思いとみんなと

KiiyPilO

第1話

明後日、自分が入っているバンドが大きなフェスに出る。


ライブハウスで出会った2人と、共に音楽をやってきた1人と、結成から、動き始めて、半年も経っていない未熟な地方バンドが野外フェスのステージに立とうとしている。


それぞれの思いがぶつかり合いながら、最初から最後まで笑顔で演奏するステージが僕たちが与えられる価値だ。それ以上のことはまだできない。


メンバーそれぞれが持ち寄る思いはそれぞれ別物で、親和性があるとか、協調性があるとか、微塵も感じない。

ぐちゃぐちゃで、カオスで。


でも、演奏が始まれば、互いの持ち寄る思いは混ざりあって音になる。劣等感も、悔しいも、妬ましいも、楽しいも、気持ちいいも、幸せも、苦しいも。


感情さえ音に載せることができれば、何人だって巻き込めると思ってる。僕らにはそれができる。どうせあなたもそう思ってるでしょ。やれるだけやろう。


ドラムを叩くことがずっと好きだった。人と違うことがしたくて、個性が欲しくて始めたドラムも自分を作る一部となるほどに馴染んできた。音楽がきっかけで色んな人に出会えた。いい振り返る機会だ。存分に感謝しよう。


自分の個性を見出しながら、人に自分を発信する術を模索するイケメンベーシスト。


留年ギリギリなのに大好きな音楽が辞められない船乗りギタリスト。


あとはまぁ。気が合いそうで、合わない、やっぱ合うかもしれない、僕の人生史上1番愉快なギターボーカル。


みんながみんなのことを理解してステージに立ってる訳じゃないけど、演奏中は胸の内を透かして見るようにみんなの事がわかる気がする。そんな瞬間がこの上ない至福だ。


いつもありがとう。


人のために音楽をしているわけじゃないけど。僕の思いを伝えたいからドラムを叩いてる訳じゃないけど。あなたの書いた曲を1人でも多くの人に届けるために、感じてもらうために、

最高の音を出す。


それだけ。



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