級の悪徳勇者たちに全て奪われたので歴代最強の魔王娘や仲間たちと共に世界を取り戻す~
【10番目の悪徳勇者編<第4章:4/4>■零和充一の視点■】「これがEランクになった死神モードの技【死狂切断】だよ」回避不能の一撃必殺!?
【10番目の悪徳勇者編<第4章:4/4>■零和充一の視点■】「これがEランクになった死神モードの技【死狂切断】だよ」回避不能の一撃必殺!?
剡弐にボコボコにされた後、俺は救急車に運ばれ病院に搬送された。
家族の心配をよそに俺はワクワクしていた。
中学生になって生まれて初めての入院。
しかも夜になると幽霊や死神が現われるんじゃないかと期待していた。
「バカめ。俺が寝て過ごすと思うなよ」
夜中、俺はこっそりと部屋を出た。
懐中電灯を照らし、暗い廊下を歩く。
「クソぉ~なんもねぇじゃん」
不気味なナースや地縛霊に会えるんじゃないかって期待していたが、所詮作り話のようだ。
諦めて病室へ戻ろうとした時だった。
「ん?」
ドアが閉まる音が聞こえる。
「誰?」
返事は無い。
屋上のほうからだ。
階段を上り、扉を開けると同時にヒンヤリとした風が頬を撫でた。
月明かりが屋上を照らす。
ふと視線の先にいたのは患者衣姿の黒髪少女だった。
同い年だろうか。手すりにつかまって遠くの夜景を眺めている。
まさか……自殺?
「そこにいると危険だ!」
大きな声を出してしまったため、女の子はビクッとしている。
こちらに振り向き、俺の顔を見るとなぜか笑みを浮かべていた。
「大丈夫。それより元気そうでよかった」
「元気そう?」
笑顔のはずなのに力の入っていない声だった。
「ごめんね。お兄ちゃんが迷惑をかけて……」
誰かと間違えているのだろうか。
初対面なのにまるで俺のことを知っているかのような素振りを見せていた。
「何してるの?」
「病室にいると息苦しくてさ。ここから見る夜景……綺麗なんだよね」
俺は彼女の隣に立つ。
病院は丘の上に建っているため、遠くまで見渡せる。
「零和充一くんでしょ?」
「なんで俺の名前を知ってるんだ?」
「井上さんが教えてくれたんだ。私とお兄ちゃんを養子に迎えてくれた人なんだけどね」
「お兄ちゃんって?」
「私の名前は十塚セレナ。兄は元格闘家だった人だよ」
「お前がセレナに余計なことを吹き込んだせいで……」
剡弐は俺をにらみつける。
「生きるって言いやがった」
「何を言ってるんだ! それでも兄かよ!」
「逆だ! 生きてたらマズかったんだ!」
「え?」
「それで救ったと思ってんじゃねぇぞ! 充一ィ!」
剡弐は天井に向けて吠えた。
「オルガ! 最後の仕上げだ! 俺様と融合しろ!」
熱気のような黒くモヤッとした何かが剡弐から発している。
「あと5分で俺様は最強になれる。この忌々しいダークパワーなんかに取り込まれる必要はねぇ」
だからさっきから場内の時計をチラチラ見つめていたのか。
「ダークパワーは必要ないのか?」
「お前勘違いしてるみてぇだな。逆だ。俺様も他の悪徳勇者たちも
「だけどそれなら邪神の加護があるんじゃ」
「確かにあのふざけた力が限り、お前以外の奴らに殺されることはない。だが裏を返せば、1番目に力を還元しなくちゃいけねぇってことだ」
「還元?」
「ダークパワーは憎しみの数だけ力が上がるのは知ってるだろ? 自我が失えば俺様は意思を持たないただの操り人形みたいになっちまうってわけだ。だからダークパワーに頼らねぇほうがイイんだよ」
「じゃあ1番目に付き従ってるわけじゃないんだ」
「当たり前だ! 俺様だって元々はお前と同じ立場の人間だった! 世界を救うつもりでいた! カルラと子どもを作って幸せに暮らしたかった!」
剡弐はミコナをにらみつける。
「だが妻は死んだ。幸せに暮らすはずだった俺様の愛する女を……そこの魔王娘が目の前で焼き殺しやがった!」
カルラって剡弐の奥さんだったの?
そういえば指輪を左手の薬指に付けていた。
「だから俺様はお前と魔王娘を殺し、妻の仇を取る」
オルガ――もとい、セレナちゃんが剡弐を包み込んでいる。
「融合しようとしているのか?」
剡弐の顔半分まで埋め尽くそうとしている。
「なんですかあれ……魔力が異常に上昇していますよ!」
「お前の夢なんかこの俺様が壊してやる」
「壊せないよ。今のあんたじゃ」
「なに?」
「俺だって使命を背負ってるんだ! 憎しみに身を委ねるくらいなら最初から俺だって勇者なんかやってない!」
「なんでそこまでお前は勇者に憧れるんだよ」
「認められたいからだ!」
「なに……」
「みんなに認められるだけの強い男になりたかった! あんただってそうだろ! 強くなってみんなに認められて、それで自分らしさを表現したいって」
何よりも小学生の頃だった自分に嘘を吐きたくなかった。
引きこもりの不登校少年だって誰かの役に立ちたい。
勇者は俺のすべてだから。
「あんたの気持ちは理解できる。強くなりたいのに負けるのが怖くて現実から逃げてたこともわかる」
「お前……」
「充一くん! 早くしないと」
「わかってる!」
俺は鎌を横に構えた。
あと1分……。
俺は素早く剡弐に近づき――
「させるか!」
だがセレナちゃんは何もしなかった。
彼女の声が俺の耳に届く。
「たすけて充一くん」
「セレナちゃん……」
「お兄ちゃんを……助けてあげて……」
大丈夫だよセレナちゃん。
俺がこの戦いを終わらせる。
「早くしろ! オルガ! 何やってんだ! もう少しで完全体になるんだぞ!」
身動きが取れない剡弐に近づき、俺は彼のお腹に大鎌を当てた。
「なぜだ……オルガ……なぜ俺様の指示に従わなかった……」
「俺には聞こえたよ。セレナちゃんの声を」
「なんだと……」
「大丈夫。死神の力は痛みが無いからすぐに終わるよ」
「や、やめろ……」
大鎌を持ったままゆっくりと通り過ぎた。
「【
空間が黒く切り裂くほどの威力を持つ。
【命中率】と【速さ】が高いため、目で追うことは不可能である。
「俺様が……負け……る……はずが……」
剡弐の肉体は真っ二つに切断された。
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