転生したら11番目の勇者だった~先に転生した10人のチート級の悪徳勇者たちに全て奪われたので歴代最強の魔王娘や仲間たちと共に世界を取り戻す~

フジガミヨシヒコ

【10番目の悪徳勇者編<プロローグ:1/2>■零和充一の視点■】「オープニングバトル」10番目の悪徳勇者は【剣闘士系勇者】である。

 ――俺は11番目に転生した最後の勇者。


 先に転生した1~10番目の悪徳勇者たちをすべて倒し、真の勇者になって世界を救う男である。




  神歴しんれき1110年4月15日。時刻は23時30分。

 コロセウムのような円形闘技場コロシアムでデスマッチが開始された。

 審判が言うにはおよそ1万人の観客が席を埋め尽くしているらしい。


「アレが11番目の勇者様なの?」

「え? すごくタイプなんですけど」

「綺麗な顔立ちですわね」


 女性から見たらそう思われているのか。


「ようやく来たか。零和充一れいわじゅういち

「……十塚剡弐とつかせんじ


 粗野な低音ボイスが聞こえてくる。


「仲間が先に戦ってるのに、お前は一人で何やってたんだ?」


 透き通った声色で俺は答える。


「【Eランク】になった」

「は? 嘘だろ。昨日まで【最低レベルのFランク】だったじゃねぇか」


 結論から言おう。


 俺が死ねば世界は終わる。

 あるいは悪徳勇者デビューしてしまったら神々との最終戦争が勃発し、全宇宙が滅んでしまう。


 だから真の勇者として、悪徳勇者たちを全員倒さなければならないのだ。


「どっちが勝つんだ?」

「剡弐さんに決まってんだろ。どうせ無理なんだよ」

「やはり悪徳勇者が勝つのか……」


 闘技場内からチラホラ声が聞こえる。

 先ほどの女性たちの声もそうなのだが、魔力を耳に集中させることで超人的な力を発揮することができた。

 彼らが今どういう気持ちでこの試合を観戦しているのかが分かる。


「Eランクになったところで俺様に勝つことはできねぇ。諦めろ」

「確かにあの時は油断した。でも今は違う」

「だったら」

「!」


 背後に潜む影。

 いつの間にか剡弐は俺の背後を回っていた。


「見せてみろ」


 ガキィイイイン!!!!!


 剡弐の武器である大剣を白刀はくとうこと白神しらかみで素早く受け止めた。

 刃と刃がこすれ合う。


「少しはやるみてぇだな」

「力だけがあんたの十八番じゃないんだよな」

「バカにしてんのか? 確かに俺様は剣闘士系勇者だが、殴る蹴るだけが全てじゃねぇ。むしろ俺様の力はここからだ」


 どうやら白神が持つ特殊能力を発動させないつもりらしい。

 防ぐだけでは白神はただの刀だからな。


「捕まえろ!」


 剡弐の背後に浮かび上がったのは巨大な黒い塊だ。


「転生してからずっと俺様をサポートしてきた最強の力だ。また喰らうか?」

「今度は遠慮しておくよ」


 彼の意志とは関係無く半自動セミオートで戦う化け物である。

 あらゆる形に変化し、敵を翻弄するのが特徴だ。

 剡弐の指示でさらに動きが加速した。

 俺を捕えようと巨大な手に形を変える。


「おっと」


 捕まるギリギリのところで後ろに下がる。

 黒い塊は蛇のように地面を這ってくねらせ、俺の動きに合わせて追撃してきた。

 上空からミサイルを発射するように乱れ打ちをしてくる。

 地面に大きな穴が空くほどの威力。

 まともに喰らえばひとたまりもない。


「逃げてばかりじゃ俺様を倒すことはできねぇぜ」

「言われなくてもわかってる」


 本来だったら白神が持つ特殊能力を発動させれば良いだけの話だ。

 だが化け物の正体を知ってから状況が変わったのだ。

 なにせ俺や剡弐が知っている女の子なのだから。

 本人は気づいていないようだが、これ以上彼女を苦しめるわけにはいかない。


「なんでアイツ攻撃しねぇんだよ」

「このままじゃ負けるぞ!」


 観客から見たら面白くない展開だろう。


「何を企んでやがる?」

「どうやったら彼女のことをあんたに気づいてもらえるのかなって」

「彼女? 何言ってんだお前。さっさと捕まえろ!」


 俺の体が黒い塊に包み込まれる。


「バカが。油断するからこうなる。Eランクだろうが俺様に勝つことはできねぇ。終わりだ!」

「……ごめんね」


 バシュッ!!!!!


 俺を握りつぶす前に彼女は破裂して跡形もなく消散した。


「何が起きた?」

「白神で封じた」

「は? 何言ってんだ?」

「もうすでに斬ったってことだよ」

「なわけねぇだろ!」


 大剣を振り回してきたので素早く左手で受け止める。


「なに……?」

「その玩具で俺を斬るのは不可能」


 体を1回転させて大剣を握った剡弐ごと場外まで投げ飛ばす。

 彼の体は壁に激突し大きな穴が空いた。


「あれ? 自分のこと最強って言ってたよね? 俺の動きが目で追えなかった?」


 ドガッ!!!!!


 壁の残骸が吹き飛んだ。

 砂埃が舞い上がり、それをかき消すかのように剡弐がこちらへ向かって突っ切る。

 剡弐はゴキゴキと首を鳴らした後、大剣を拾って肩に担いだ。


「調子に乗ってんじゃねぇよ」


 アナウンスが響き渡る。


「開始前からすでに盛り上がって参りました! 10番目の勇者VS11番目の勇者によるデスマッチ! 果たして勝つのはどちらでしょうか?」


 ふと観客席から少女が立ち上がった。


「頑張って!」


 それが引き金だったのか、客たちの様子が変わった。


「必ず悪徳勇者を倒して皆さんを救います!」


 俺の言葉に観客たちの熱気ボルテージが一気に高まった。


「やっと来たんだね、充一くん」


 俺に近づく二人の美少女。


「さすが歴代最強の魔王娘だな。もう終わったのか?」

「まあね」

「私も処したよ」


 もう一人はこの世界の神絵師イラストレーター

 しかも最強の魔法使い。


「あとは先輩の活躍っぷりを漫画やラノベの挿絵にしちゃうよ」

「ああ」


 1対1のルールなので、二人は距離を置いて俺を見守っている。


「さあ充一選手! 次はどうする?」


 背中にベルトで固定した鞘から黒刀こくとうこと黒魔くろまを抜く。


 右手に白神。

 左手に黒魔。


 両手持ちのままかっこよく構える。


「またアレに変身するのか? コイツに勝てるわけねぇだろ」

「Eランクの俺でも勝てると確信したんだ。あんたじゃ無理だよ」

「ほざけ!」


 剡弐が大剣を大きく振りかぶったので、二度と大剣を使用できないようにするために、白神の能力をもう一度発動することにした。

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